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東京オリンピック記念連続シリーズ第5回~パラリンピックの歴史と功罪~【コラムその46】

オリンピックが終わると、ほっとひと段落…

する間もなく、パラリンピックが始まります。

 

とはいえ、やっぱりオリンピックの方ばかりが目立ち、パラリンピックの注目度はオリンピックに比べると下がってしまうのは事実です。

 

今回はそんなパラリンピックの歴史と功罪を紹介いたします。

 

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1.パラリンピックの始まり

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パラリンピックが始まったのは1964東京オリンピックの一つ前、1960年のローマ大会から。すなわち1964東京パラリンピックは第2回目ということになります。

 

で、なぜこのパラリンピックが始まったのかというと、時は1948年、ロンドンにさかのぼります。

この年、ロンドンではオリンピックが開催されました。その開会式と同日、イギリスのストーク・マンデビル病院でとある競技大会が開かれました。

どういう大会かと言いますと、戦争で負傷した兵士のリハビリを目的とした大会でした。ストーク・マンデビル病院にはそれ専門のリハビリ科が設けられており、「手術よりスポーツを」という理念のもと始められたのでした。

 

この時は入院患者でアーチェリー大会を行ったのみでしたが、1952年にオランダの選手が参加すると、どんどん各国に広まっていきました。

これを1960年にローマで行ったものが第1回パラリンピック、という扱いになっているわけです。

すなわち、もともとは障がい者のための大会というわけではなく、戦争で負傷した兵士のリハビリのための大会だったのですね。

 

ちなみにこの源流となった大会は現在も続いていて、世界車いす・切断者競技大会という形で残っています。

 

 

2.パラリンピックは3つある?

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障がい者スポーツの大会というと真っ先にパラリンピックが思い浮かびますが、実は同様の国際大会が3種類あります。

とはいえそれぞれ目的や内容が異なりますので、それぞれ紹介していきます。

パラリンピック

まずはパラリンピックから。パラリンピックには現在159か国、4000人を超える選手が参加し、世界最大の障がい者スポーツ大会と位置付けられています。

 

パラリンピックには肢体不自由、脳性麻痺、知的障がい、視覚障がいの人が参加し、陸上や水泳などオリンピックと同様の競技から、シッティングバレー、車いすテニス、ゴールボールなどパラリンピック特有の競技までさまざまです。

でも何か足りなくはありませんか?そう、聴覚障がい者は含まれていないのです。

この理由については次に。

 

デフリンピック

デフリンピックのデフにはろう者という意味があり、文字通り聴覚障がい者のための大会です。

開始したのは1924年と、パラリンピックよりもはるかに長い歴史を持っています。デフリンピックにも100か国3000人を超える参加者がおり、大規模な大会となっています。

 

なぜパラリンピックと一緒にやらないのか?と言いますと、これまた深い溝があるようでして…

1.デフのことはデフにしか分からない、という考えを貫いているから

2.手話の通訳が必要なため、パラリンピックの会議に参加したときに健聴者に主導権を取られるのでは、という恐れがあったから

3.競技によってデフが及ぼす影響差が大きく、デフであってもメダルを獲得できるスポーツもある一方で団体競技などは難しく、他の障がい者との区別がつけにくいから

といった、複雑な事情があるようです。ただ、もちろんデフの選手にもパラリンピックに参加したいという思いを持つ選手も少なくないようです。

パラリンピックとデフリンピックでは日本での扱いにも大きな差があるので、何とか溝が埋まるといいのですが…。

 

スペシャルオリンピックス

スペシャルオリンピックスは知的障がいを持つ人を対象にした大会です。国際オリンピック委員会がオリンピックを名称に使うことを許可しているのはオリンピック以外では以上の3大会のみです。

 

もともとはケネディ大統領の妹ユーニス・ケネディ・シュライバーが庭に知的障がい者を招いてキャンプを行ったのが始まり。現在では150か国以上の選手、あるいはボランティアが参加しています。

 

その大きな特徴としては、勝つことが目的でなく、個人が最善を尽くすことを目的としていることです。

例えば、競技会の前にトレーニングプログラムを組むのですが、このプログラムを含めてスペシャルオリンピックスとなっているのです。各個人が練習に取り組み、その成果を発揮することが大きな目的となっています。

 

あるいは、全員が表彰の対象となるのも大きな特徴です。予選の時点で結果に応じて全員を3~8人ずつの組に分け、決勝を行います。すなわち、どんなに悪くても9位以下にはならないのです。

もし途中で棄権などをしてしまっても、参加賞が贈られるようになっています。よっぽどずるいことをしなければ何かしらがもらえます。

 

3.サイボーグ化していくアスリートたち

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元々リハビリを目的として始まったパラリンピックですが、技術の発達に伴い徐々に純粋なスポーツ競技として楽しまれるようになってきました。

 

とりわけ陸上競技における発展は目覚ましく、両足を切断している南アフリカのオスカー・ピストリウス選手はロンドンにおいてオリンピック、パラリンピックの両方に出場したことで話題となりました。

 

また走り幅跳びのマルクス・レーム選手は、2014年のドイツ陸上選手権で健常者の選手を抑えて見事優勝しました。

その後もどんどん記録を伸ばし、現在では8.62mという記録を持っています。この記録は、2012のロンドンオリンピック、2016のリオオリンピックの優勝記録をもはるかに上回る記録で、まさに今現在世界最高のジャンパーのひとりということができるでしょう。

 

このように健常者と比べてもそん色ない、あるいは上回るような記録を出す選手が出てくる一方で、こういった記録を出すためには最先端の技術を用いた機具が必要になってきました。

そうなると技術とお金を持ち合わせた先進国、そしてそれだけのお金を集められる障がい者のみがトップクラスに立てることになります。

 

もちろん、選手がトレーニングを積み、そして最先端の技術を使ってメダルを争うという構図自体はオリンピックと何ら変わることはありません。

しかし、パラリンピックの当初の目的であったリハビリからはだいぶ離れ、現在では選手がサイボーグのように最先端の機具を身につけて超人的な力を発揮する大会になってきました。

 

それによって障がい者スポーツがどんどん魅力的なものになり認知度も高まっていったり、あるいは障がいのサポート機具の技術が発達していくなどのメリットはあります。

その一方で障がい者スポーツの普及においてはますます敷居が上がっているという点は無視できません。

 

この流れを止めることはできないですし、止める必要もないと思います。

ただ、障がい者の誰もががスポーツを楽しみ、スポーツを通じて健康に暮らしていけるようなサポート環境を整えていくことは決して忘れてはならないパラリンピックの大きな意義であります。

 

4.まとめ

以上、パラリンピックについてまとめました。

パラリンピックの存在というのは非常に大きいもので、世界中の人がパラリンピックを通じて障がい者スポーツに触れるきっかけになっています。

 

だからこそ、パラリンピックの存在意義というのを今一度考え直す必要があるのかもしれません。

見る競技として楽しむのももちろん大事なことです。しかし、障がい者スポーツの普及というもう一つの大きな目的を忘れてはいけません。

 

今後、パラリンピックがより世界中に愛され、必要とされる大会となることを信じています。

 

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