注:本記事は新型コロナウイルス感染拡大後の情報を元にしています
【概要】
水戸市立競技場(ケーズデンキスタジアム水戸)は、1987年開場、茨城県水戸市にある水戸ホーリーホックのホームスタジアム。
開場当初は収容人数が5000人と小ぶりだったことに加え、夜間照明、時計、得点表示や放送席がなく、まるでJリーグ、いやサッカーの試合を開催するには全く設備が足りていなかったようだ。
そういった事情もあり、ホーリーホックは2008年まで茨城県那珂市にある笠松運動公園陸上競技場を実質的な本拠地として使用していた。水戸とは。
さらに大きな問題として立ちはだかったのが、水戸ホーリーホックと水戸市の対立である。
当時FC水戸として活動していた水戸ホーリーホックは、1996年Jリーグの下部組織であるJFLへの参加が決定。
しかし当時の水戸市長は野球好き、そしてサッカー嫌いといういろいろこじらせていた人だったためクラブと対立。
更に運の悪いことに、当時のクラブ代表が水戸市長と同じ高校のサッカー部出身だったこともあり対立は激化。
結果的にホーリーホックに対し「競技場・練習場の供給を含む一切の資金援助を求めない」という約束を取り付けたのだという。子供か。
結局これが尾を引いてしまい、しばらく水戸市からの援助を受けられないまま笠松での試合を余儀なくされた、ということである。
転機が訪れたのは2007年。さすがにボロボロすぎて陸連からもクレームがつき、水戸市もようやく重い腰を上げることになった。2003年に市長が変わってだいぶ関係性も改善されていたらしい。
ともかく2009年には大規模な改修が行われ、Jリーグの試合を開催できるよう設備が整った。これにより2010年からはほぼすべての試合がこのケーズデンキスタジアムで開催されている。
14年の時を経てやっと水戸にホームを置けるようになったのである。長かったなあ…。
これにて一件落着、めでたしめでたし…というわけではなかった。改修されたとはいえまだJ1ライセンスを満たす規模ではなかったので増築のため水戸市は予算を確保していたのだが、2011年東日本大震災が発生。
このスタジアムでも例外ではなく大きな被害を受け、修復のため増築の話はいったん持ち越しに。
更に時は過ぎ2018年。もし水戸ホーリーホックがJ1昇格に必要な順位を獲得できた場合という条件付きでまず笠松をJ1仕様に改装(もともと収容人数が多いので簡単らしい)という話になった(おそらくその後ケーズデンキスタジアムの改修に着手する予定だったはず)。
しかし結局昇格ならずまたも持ち越し。
翌2019年、これまでにケーズデンキスタジアム増築に必要な用地取得がうまくいっていなかったようなのだが、それでもなんとか増築する計画が整うこととなった。
ところが今度は水戸ホーリーホック側から自前の新スタジアムを作る計画が浮上。これに対して水戸市は静観の構えで、またも持ち越し。
そんなわけで、ケーズデンキスタジアムは開場してからしばらく放置され、改修されてもなお放置されているかわいそうなスタジアムなのである。
水戸市にも水戸ホーリーホックにも振り回されっぱなし…(両者の関係が良くなったのがせめてもの救いか)。
そんなわけでたびたび「J1昇格順位に達すれば」という但し書きの改修計画が持ち上がる水戸ホーリーホックだが、2000年にJ2に参入して以来一度も昇格も降格もしていないという極めて珍しいクラブでもある。
まったくもって浮き沈みがないというのは良いことなのか悪いことなのか…。
同じ茨城県内の鹿島アントラーズがJ1から一度も降格していないため、リーグ戦においては一度も茨城ダービーが実現していないことになる。
そのかわりシーズン前にいばらきサッカーフェスティバルと題し練習試合が組まれているのだが、水戸の戦績は1勝14敗1分と大きく力の差を見せつけられる形となっている。
唯一の一勝は2022年に収めたもので、ちょっとしたニュースになった。
ライバル?の鹿島アントラーズのホームカシマスタジアムはこちら。こういうスタジアムを作りたいねえ…。
とはいえ、ここ数年は少しずつJ2での順位が上がっているような気がしないでもない。とりあえずリーグ戦での茨城ダービー実現目指して頑張れ水戸ホーリーホック!
