注:本記事は新型コロナウイルス感染拡大後の情報を元にしています
【概要】
埼玉スタジアム2002は、2001年開場、埼玉県さいたま市にある浦和レッドダイヤモンズのホームスタジアム。
コロナ禍前に訪れた時の記事はこちら。
今回改めて訪れたのは、コロナという大きな障壁を超えて浦和レッズの作り出す圧倒的な雰囲気がどう変化したかを見てみたいと思ったのが一つ。
そして前回はブログ記事として書くことを前提として訪れたものではなかったので、より充実させたものを書きたいと思ったのがもう一つである。
また、以前の記事では浦和レッズ自体についての概要を説明していなかったので、併せてご紹介したい。
浦和レッズというクラブは、もともと1950年創部の三菱自動車工業サッカー部にさかのぼる。
当時は浦和ではなく神戸を本拠に、1958年からは東京を拠点に活動していた。
そういった事情もあり、Jリーグ参入の際には東京の江戸川区陸上競技場をホームとして使用する予定だった。
しかしスタジアム改修で折り合いがつかず、紆余曲折の末現在の浦和をホームとする浦和レッズが出来上がった。
もしかしたらレッズがホームを置いていたかもしれない江戸川区陸上競技場はこちら。
こうして栄えあるJリーグ創設時の10クラブ、いわゆるオリジナル10の一つとして歩みを始めた浦和レッズ。
しかし開幕した1993年シーズンはあえなく最下位に終わる。今では信じられないことだが、当初はJリーグのお荷物クラブと揶揄されることもあったほどだ。
その後3位となるシーズンもありながらタイトルには手が届かず、1999年には最初のJ2降格チームの一つとなってしまう。
当時リーグナンバーワンの人気を誇った浦和レッズの降格は、メディアでも大きく取り上げられた。
翌2000年はJ2特有の戦い方に苦しむことになったが、最終節にも及ぶ死闘の末、ギリギリでJ1昇格を手にした。
その辺りの劇的なドラマは以下の記事にまとめています。
以降はJ2に降格することもなくJリーグの強豪クラブの一つとして大きな存在感を発揮。
現在までに2度のアジアチャンピオンを含む9つのタイトルを獲得している。
そんな浦和レッズの大きな特徴と言えば、やはり観客の多さであろう。
初年度は成績の悪さもあってか、なんと観客動員数は10クラブ中最下位であった。
しかし1996年に観客動員数でJリーグのトップに立つと、2000年に鹿島、2003~2005に新潟に抜かれた以外はほぼJリーグトップの観客数を維持している。
名実ともにJリーグ人気の一角をなすビッグクラブと言っていいだろう。
Jリーグの観客動員数については、アルビレックス新潟のホームビッグスワンスタジアムの記事でも触れています。
【アクセス】
最寄まで★★☆☆☆
最寄は埼玉高速鉄道浦和美園駅。赤羽岩淵から480円もする〇ったくり路線である…。
浦和駅からも決してアクセスがいいとはいいがたく、不便であることは否定のしようがない。
高速鉄道という割に特に速くないし…。
最寄から★★★☆☆
浦和美園駅からは線路沿いに徒歩15分ほど。道中も浦和レッズ一色で楽しい。
道自体は一本道で迷いようがないが、せっかく線路があるならスタジアムの近くに駅を作ってほしいところだ(実際そういう要望もあるらしい)。
また浦和美園駅からシャトルバスも出ているほか(往路限定)、浦和駅からもバスが運行されている。
一つストレスになるのは、この看板の先に道路があって結構車が横切っていくこと。
もちろん警備員さんが厳重に交通整理しているが、何万という人が歩くのでやはり危ないし余計に時間もかかる。
歩道橋か地下道を作ってほしいけど、それはそれで混みあうしなあ…。やっぱり線路を伸ばしてほしいなあ。
道路を渡って、平野にドでかいスタジアムが見えてきた時の高揚感はこのスタジアムならでは。
あまりの大きさに圧倒される。
日産スタジアムと同様、大雨などの非常時には水をためておける用地がある。向こう側には綾瀬川が流れている。
同じく日本最大級の日産スタジアムはこちら。
【観戦環境】★★★★★
サッカー専用スタジアムだけあって、試合の見やすさは間違いない。二階席でも快適に観戦できる。
ゴール裏は少し湾曲しているため、ちょっとだけピッチからの距離がある。
