注:本記事は新型コロナウイルス感染拡大後の情報を元にしています
【概要】
長居陸上競技場(ヤンマースタジアム長居)は、1964年開場、大阪府大阪市にある陸上競技場。
2021年まではJリーグセレッソ大阪のホームスタジアムであった。
元々は大阪中央競輪場の跡地に作られ、開場直後には1964年東京オリンピックのサッカー5~8位決定戦が行われた。
ただしこれは公式なものではなく、大阪を盛り上げるべく行われた非公式の試合だったらしい。今ではそんなことは考えられないが、やはり昭和の出来事はめちゃくちゃで面白い。
また全国高校サッカー選手権も行われるなど、関西を代表するスタジアムの一つだった。
そんな長居が世界的な注目を浴びることになったのは、2002年FIFAワールドカップだ。
この大会では3試合が行われたが、特に日本がチュニジアを2‐0で破り初のベスト16の切符を手にした試合は日本中を歓喜の渦に巻き込んだ。
長居が世界の晴れ舞台となった機会はこれだけにとどまらない。
2007年には世界陸上競技選手権大会、通称世界陸上が行われた。日本ではワールドカップと世界陸上が行われたのはこのスタジアムだけである。
この大会の開会式では食い倒れ太郎、宝塚歌劇団が登場、さらに織田裕二が熱唱するなど大阪らしくやりたい放題であった。
大会自体は盛り上がったものの、選手の泊まるホテルが確保できずロビーで寝泊まりした、競歩の周回数を運営が間違え失格となった、マラソンで提供されるドリンクがお湯のように温まっていたなどずさんな運営が浮き彫りとなり、ちょっとした黒歴史となってしまった。
それから4年後、長居が再び注目を浴びることになったのは、2011年3月に行われた東日本大震災の復興支援チャリティーマッチだ。
当時は計画停電の影響で東日本ではサッカーの試合を行うことができず、大阪にあるヤンマースタジアムに白羽の矢が立ったのである。
この試合では日本代表とJリーグ選抜が対戦。
一般的なチャリティーマッチと違いお互い本気でぶつかり合う大変見ごたえのある試合となったが、終了間際の三浦知良のゴールは日本国民を勇気づけるものだった。
この試合の詳細は下記の記事にまとめています。
しかしセレッソ大阪がホームスタジアムを隣の長居球技場に移すなど、関西にも新しいスタジアムが増えたこともあってかサッカースタジアムとしては徐々に役目を終えつつある、というような印象も受ける。
今回はそんな長居陸上競技場で行われた、日本陸上選手権大会を観戦した。陸上競技場としては日本選手権も頻繁に行われ今なお現役バリバリである。
【アクセス】
最寄まで★★★★☆
最寄はJR阪和線、大阪メトロ御堂筋線の長居駅、
あるいは鶴ケ丘駅。
ヤンマースタジアムはどちらから行ってもそれほど距離は変わらないが、新大阪、梅田やなんばから一本で来れる御堂筋線を利用する方が便利かも。
JRの場合は天王寺駅で乗り換えが必要なので少々面倒だ。本数も少な目。
最寄から★★★★★
最寄駅からはどちらでも徒歩5分ほど。アクセスの良さはヤンマースタジアムの自慢の一つ。
長居駅から行くとヤンマースタジアムと桜スタジアムのフラッグが交互に並ぶ道を通り、やがて大きなスタジアムが見えてくる。
スタジアムが見えた時のテンションの上がり方はどこに行っても変わらない。
大阪京都を一瞬で駆け抜けた今回の旅行記はこちら。
【観戦環境】★★★☆☆
サッカーを観る場合は陸上競技用の施設は観戦の邪魔になってしまうのだが、今回はむしろそちらの方が主役。
ただ陸上競技という性質ゆえどこが見やすいということはなく、どこに座っても見やすい競技もあれば見えにくい競技もある、という事態が発生する。
すなわち、トラック競技、投てき競技、跳躍競技がいろんな場所で行われるので、どれかしらは距離が遠くなってしまうのだ。
基本的には自由席なので競技ごとに席を移動するのも手だが、さすがに面倒くさいので…。
ちなみに、トラックのゴールに近づくにつれてチケットの値段は高くなる。が、一番安いチケットで十分見えるし、どこに座ってもさほど変わらない。
大きな屋根がついているが、いかんせんスタジアム自体が大きすぎるゆえ全体を覆うまでには至らない。
雨が降っている時はスタジアム上部の席以外レインコートが必要だ。
ご覧のようにサイドスタンドには一切屋根がないので大変だ。
幸か不幸か、ここでサッカーの試合を行う機会はだいぶ減っているのでここに座る必要はあまりないが…。
こちら側には、国立競技場と同様マラソンゲートが用意されている。
