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もう一つのプロ野球・独立リーグとは?【コラムその80】

日本でプロ野球、というと、一般的にはNPBが主催するセントラルリーグ、パシフィックリーグのことを指します。

 

しかし、日本にはそれらに属さないプロ野球リーグ、通称独立リーグというのが存在するのをご存じでしょうか?

 

アメリカでは長い歴史がありますが、日本での歴史はまだまだ浅くなじみがない人も多いのではないでしょうか。

今回はそんな日本のプロ野球独立リーグをご紹介します。

1.独立リーグとは

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独立リーグはその名の通り、メジャーリーグやNPBの主催するリーグとは独立して運営されているプロ野球リーグのことです。

 

北米では19世紀末にはすでにあったとされていますが、独立採算ゆえ生き残るのは非常に難しく、現在活動している8つのリーグのうち一番古いものでも20年ちょっとの歴史しかありません。

ただ、プロ入りすぐの西武・西口が野球留学に行ったり、巨人や横浜で活躍した仁志がプロ最終年に入団したりと、日本人選手もたびたび参加しています。

 

日本にもかつて国民野球連盟というリーグがあったのですが、1947~48年限りで消滅しました(このリーグも面白いのでまた別の機会に取り上げたいですね)。

それ以来独立リーグはありませんでしたが、契機となったのは2004年プロ野球再編問題でした。

 

この時近鉄・オリックスの合併を受けて、各地でプロ野球チームの誘致活動が活発になったのです。

結局、楽天が参入することで東北楽天ゴールデンイーグルスが誕生し一件落着となるのですが、誘致活動をしていた各地の団体は宙ぶらりんとなってしまいました。

 

そこで誘致活動を行っていた松山をきっかけとして生まれたのが2005年に誕生した四国アイランドリーグ

新潟と金沢をきっかけとして生まれたのが2007年に誕生したベースボール・チャレンジ・リーグ、というわけです。

 

現在ではどちらのリーグもなんとか存続しており、しかもこれに加えて6つの独立リーグが活動するなど全国に広がりを見せています。

日本の野球熱がいかに高いかがこのことからも分かります。

 

2.日本の独立リーグ

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日本では現在7つの独立リーグが活動しています。

それぞれ規模や活動地域がまちまちですので、簡単にご紹介していきます。

・四国アイランドリーグplus

四国アイランドリーグplusは2005年に開始した実質最古参の独立リーグで、愛媛、香川、高知、徳島の四国各県にチームがあります。

plusという名前の通り、かつては福岡、長崎、三重にも球団があった歴史がありますが、なんだかんだあって解散してしまいました。

いかに独立リーグで球団を維持することが難しいかがわかります…(ちゃんと維持できている四国のチームは凄いですね)。

 

発足当初はプロ野球を目指す選手にチャレンジの場を提供する、というのを最大の目的としていました。

しかし時が経つにつれ、地域の活性化や地域貢献といった地域密着の面も強く持つようになりました。実際、四国のようにNPBのプロ野球チームがない地域で存続していくためには地域との密接なつながりも必要ですよね。

 

更には地域の人材育成の役割も担うようになりました。NPBに進めるのはごく一握りで、ほとんどの選手はそのあと就職先を見つけなければいけないことを考えると、実は一番大事なことなのかもしれません。

 

・ベースボール・チャレンジ・リーグ

ベースボール・チャレンジ・リーグは通称BCリーグといい、2007年に開始しました。

リーグが発足した当初の新潟、富山、長野、石川に加え、現在では関東各県(茨城、栃木、群馬、埼玉、神奈川)、福井、福島、滋賀のチームが加わり、12球団と全国の独立リーグで最多のチーム数となっていました。

ところが、リーグの運営方針の違いから富山、石川、福井、滋賀が脱退、下記の日本海オセアンリーグに移籍し現在では8球団となっています。

 