【アクセス】
最寄まで★★★★☆
最寄はJR水戸駅。常磐線の主要駅の一つで東京方面からも特急が通っているが、同じ北関東である栃木の宇都宮、群馬の高崎と比べると新幹線が停車しない点でちょっと不便である。
最寄から★★☆☆☆
水戸駅からは4番乗り場から出るバスで30分ほど。Jリーグのスタジアムではこれくらいはよくあることではあるが、とはいえお世辞にもアクセスがいいとは言えない。
なお、水戸駅の手前赤塚駅からもバスが出ており、そちらからは片道15分で行くことができる。東京方面から来る場合は赤塚駅の方が良いかも。
水戸駅ではスタジアムまでのバス区間が一日乗り放題となるチケットも売っている。往復するだけでも少しオトクになるし、なによりいい記念になる。
スタジアムまでは田舎の田園風景が続く。関東平野って広いんだなあ、というのを実感させられる。
水戸の観光記はこちら、あわせてどうぞ。
【観戦環境】★★★★☆
陸上競技場ではあるが、メインスタンドは角度がありなかなか見やすい。ホーリーホックカラーのトラックもまた色鮮やかだ。
メインスタンドからピッチまでは距離をあまり感じないため、目の前で行われるプレーはなかなかに迫力がある。
一応屋根はついているがスタンドを覆う大きさとまではいかないため、雨の時は場所を選ぶ必要がある。
また屋根の位置が結構高い場所にあるので、風が強い日はそもそも屋根が意味をなさない可能性もある。スタジアム後方もスカスカだし。
座席には背もたれがほとんどないのでずっと座っているとちょっと疲れる。
ビジョンはなかなか大きくて見やすい。
ただこの写真からわかるように、サイドスタンドには芝生しかなくピッチとの距離もあり、角度も緩やかなためここで見るのはかなり大変だと思われる。
コンコースはこんな感じ。スタンド自体は新しいためコンコースもキレイで歩きやすいが、それなりにスペースはあるのに出店やイベントブースがないのがちょっともったいない。
コロナがなければ何か出しているのかもしれないが。
【雰囲気】★★★★☆
応援はバックスタンドの一部のサポーターが太鼓で音頭を取り、手拍子を送ってスタジアム全体でリズムを合わせていくスタイル。
Jリーグで手拍子のみの応援が実施されて久しいが、各クラブにこのスタイルはだいぶ根付いてきているようだ。そりゃもちろん歌えたら最高なんだけども。
メインスタンドには応援のリズムを示すボードとサポーターのメッセージが掲示されている。
これを見るよりは実際に現地で聞いてやりながら覚えていく方が早いとは思うが、このような細やかな気配りはスタジアムの一体感をあおるうえでも大事な取り組みである。
スタジアム右側の景色。
スタジアム左側の景色。基本的にスタジアム周りには何にもないと言っていいだろう。
【グルメ】★★★★☆
グルメはスタジアムから徒歩3分ほどのサブグラウンドと、スタジアム前の広場の大きく分けて2カ所で販売されている。
サブグラウンドからグルメをスタジアムまで持っていくときは結構歩くので、食べ物をこぼしたりつまずいたりしないよう十分注意が必要である。
こちらではカシマスタジアムでも名物となっているハム焼き。行列は長いがサクサクさばいていくので見た目よりは待たなくて済む。
カシマスタジアムでも食べたが、やっぱりハム焼きは間違いがない。
THE 肉を食べている気分に浸ることができ、満足度は十分。見かけたらとりあえず食べておく価値がある。
もう一つスタジアム前の広場はより店舗数が多く充実しているが、その分人が多い。
こちらは茨城にあるレジャー施設ポケットファームどきどきが出店しているお店で出している豚すじ丼。
豚すじというのは初めて食べたのだが、トロトロで大変美味しかった。
このようにお肉系のグルメがかなり充実しており、肉を食べたいときには最適だ。スタグルなんて大体肉だけども。
【街との一体感】★★★★☆
水戸駅のペデストリアンデッキにはひそかに横断幕が張られている。
また水戸駅南口を歩いて行ったところにある商店街には、ホーリーホックの旗が並んでいる。
水戸の一部では存在感があるかな、という印象。
郵便局前にはホーリーホックの装飾を施されたポストがあった。
ポストを丸ごと装飾しているというのはなかなか珍しく、水戸市と対立していた時代があったことを考えると隔世の感がある。
とはいえ、同じく茨城をホームとするBリーグの茨城ロボッツがB1に昇格したということもあり、存在感では少し押され気味であった。
現実的に考えて、街を盛り上げるにはある程度結果も出さないと人の心は動かないのかな、と感じてしまった。ホーリーホックもJ1に昇格せねば…。
茨城ロボッツのホームみとアリーナはこちら。ホーリーホックとは共闘体制を望んでいるようだ。
【満足度】★★★★☆
水戸市と対立していたというちょっと寂しい歴史を持つ水戸ホーリーホックであるが、水戸市とも水戸市民ともここ数年は良好な関係を築きつつあるようだ。
観客数も増加傾向にあり、時間はかかったがやっとスタートラインに立ったという印象がある。
あとは水戸市民をグッと惹きつけるためにも、目に見える「結果」が欲しいところだが…。
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