が、小さく作られているのであまり目立たないし、東京オリンピックでよりによって使われなかった国立競技場と違って大阪国際女子マラソンで毎年ちゃんと利用されている。
…しかし、国立競技場のマラソンゲートって何のためにあるんだろうな…。
ねえ。
ビジョンは左右にそれぞれ一枚あり、十分な大きさがあるのでとても見やすい。
ただ、今回一番困ったのが座席がホコリをかぶってしまっていたこと。
一瞬この数日に降った雨の影響かと思ったが、屋根の下のこの席まで吹き込むことはなかなか考えにくい。
長い間誰も座っていないので汚れてしまった、と考えるのが自然だろう。
セレッソ大阪がホームを移転した影響がこんなところで出てくるとは…。
私もそれなりにスタジアムには行っているつもりだが、こんなことになっているスタジアムは初めて見た。確かに、大規模なイベントでもないとなかなか座る人はいないだろう。
スタジアムも定期的に使ってあげないとダメなんだな…。
800mなどの中距離では選手がスタートすると、
係員さんがそそくさとプレートを片付けていったり、
ハードルも人海戦術で設置していったり、なかなか陸上競技を運営するのも大変そうだ。
その一方で、棒高跳びのハードルは自動で上げられたり(ウィーンという音がスタジアムに響き渡る)、
投げたやりはラジコンで元の位置に運ばれる。
少しでも人間の負担が減るよう、いろいろと技術も取り入れられているようだ。棒高跳びのハードルを上げる機械とか、めちゃくちゃニッチな製品だなあ…。
ここ最近できた大きなスタジアムでは2層、あるいは3層になっていることも多いが、ヤンマースタジアムはすり鉢状の一層式で客席もコンコースも一周ぐるっと回れる。
構造としては非常にわかりやすくていい。上の方の席に行くのはちと大変だが。
コンコースからは長居公園の各施設を見ることができる。自然もそれなりにあって気持ちいい。
かと思えば、ちょっと裏を見ると何やら残骸が放置されている。セレッソ大阪の試合で使われていたものだろうか。
しばらく使われも捨てられもしなかったのだろうし、これからもそうなんだろう。時代の流れというのは寂しいものだ…。
サイドスタンドからの眺め。サッカーを見る時はトラックの分遠いな、という感じはする。
でもすり鉢状のスタジアムはなかなかに迫力がある。満員のスタジアムを見てみたかったな…(最後の大阪ダービーを見に行くつもりだったがコロナで無観客となってしまった)。
非常に珍しいのが、スタジアム内にホテルがあるという点。
普通のユースホステルで窓からスタジアムが見えるということもないようだが、今度記念に泊まってみようかな。
ヤンマースタジアムのすぐ隣にあるのが、現在のセレッソ大阪のホーム桜スタジアム。
この数十メートルの間に非常に大きな壁ができてしまった…。
【雰囲気】★★★★☆
この日は日本中距離界のエース田中希実選手が出場するなど、日本選手権だけあって日本トップクラスの選手を見ることができた。
陸上競技はすべてのスポーツの中でも最もシンプルであるが、その中に濃厚な駆け引きがありじっくり見ていると面白いし、じっくり見ていなくても超人たちの動きだけで十分楽しめる。
もちろん、テレビで見る方が解説もあるし見るべき競技も絞られるので見やすいのは見やすいけど、生で見るのもたまにはいいものだ。一つ一つ競技をやっていたら終わらないし間延びしちゃうだろうしね。
個人的には東京オリンピックの男子100m決勝の演出がかっこよすぎたので、一度生で見てみたいという夢がある。
【グルメ】★★★☆☆
コンコースに売店がいくつかあり、そこで売っていた肉盛り焼きそばを購入。
すき焼き風の甘辛い味付けでなかなか美味だった。関西の焼きそばはこんな感じなのかな?
神戸名物のぼっかけと味が似ている気がした。
【満足度】★★★★☆
初めての陸上競技観戦だったが、極限までシンプルなスポーツゆえ単純に楽しめたし、その分駆け引きも分かりやすく非常に面白かった。
またスタジアム自体も巨大で迫力があり、サッカーでバリバリ使用されていたころの往年の姿を思い起こさせた。
とはいえ各所にしばらく使われていなかった形跡や老朽化の跡も見え、少し寂しい気持ちにもなった。
今後このまま朽ち果てていくのか、いずれ解体されてしまうのか、それとも改修されて何らかの形で使用されるのか。
もちろんたまには使われているところを見たいが、その役目は関西の周りのスタジアムに譲ってしまった感もあるし難しいかなあ…。
いずれにせよ非常に興味をそそられるので、定期的にその様子を観察していきたい。
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