注:本記事は新型コロナウイルス感染拡大後の情報を元にしています
【概要】
札幌厚別公園競技場は、1986年開場、北海道札幌市にある競技場。
厚別競技場は元々、国体やインターハイの会場として作られた。
1996年には、Jリーグ入りを目指して東芝サッカー部を母体としたコンサドーレ札幌が結成され、そのホームスタジアムとなった。
特に開幕した96年から97年にかけては21勝0敗の記録を残し、ファンからは「聖地厚別」と称えられるまでになった。
まあ、Jリーグに昇格した98年からは厚別での勝率が特段高いわけではないのだが…
信じる者は救われる、ってやつか。
2001年に札幌ドームが開業すると、コンサドーレは札幌ドームと厚別の併用体制に入った。
しばらくはほぼ同数の試合が行われていたが、2010年代に入ると徐々に厚別での試合数が減少。
少ないときには年間で2試合しか行われないような年もあった。
というのも、厚別の設備はJリーグの試合を開催するのに不十分、という問題があるためだ。
具体的には厚別競技場にはスタンドの一部しか屋根がない、常設のナイター設備がない、など。
また厚別競技場には、11月以降使用できない、という制約もある。
詳しい理由は不明だが、北海道は日照時間が短いから芝生を養生する必要がある、とか、雪が降るからそもそも使いようがない、とか、寒すぎるから、とか、おおむねそんなところだろうか。
ともかく、設備的に不十分な厚別では開催試合数が減っており、いつしかコンサドーレの正式なホームスタジアムからも外れてしまった。
さらに追い打ちをかけそうなのが、北海道日本ハムファイターズの新球場への移転だ。
これにより札幌ドームがガラ空きとなるため、よく言えばコンサドーレが使い放題、悪く言えば使わざるを得ない、という状況になる。すなわち、厚別での開催がより減っていく可能性が高いのだ。
そんな札幌ドームの記事はこちら。
今回は、もしかしたら最後になるかもしれない?厚別での開催試合を観戦した。
ファイターズ新本拠地となるエスコンフィールド北海道も見学した北海道旅行記はこちら。
【アクセス】
最寄まで★★★☆☆
最寄は札幌地下鉄東西線大谷地駅。札幌からは乗り換え含め20分ほどで、札幌ドームより少し遠め。
しかし駅名表示は何でこんなに控えめなんだろ…?
最寄から★★★☆☆
大谷地駅からは徒歩20分少々。駅からは案内も充実していてわかりやすい。
道中では北海道の豊かな自然をちょっとだけ味わえる。
途中横断歩道を渡るのが少々たるいかな。
帰り信号無視してる人もいたけど、死にたくなかったらやめた方が良いよ。
やがて厚別公園の大きな広場が見え、それを超えるとスタジアムにたどり着く。街中から公園への風景の移り変わりが楽しい。
また駅からの直行バスも運行されている。
【観戦環境】★★★☆☆
高さがなく、ピッチ全体が見渡しづらいためサッカー観戦の環境としては決して良いとは言えない。
選手に近い目線からピッチを見られる、といえるかもしれないが…。
ただ、そのおかげか思ったよりも臨場感がある。程よいサイズの、昔ながらの陸上競技場だ。
バックスタンドから見たホームコンサドーレサポーター側。
バックスタンド全景。
屋根もなく、ベンチ式の椅子でお尻も痛くなる。環境面では札幌ドームには遠く及ばない。
バックスタンドの裏側。
このスタジアムは回遊性が非常に悪く、運営上の都合もあり簡単に行きたい場所に行けないようになっている。
グルメを買いに行くときもかなり遠回りをしなければならないし、日常的に使うのには向いていなさそうなスタジアムかな。
スタジアム周りは自然も多く歩いていて気持ちいいが、通行止めの場所がとても多い。なかなか思うように移動できず結構困る。
試合がない時に周りをランニングするのにはよさそう。
このスタジアムの大きな特徴が、常設の照明設備がないこと。
そのためこのようにわざわざ照明設備を持ってくる必要がある。試合をするだけでもなかなかの手間がかかる。
その代わり移動できるため非常時にも照明が活用できるようだ。
ビジョンはアウェイ側の後ろに一枚。大きさは標準的。
バックスタンド中央には国体で使ったと思われる聖火台。日本の国体スタジアムにはよくある光景だ。
過去の産物になったかなあという気はするが。
国体とスタジアムの関係についてはこちら。
【雰囲気】★★★★★
試合前から奮い立つコンサドーレサポーター。
聖地厚別での試合が最後と噂されていたこともあり、その気合の入りようも大変なものだ。
午後16時キックオフ。相手チームの一角以外はほとんどスタジアムの360°コンサドーレの赤と黒に染まった。
やはりコンサドーレを愛するコアなファンが集まってきたようだ。
北の大地に沈みゆく夕陽と、チームを鼓舞するコンサドーレサポーター。
ハーフタイムにはノーザンホースパークのチッチ君が登場。コンサドーレの背番号77を背負う、立派なコンサドーレの一員だ。
後半に突入。赤い夕暮れは、やがて漆黒の闇夜へと染まってゆく。
赤と黒に二分された厚別の空も、コンサドーレとの別れを惜しんでいるかのようだ。
前半で2‐1とリードしたコンサドーレだが、後半に2点を失い逆転される。
しかし試合を諦めているものは厚別にはいなかった。
1点を奪い同点に追いついたコンサドーレは、最後のワンプレーでゴールを決め逆転。
このゴールには聖地厚別も沸騰した。
最終的には4‐3でコンサドーレが勝利。聖地厚別の最後にふさわしい伝説の試合となった。
アディショナルタイムは異例の12分ともなり、試合を終わらせたくないという厚別の無言の叫びにも思えた。
「道民・市民を熱狂させ歴史を積み重ねてきた厚別はクラブの財産」
「俺たちはいつまでもこの空の下で歌い続けたい」
「厚別が聖地であると勝利で証明しよう」
最後に劇的な勝利を挙げ、厚別は聖地であると見事に証明して見せた。
帰り際、聖地にはその勝利を祝福する光のシャワーが降り注いでいた。
【グルメ】★★★☆☆
札幌ドームではなかなか食べられないキッチンカーが並ぶ。「厚メシ」と題したグルメがそろう。
チリソースとゴマがかかったコンサドーレバージョンのザンギ。黒がちょっと少ないが…。
めちゃくちゃ辛くて口がヒリヒリした。
たこ焼き。普通のたこ焼き。
バックスタンドにある厚別食堂の厚熱とうふの鴨ネギ汁。厚揚げがボリュームたっぷり。
…そんなに特筆するようなものはなかったが、これが最後かもな、と一口一口噛みしめて食べた。
【街との一体感】★★★★☆
最寄の大谷地駅を降りるとコンサドーレの横断幕が目に入る。開催試合数は少ないものの聖地は聖地だ。
途中の駐車場にはコンサドーレの旗がずらっと並ぶ。
競技場までの案内もされている。
スタジアムまでの通りにはコンサドーレの旗がずらっと並んでいて壮観だ。
しかし、帰るころにはほとんど撤去されていて寂しかった…。
【満足度】★★★★★
聖地厚別での最後の試合は、まさに厚別が聖地たらしめる理由を証明するのに十分すぎる一戦であった。
個人的にはこの試合を最後の伝説にして語り継いでいくのもストーリーとしてはよいのではと思うが、サポーターはそれを望んでいないのだろう。
聖地厚別の伝説は、これからも続いていくだろうか。
索引を作りました!
他のスタジアム・アリーナは↓からどうぞ