スタ辞苑〜全国スタジアム観戦記〜

スポーツをもっと面白く観るためのスタジアムガイド発信中!毎週金曜日18時+α更新予定。

MENU

三ツ沢公園球技場(ニッパツ三ツ沢球技場)Y.S.C.C.横浜ver.~第三の横浜~

注:本記事は新型コロナウイルス感染拡大の情報を元にしています

【概要】

f:id:epokopoko:20201012085746j:image

三ツ沢公園球技場(ニッパツ三ツ沢球技場)は、1955年開場、神奈川県横浜市にある横浜FC、Y.S.C.C.横浜のホームスタジアム。今回はY.S.C.C.横浜の主催試合を取り上げる。

 

以前横浜FCのホームとして取り上げた時の記事はこちら。

sportskansen.hatenablog.jp

sportskansen.hatenablog.jp

 

横浜にはJリーグのクラブが3つある。

一つはオリジナル10の一つ、Jリーグ開幕戦を戦った伝統のクラブ、横浜F・マリノス

一つはフリューゲルス消滅に伴って誕生、J1にも昇格した横浜FC

そしてもう一つが今回のY.S.C.C.横浜だ。

 

しかし、知名度では他の二つに比べると段違いに低い。おそらく横浜市民でもY.S.C.C.横浜を知っている人はごく少数であろう。

そんな謎のクラブY.S.C.C.横浜をご紹介しよう。

 

Y.S.C.C.横浜の始まりは前回の東京オリンピックが開催された1964年。実はマリノスの前身日産自動車サッカー部よりも長い歴史がある。

 

元々はオリンピックを機に設立された「横浜・中区スポーツ少年団」を源流としている。そんな歴史もあり、横浜市中区にある本牧地区とのつながりを今なお強く持っている(本牧地区の街並みをモチーフにユニフォームをデザインしていたり)。

 

そこに1979年全日空が資本参加、チームはどんどん強くなっていく。その一方でクラブは全日空の持ち物になってしまい、市民が作るクラブという元々の理念とはかけ離れたものになっていった。

 

そんな状態のまま7年の時が過ぎるが、1986年3月22日、大事件が起きる。

日本サッカーリーグ第22節、東京の西が丘サッカー場で行われた全日空横浜サッカークラブ対三菱重工業サッカー部の試合。

この試合で、なんと6人の選手がボイコットしてしまったのだ。

 

事情については非常に複雑でとてもここで書ききれるものではないのだが、全日空が入ったことで身分の安定した社員選手と、そうでない契約選手の待遇に差があったことが根本の問題らしい。

市民クラブに企業が介入する時は、よっぽどうまくやらにゃいかんのですなあ…。

 

ともかく、これをきっかけとしてこの6人の選手は追い出されてしまった。この時の選手やスタッフが改めて市民クラブを作ろう、ということで立ち上げたのがY.S.C.C.である。そのため、クラブの歴史としては1986年が創立年ということになる。

 

その後は市民クラブらしくバスケ、テニス、バドミントンなど市民が気軽に参加できる総合スポーツクラブになっていった。Fリーグで戦っているフットサルクラブもその一つである。

トップチームは2014年からJ3に参入、クラブ名がY.S.C.C.からY.S.C.C.横浜に代わる。ちなみにY.S.C.C.は「横浜スポーツカルチャークラブ」の頭文字なので、横浜が被っている

 

一方で、この全日空サッカークラブはのちの横浜フリューゲルス、そして横浜FCや横浜F・マリノスへとつながっていく。横浜にある3つのJリーグクラブは、なかなかに数奇な運命をたどっているのである。

【アクセス】

最寄まで★★★★☆

f:id:epokopoko:20200308084157j:image

最寄は横浜市営地下鉄ブルーラインの三ツ沢上町駅。

横浜FCと横浜F・マリノスのロゴはあるが、Y.S.C.C.横浜のロゴはない。

 

f:id:epokopoko:20200501155635j:image

ちなみに横浜駅からバスも出ているし、健脚なら徒歩30分くらいで着く。「坂の街・横浜」を実感できるため、ある意味オススメ。

 

最寄から★★★☆☆

f:id:epokopoko:20200501155651j:image

三ツ沢上町駅からも結局坂を登り15分ほど。決して楽ではないが、個人的にはバスにぎゅうぎゅうに詰められるスタジアムよりは幾分マシかなあ、と思う。

 

【観戦環境】★★★★★

f:id:epokopoko:20201012085842j:image

f:id:epokopoko:20201012085857j:image

f:id:epokopoko:20201012085907j:image

なんせ観客数が他の2クラブの試合に比べて圧倒的に少ない

ので、いつでもどこでも座り放題!