またサイドスタンドには屋根が無いので雨天時はカッパが必須だ。
ビジョンは両ゴール裏にそれぞれ1枚ずつ。十分な大きさがあるので距離があっても見やすい。
ちなみにこの写真でもわかるように南側のゴール裏(アウェイ側)に2つオレンジのゲートがあるが、これは大宮アルディージャがここで試合を行うときに南側をホームとして使うことに由来しているらしい。
同じスタジアムを使っても、ゴール裏すら同じ場所は使わない、という浦和と大宮の仲の悪さがこんなところでも垣間見える。
(ちなみに南の方が駅に近く便利である)
そしてここ以外のゲートは赤に染まっており、浦和レッズと大宮アルディージャの勢力図をそのまま表しているようでもある。
ライバル大宮アルディージャのNACK5スタジアムはこちら。
浦和と大宮のライバル関係についてはこちら。
屋根は非常に大きいので二階席は濡れる心配はほぼないが、もしかしたら一階席だと濡れてしまうかもしれない。そういう意味でも二階席の方がいいかも。
またどの席にもドリンクホルダーがついている。
スタジアム外には非常に広いコンコースがあって、シートを広げてここで飲食している姿も散見される。
おかげで、数万という人が集まってもコンコースが混みあうことはほぼない。
ただし、場内では厳しく交通整理がされていて、両チームのサポーターが決して交わらないよう徹底されている。
熱すぎる浦和レッズゆえ、30年の歴史の中で積み上げられてきたノウハウなのだろう。運営するのも大変ですなあ…。
場内にも扉があって、時と場合によって物理的に行き来できないようになっている。特に浦和はいろいろあるだろうからねえ…
場内のコンコースも十分広いのだが、一つ問題があるとすれば、スタジアム内の構造が非常に複雑で目当ての場所にたどり着くのがとても難しいことだ。
入り口から直で席に向かう場合はチケットの記載通りのゲートを通ればいいのだが、例えば目当てのグルメを買いに行こうとなった時に3階以上の行き方が非常にわかりにくい。
その辺は割と回遊性に優れる日産スタジアムとの大きな違いである(幸か不幸か日産スタジアムはスタジアム内のグルメにまともなものが無いのでそもそも困らないのだが…)。
コンコース内には浦和レッズ関連の展示や、
日本代表関連の展示も色々あり、ここを見ているだけでも十分楽しめる。
そして、2002ワールドカップ関連の展示も充実。優勝したブラジル代表のサインなど非常に貴重なものが多数展示されている。
北側、浦和レッズのゴール裏は装飾からして赤く、横断幕などがその辺に転がっていて若干歩きにくい。万が一踏んだらサポーターに怒鳴られそうでなかなか怖い…。
二階席に行くにはビルの5階分まで上がらなければいけないが、スタジアムとしては非常に珍しくエスカレーターがありなかなか足腰に優しい。
ただし上りしかない。
【雰囲気】★★★★★
コロナ禍と言えど、浦和サポーターの熱さ、迫力は相変わらずだ。
この時はまだ手拍子しかできなかったが、それでもゴール裏、そしてスタジアム全体から手拍子が響きスタジアム中に響き渡る。
歓声、ブーイング、そして歌声も聞こえてきた気がしたが、きっと浦和サポーターの熱き心の声が私に伝わってきただけだろう。
…などと冗談を言っている場合ではないのだが。
この日は浦和レッズ30周年記念試合。コレオグラフィーもばっちり決まって、スタジアムの一体感はさすがの一言。
とはいっても何か楽しいイベントが行われるわけでもないし、特別ゲストが登場するわけでもない。
そんなストイックさ、無骨さこそが浦和レッズの30年の象徴であると言えよう。
しかしそんなストイックさゆえ、やっぱり浦和サポーターは怖いし、家族連れで楽しくサッカー観戦というのには向いていないのは正直なところである(この日もなにやら内輪で怒鳴っている人がいた)。
実際、私の周りにも子供は見られなかったし、若い女性もそれほど多くはなかった。
スポーツに限らずエンタメが充実したスタジアムが増えているこの令和の時代に、果たして浦和というクラブは生き残っていけるだろうか。
Jリーグにこういうクラブがあることは個人的には良いと思うのだが(もめ事は起こさないという前提で…)、現実としてコロナ禍前ですら観客が減っていた、そして新規客が非常に少なかったという問題もある。