特徴としては選手に年齢制限が設けられている点でしょう。基本的にチームに在籍できるのは26歳までとなっており、それ以降は退団しなくてはなりません。

その代わりオーバーエイジ枠も設けられており、6人までは在籍が認められています。

ただしこれはどちらかというと若手の見本という役割が大きく、NPBで実績を残した西岡や川崎、村田などがこの枠での在籍経験があります。

 

またもう一つの特徴として、オフシーズンには給与が支払われないという点が挙げられます。もちろん人件費削減の意味合いもあると思いますが、この期間を利用して選手に就業経験を養ってほしいという意図があります。

もちろん間には人材派遣会社が入りますが、この期間だけでも実際に企業で働くという経験をすることは選手のセカンドキャリア形成においても非常に大事なことでしょう。

 

・日本海オセアンリーグ

2022年より、ベースボール・チャレンジ・リーグから脱退した富山、石川、福井、滋賀が立ち上げたのが日本海オセアンリーグ

BCリーグでは2021年、コロナの影響で東地区、中地区、西地区に分かれて活動していました。

ところが、東地区のチームばかりNPBファームとの交流戦が行われるなど東西格差が顕著になりました。これが独立の大きなきっかけとなったようです。

 

まだまだ新しいリーグですので今後に期待ですね。わざわざ独立したのですから、BCリーグとの違いをどんどん前面に打ち出していきたいところでしょう。

 

・関西独立リーグ

関西独立リーグは2014年に開始したリーグで、その名の通り関西の兵庫県三田市、大阪府東大阪市と堺市、和歌山県田辺市に各球団があります。

なお現在行われているリーグは2代目で、初代はいろいろもめた末全球団離脱という前代未聞の事態に陥りました。詳細は省きますが、どうもリーグと球団のコミュニケーションがうまくいっていなかったようですね…。

 

そして離脱した球団が集まってできたのが今の関西独立リーグです。リーグの理念も前二つのリーグとほとんど同じはずですが、具体的な動きがどうも見えてきません…。

将来の動向が心配です。ただまあ、良くも悪くも現状では動きがないのかもしれません(それでいいのかという話ですが…)。

 

・北海道ベースボールリーグ

北海道ベースボールリーグは2020年にできたリーグで、北海道の富良野、美唄、石狩、士別、砂川、奈井江に各球団が置かれていました。

が、こちらも2022年に美唄、石狩、士別の3チームが独立し、後述の北海道フロンティアリーグを立ち上げることになりました。日本の独立リーグ界は激動のさなかにあるのです…。

 

リーグの理念がこれまでのリーグとは一線を画していて、まず第一に選手に居住地と食事を与えることを掲げています。

その代わり選手は午前中地域の企業や農家の下で仕事をしています。高齢化が進む北海道で、若い人たちが仕事を手伝うというだけでも地域にとっては大きなプラスなのです。

 

その他にも地域独自通貨の発行を行い選手はその通貨で生活する、チームには監督を置かず各分野の専門家から学ぶなど、あまりにも斬新な試みを続けています。

そのすべてがうまくいっているわけではないようですが、新しいことに挑戦していく意気込みはとてもいいのではないでしょうか。

 

なお、以前には新庄剛志氏にオファーを出したりもしています。

NPBしか考えていないとして断られてしまったようですが、これだけ新しい考え方のリーグであれば新庄氏も楽しめたんじゃないか?とは思います(目立ちたがり屋の彼には難しいのかもしれませんが…)。

今後の動きが楽しみなリーグの一つです。

 

・北海道フロンティアリーグ

2022年に美唄、石狩、士別の3チームが独立して立ち上げたのが北海道フロンティアリーグ

安定を目指したベースボールリーグに対し、その運営方針に反対した3チームが独立することになったようです。

 

ただ、基本的な方針はベースボールリーグと大きく変わることはなく、道内への移住の促進、地域活性化を理念としています。

もちろん、NPB、あるいはほかの独立リーグへ進む選手を応援するのも理念の一つ。手段は異なるものの、将来的にはベースボールリーグと再び合流して北海道の野球界を盛り上げたい、と考えているようです。