 

こんなメインスタンドの前の席、いくら横浜FCでもそう簡単に取れるもんじゃないのだが、Y.S.C.C.横浜ならハーフタイムに来ても座れる

 

ああ、J3にはこんな楽しみ方があったのか…。とにかく快適で楽しい。オススメ。

 

【雰囲気】★★★☆☆

f:id:epokopoko:20201012085930j:image

相手はSC相模原だったが、どう見ても相手サポーターの方が多かった

そりゃ、横浜にはJ1のクラブが二つもあるものなあ…。そこと競合しちゃうとどうしてもつらい。

 

とはいえいろいろありながらもここまで残ってきた市民クラブだし、存在意義はそこにあるのだろう。

「応援するクラブ」というより、「みんなで参加して作っていくクラブ」というイメージの方が適切かもしれない。

 

また、横浜FCのグッズを持って見に来ている人がいたのも印象的だった。

源流が同じところにある、という歴史まで知っている人がどれほどいるかは分からないが、ホームスタジアムは一緒だし、カテゴリは一緒になったこともないし、ほどよい距離感を保っている。

 

f:id:epokopoko:20201012194534j:image

f:id:epokopoko:20201012194440j:image

ちなみに、横浜市民ならみんな歌える横浜市歌をガッツリ流すのはY.S.C.C.横浜だけである。さすが市民クラブ。


www.youtube.com

 

f:id:epokopoko:20201012194423j:image

あと監督さんがすげーイケメン

 

【グルメ】★★★☆☆

f:id:epokopoko:20201012085946j:image

油そば600円。見た目通りの味。


f:id:epokopoko:20201012085943j:image

横浜ドーナツ。

ちなみに横浜ドーナツをこのスタジアム以外で見たことはない。

 

個人的には甘いものを食べたいなら横浜駅前にあるくりこ庵のたい焼きをお勧めしたい。

 

【街との一体感】★★☆☆☆

市民クラブであるゆえ、知名度ではバリバリやっている他の2クラブには到底かなわない

 

しかし、市民でクラブを作って、市民にスポーツ文化を根付かせるという方向でやっていくのであれば、そんなにガンガン宣伝する必要もないんかな?クラブ名にも「カルチャー」が入っているわけだし。

クラブのホームページを見ても、興行として成り立たせていくというよりは、横浜にスポーツ文化を根付かせていくというポリシーの方が強いように思う。

 

ただ、そうなるとこのトップチームの目指すところがどこなのかイマイチ分かりづらい

もしかしたら、トップチームがJリーグに参加しているという事実が重要であって、そこから開いた傘のようにいろいろな活動が広がっているというのが理想なのかな。

とはいえ、宣伝活動がないよりはあった方がいいかも。

 

f:id:epokopoko:20210317185703j:image

ただ、市内のスーパーでYSCCを応援しているという掲示を見かけた。理念に賛同している企業もあるようだ。

 

【満足度】★★★☆☆

いろいろな特殊事情を抱えているクラブではあるが、1964年のオリンピックも行われた三ツ沢でJリーグの試合をこれだけ快適に見られるというのは純粋に楽しくてしょうがない。

 

トップチームはJ2へ向けて邁進していっているのか、それとも下部組織の目標とするためにトップチームがJリーグに存在しているのか、その辺の塩梅はよく分からない。

ただ、これだけ快適に三ツ沢で試合を見られる機会を提供してくれるというだけで少なくとも私にとっては大変意義あることだ。

 

私も横浜市民の一人として、ひっそりと活動しているY.S.C.C.横浜を、ひっそり応援していきたい。

ていうか私も運動しないとなあ…。

 

 

索引を作りました!

他のスタジアム・アリーナは↓からどうぞ

sportskansen.hatenablog.jp