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日本独特の文化・高校サッカーとユースの違いとは?【コラムその25】

前回は正月の風物詩として箱根駅伝を紹介しました。

sportskansen.hatenablog.jp

 

しかし冬の風物詩としてもう一つ忘れてはならない大会があります。

それは「全国高校サッカー選手権」です。箱根駅伝を見た流れで見るような人も多いのではないでしょうか。

その歴史は古く、1917年から続く伝統の大会であります。実は天皇杯より前に行われている、日本サッカー最古の大会でもあります。

 

しかしながら、この大会は高校サッカーの頂点を決める大会ではありますが、同年代の日本一を決める大会とは言えません。というのも、ユースがあるからです。

日本は高校サッカーとユースが入り混じった環境になっていて、かなり特殊な環境と言えます。

 

そこで今回は、高校サッカーとユースの違いについて掘り下げてみたいと思います。

1.日本由来の高校サッカー

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高校サッカーはみなさんご存じの通り、高校に入学してその高校の部活動に所属するというものです。日本人ならごく当たり前に接してきたこのシステムですが、世界的に見れば結構特殊ですよね。

 

長所

長所としては、その門戸の広さがあげられます。プロを目指すトップ選手から、中学までボールを蹴ったことのない初心者まで、誰もが同じスタートラインに立つことができます。

実際、高校時代は無名だった中澤や中村憲剛、長友などがプレーを続けられたのは高校サッカーあってこそです。

そしてユースに入れなかった選手の受け皿にもなっています。そこから這い上がることができればまたプロへの道も開かれますからね。本田圭佑はユースに入れず高校でサッカーを続け、今の地位を獲得しています。

 

またサッカー文化を広める意味でも高校サッカーの存在は貴重です。ボールを蹴るのが楽しいと思えれば、生サッカーのファンになってくれます。すそ野を広げることは文化の継承には一番大事なことですね。

 

短所

プロという明確な目標があるユースと違い、あくまで部活動なので、指導者や環境面のレベルがピンキリです。サッカーを主体に考えるなら入学前にちゃんとリサーチしたほうがいいですね。

指導者もプロではありませんから、仕方がありません。そもそも、教員の負担が大きすぎるのも大きな問題ですよね。

 

とはいえ高校サッカーからももちろん多くのプロ選手が出ていますので、決して育成のレベルが低いわけではありません。

 

2.ヨーロッパ由来のユース

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ユースは日本ではあまりなじみのないシステムですが、ヨーロッパではごく一般的に行われています。

ヨーロッパではほとんどのクラブがユースを持っていて、選手のレベルによってどのクラブに所属するかを決めます。ある意味で日本の部活動に近いかもしれません。

 

日本でもJリーグクラブがユースを置くことを義務としたおかげで、各地にユースチームが作られるようになりました。

U-15(ジュニアユース)とU-18(ユース)があり、それぞれ厳しいセレクションのもと選手が選抜されていきます。

 

長所

ユースに入るためには厳しいセレクションを勝ち抜く必要があるため、純粋に技術レベルが非常に高いです。

高いレベルに身を置けば選手も成長していくということは容易に想像できます。

 

またトップチームへの入団を前提としているため、そのクラブに合った成長をしていくことができます。つまり、プロになるには何が必要か、をユースの時点で肌で感じることができます。

ですからトップチームに入っても迷うことがありません。プロへの道、そしてその先の道が極めて具体的で明確に見えるというのは選手にとって分かりやすく心強いですね。

 

もちろん、育成環境も整っていて、最近では高校と連携して高校のカリキュラムとユースのカリキュラムを合わせた形にしているようです。どの高校に通うかを迷わなくて済むのは楽ですね。

 

短所

セレクションが非常に厳しく、誰でも入れるというわけではありません。ユースに入るだけでも非常に狭き門です。

さらにプロに入れるのはユースの中のほんの一握りです。プロまでのレールは敷かれていますが、行く先々にセレクションがありいばらの道です。

 

もし日本にユースしかなかったらどんどん競技人口が減っていき、やがては日本サッカーのレベルが下がっていってしまうでしょう。

受け入れられる人数の少なさ、というのは日本におけるユースの課題と言えます。ヨーロッパのように多種多様なクラブがあれば別ですけどね。

 

また世間的な注目度が低く、高校サッカー選手権に出たいがためにあえてユースを蹴る選手もいるほどです。日本の特殊事情と言えます。

 

3.高校とユースどっちがいいの?

結局、高校とユースどちらがいいのかというのは一概には言えないでしょう。

ただ、プロをストレートで目指すためのユース、その受け皿として機能している高校サッカーというこの二重構造は個人的には良いシステムだと思います。選択肢は多いに越したことはありません。

各選手のやりたいことや事情に合わせて選択するというのが正解なように思います。高校サッカー選手権に出場して青春をささげる、というのも大事な経験ですしね。

 

大学受験で例えるなら、ユースは小学校から大学までの一貫校、高校サッカーは一般受験、といったところでしょうか?学校を学校で例えているので、かえってわかりにくいという批判は受け付けませぬ。

 


【ゆ、ユース?】どうやって入るの?高校と違う?どんな練習するの?プロになれるの?

那須さんの動画も非常に参考になります。

 

4.まとめ

日本特有の部活動システム、サッカー特有のユースシステムがごちゃまぜになっている今の日本サッカー界ですが、個人的には色々な道が開けているという点では非常にいいと思います。

 

もちろん、問題点がないわけではありません。

でも高校、ユース、それぞれの問題点はそれぞれで解決していくことができれば、日本サッカーの未来は明るいでしょう。今後もどんどんスター選手が高校サッカー、そしてユースから発掘されていくことを楽しみにしています。

 

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