 

・九州アジアリーグ

九州アジアリーグは2021年に開始した出来立てホヤホヤのリーグで、まだ大分、熊本の2チームしかありませんでした。

しかし2022年、堀江貴文氏が福岡北九州フェニックスという球団を作り参入しています。

堀江氏にとっては2004年にNPB参入を目指したライブドアフェニックス以来の悲願、ということになります。もちろん球団名もそれを踏襲したものです。

今後についてはお手並み拝見、といったところでしょう。

 

リーグとしてはゆくゆく九州8県にチームを置くことを目指していますが、すでに琉球ブルーオーシャンズがある沖縄とはどのような関係となっていくのかは興味深いところです。

琉球ブルーオーシャンズは独立リーグではなくNPBへの参入を目指しており、九州アジアリーグへの参加は見送っています。

個人的にはまず九州アジアリーグで実績を作ってからNPBを目指せばいいのに、とは思うのですが…。

 

3.結局、NPBに選手を輩出できているのか?

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地域密着、人材育成などの役割も担う独立リーグですが、プロ野球ファンとして気になるのはやはりNPBに選手を輩出できているのか、という点でしょう。

 

まず四国アイランドリーグplusにおいては2005年に中谷、西山の二人がドラフト指名されたのを皮切りに、60人が指名されています。

またBCリーグでは2007年に内村賢介が指名され、現在までに50人が指名されています。

関西独立リーグでは3人が指名されています。

独立リーグ全体で見ると、現在ではおよそ1年に10人がNPBに指名されている、といったところです。

 

これを多いとみるか少ないとみるかは微妙なところですが、主要な2リーグの各球団からおよそ一人ずつ指名されていると考えると、割合としてはそれなりに高いのではないでしょうか(本当のトップクラスは高校や大学から引き抜かれていきますし…)。

 

ただ残念ながらそのほとんどが育成指名にとどまっており、1軍の試合に出ることすらかなわないまま退団するという例が非常に多いです。

これまでの選手のうちNPBで活躍した主な選手を上げると、

・二度の首位打者を獲得した角中(ロッテ)

・俊足を生かし内外野で活躍した三輪(ヤクルト)

・一時中日のレギュラーとなった亀澤(中日他)

・100ホールドを達成している又吉(中日)

・BCリーグ最初の指名選手、ユーティリティープレーヤーとして活躍した内村(楽天、DeNA)

・主にリリーバーとして活躍した三ツ間(中日)

・主に代走として出場し盗塁王を獲得した和田(ロッテ)

といったところでしょうか。

他にもDeNAの山本など今後が期待されている選手もいますが、現時点で一軍でそれなりに出場がある選手となるとこれぐらいに限られてきます。

 

それだけプロで活躍するというのは難しいということですね…。各リーグにはNPB選手を輩出するのはもちろんのこと、セカンドキャリアの形成というところには特に重点的に取り組んでほしいものです。

もちろん、それは各リーグちゃんとわかっていると思いますけどね。

 

過去プロスポーツ選手のセカンドキャリアについて書いた記事もご覧ください。

sportskansen.hatenablog.jp

 

4.まとめ

以上、独立リーグについてご紹介しました。

もちろんNPBの選手輩出は大きな目標としてありますし、多くの人は独立リーグからプロ野球で活躍する選手が出てくることを楽しみにしているでしょう。

 

とはいえ、これだけ多くの選手が出ているにもかかわらず1軍で名前が知られるほど活躍できるのはほんの一握り、というのが現状です。

これからも引き続き独立リーグには選手の育成はもちろんのこと、社会に役立つ人材の育成、そして地域の活性化といった役割を果たしていってほしいところです。

地域に必要とされるリーグとなってこそ、本当の意味でのプロ野球リーグとなれるのかもしれません。

 

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