浦和レッズはこの姿勢を貫いていくのか、はたまたどこかで大きく舵を切ることになるのか、とても興味深い。
そうはいってもスタジアムの雰囲気自体はやっぱり最高だ。
今回は17時キックオフということで、夕暮れから夜までのスタジアムを楽しむことができた。
夜のスタジアムは、昼とはまた違った良さがある。夕闇に光る照明がエモい。
夜の浦和サポーターはより迫力が増す。
帰り際のスタジアムも、実は非常にいいのである。ほとんどの人は急ぎ足なのであまり振り返らないが…。
仕事帰りふと空を見上げると、星空が広がっていたりするものだ。幸せというのは見えていないだけで、案外近くに転がっているものなんだよな…なんちって。
ちなみに帰り道はこんな感じで何もない。理想と現実。
【グルメ】★★★★☆
埼玉スタジアムはグルメは充実しているもののこれといった名物がなかった。
そこでみんな大好きカレーライスを名物にするため、埼スタカレーと題しスタジアム内外の10店舗ほどでカレーを取り扱っている。
こちらは埼スタでも屈指の人気店、カフェ砂時計の喫茶店のカレー。喫茶店らしくほっとするようなカレーだ。
更に喫茶店ということで、コーヒーロールとウイナーコーヒー(Winnerとかけているらしい)も購入。苦みと甘みが程よいバランスでおいしい。
ちなみにカフェ砂時計は浦和駅の近くに本店を構えており、50年近い歴史がある老舗だ。
更にグルメを充実させるため、埼スタ横丁なるエリアを設定。埼玉のお店、食材、そして名物グルメがそろっている。
ちと狭いのがネック。
こちらは埼玉ソウルフードの一つ、娘娘(にゃんにゃん)のスタカレー。
カレーと言いつつカレーではないという、他県の人からしたらまるで訳の分からない一品。中華風あんかけ丼、とかの方が分かりやすい。
なんともB級グルメ感にあふれ、スタグルにはぴったりだ。
こちらは以前北浦和駅前のお店で食べたスタミナラーメン。このあんかけをご飯にのっけてできたのが上のスタカレーということらしい。
あんかけはピリ辛でやみつきになる味で、ご飯でもラーメンでもよく合う。こちらのラーメンも埼スタで味わえる。
こちらは焼きそば専用に3年をかけて開発したところざわ醤油を使った焼きそば。
焼きそばにソースではなく醤油というのは新しいが、香ばしい醤油と焼きそばはなかなかいいマッチング。醤油はなんにでもよく合うなあ。
とまあ埼スタも名物を作ろうとテコ入れを始めている。いずれは名物ぞろいのスタジアムになったら最高だなあ。
【街との一体感】★★★★★
こちらの項目の詳細については以前の記事をご参照ください。
今回は少し情報を追加。
こちら埼スタ最寄りの浦和美園駅。一応大宮アルディージャも試合をやるはずだが、駅は真っ赤に染まっている。
ちなみに今回初めて知ったのだが、浦和美園駅と埼スタは浦和区ではなく緑区らしい。
すなわち、本当はここは浦和ではないのである。
浦和駅のホームには、埼玉スタジアムの芝を使ったというベンチが設置されている。ただし残念ながら芝に触れることはできない。
【満足度】★★★★★
コロナを経ても埼スタの熱い応援というのは失われていなかったし、グルメに関しては少しずつ進化している印象を受けた。
やはり浦和の持つ熱気というのはJリーグでも今なお抜けたものがある。
ただ、これだけ硬派で、これだけ完成されているスタジアムである以上、かえってこれ以上進化させていくのが非常に難しい、というのは感じざるを得ない。
よく言えばJリーグのトップランナーとして走り続けている、悪く言えば時代遅れになってしまっている、といったところか。
それだけ独自路線を突き進んでいる、と言えるのかもしれない。
もちろん、時代が変わって今後このような「硬派なスタジアム」が主流になる可能性もあるし、それは誰にもわからない。
いずれにせよ、浦和レッズというクラブがこの姿勢を変えることはしばらくないであろうし、これからの令和という時代をどう生き抜いていくのか楽しみにしたい。
個人的にはこういう雰囲気、結構好きだよ(観戦ルールは守ってね)。
索引を作りました!
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