日本ダービー。
それは全てのホースマンにとって、夢をつかむ憧れの大舞台。
日本ダービーを勝った馬は世代の頂点とみなされ、国際的な評価も3歳に限れば世界1位に位置づけられる非常に価値の高いレースです。
ダービー馬か、そうでないかは評価において雲泥の差があるのです。
しかし、日本ダービーの勝ち馬は本当に強いのでしょうか?
そこで今回は、歴代のダービー馬の戦績を眺めてみることにします。
(競馬における「強い」は無数の意味があり、また時代によってレース体系も全く違うため、あくまでも参考としてご覧ください)

全体を俯瞰する
まずは日本ダービー第1回から第92回まで、全馬の成績を見てみましょう。
全ダービー勝利馬の生涯勝利数はこちら。(中央競馬での戦績のみ)

こうして並べてみると、時代を重ねるごとに生涯勝利数は徐々に減少している様子が見て取れます。
種牡馬として活躍してもらうことを考えると、ダービーを勝った馬がわざわざリスクを負ってレースに臨むメリットが少なくなってきたと言えるでしょう。
ただしこのグラフでは、それ以外の情報はなかなか読み取れません。
ということで次は、生涯勝率を見てみましょう。

うーん、ますますわからないグラフになっちゃいましたね…。
一つ言えるのは、ダービーを勝ったような馬ともなると他のレースでもそこそこ勝てているということです。
もちろん前哨戦で好成績を収めないとそもそもダービーに出走できないので当たり前ですが、平均して一定の強さは持っていると言っていいでしょう。
ただしこれだけではやはりわからないので、今度はヒストグラムにしてみましょう。
まずは生涯勝利数から。

ダービー馬のうち最も多い成績は生涯勝利数4勝で14頭、次いで5勝で12頭。
平均すると7.6勝を挙げています。
ということは、4~7勝あたりがダービー馬の平均成績と言えるでしょう。
やはり普通の競走馬に比べると、圧倒的に好成績を残していることが分かります。
続いては生涯勝率のヒストグラム。

ダービー馬で最も多いのが生涯勝率40%台の22頭、続いて50%台の15頭。
平均は50.3%で、半数以上の馬が勝率50%を超えています。
最大18頭が出走する競馬と考えると、これは驚異的な高さと言えるのではないでしょうか?
勝てるのはたった1頭だけですからね。
グレード制導入以降G1での勝利数
日本競馬でグレード制が導入されたのは1984年から。
ということでちょっとおまけして、1983年のミスターシービー以降日本ダービーを勝利した馬のG1勝利数を見てみましょう。

G1で2勝を挙げた馬が一番多く16頭、G1での勝利は日本ダービーのみという馬が15頭。
いくらダービー馬と言えど、G1を勝つのはそれほど難しいということです。
ただ全体を平均すると2.5勝となり、3勝以上挙げた馬も12頭います。
これらの馬は歴代最強馬論争にも食い込んでくる、競馬界の歴史に残るエリートたちですね。
最強ダービー馬と最弱ダービー馬
最後に、個別の成績を見ていきましょう。
日本ダービーの本質である「種牡馬として価値」にも注目していきたいと思います。
生涯最多勝
1位 ハクチカラ(第23回) 20勝
2位 キーストン(第32回) 18勝
3位タイ ヒサトモ(第6回) 16勝
3位タイ ボストニアン(第20回) 16勝
最多勝に名を連ねるのは昔の馬ばかり。
実際昔は今に比べるとかなり無茶なローテをこなしていたようです。
1位のハクチカラは日本調教場として初めてアメリカの重賞で勝利した名馬です。
アメリカ遠征までの3年間で20勝を挙げ、アメリカで1勝を挙げました。引退後はインドに渡り、インドのクラシック馬を輩出するという珍しい経歴を持っています。
2位のキーストンは残念ながら阪神大賞典のレース中に故障が発生し安楽死の措置が取られたため子孫は残っていませんが、いとこのマーシュメドウは重賞勝利馬を輩出しています。
3位のヒサトモは牝馬として初めてダービーを制した馬。ウオッカの大先輩ですね。
しかし引退後無理やり競走馬として復活させられ、調教中に亡くなるという不遇の晩年を過ごしました。
同じく3位のボストニアンは33頭が出走するダービーで1番人気に押され勝利を収めましたが、種牡馬としてはあまり活躍馬を出せませんでした。
その代わり母系として重賞に勝利する馬を輩出するなど、一定の存在感を見せました。
生涯最多敗
1位 オペックホース(第47回) 37敗
2位 コマツヒカリ(第26回) 29敗
3位 ワンアンドオンリー(第81回) 27敗
一方で最多敗を記録したのはオペックホース。
ダービー勝利から引退まで32連敗を記録し、「史上最弱のダービー馬」とまで言われています。
では種牡馬としてどうだったのかというと、ホッカイドウ競馬で活躍したベストンダンデイを輩出するなどまずまずといったところ。
最初の種付料はほとんどタダみたいなものでしたが、その後20万円くらいには上がったとのことです。
続いて2番目に負け数が多かったのはコマツヒカリ。
とはいえ日本ダービーを兄弟制覇していたり、重賞をもう一つ勝っていたりそれなりに活躍はしました。種牡馬としてはほぼ活躍できませんでしたが…。
3番目に負け数が多かったのはワンアンドオンリー。
まさかこんな最近の馬がランクインするとは…。
デビュー戦は12着に終わっており、二けた着順からのダービー制覇は史上初でした。
重賞はダービーを含めて3勝しており一定の実績は残しています。生涯で挙げた4勝中3勝が重賞ってのもなかなか勝負強いですね。
しかしダービー直後に神戸新聞杯を勝利してからは、勝利どころか掲示板も1回のみというダービー馬としては物足りない成績でした。
それでも33戦もレースに出走しているのもすごいことですし、ドバイシーマクラシックで3着に入っている実に不思議な馬です。
種牡馬としては勝ち馬を14頭出しており、意外と悪くありません。
重賞で勝利する馬が出てきたら面白いですね。
生涯最高勝率
1位タイ ガヴァナー(第4回)100%
1位タイ クリフジ(第12回)100%
1位タイ トキノミノル(第18回)100%
生涯最高勝率は3頭並んで10割。昔の競馬は今と違ったんでしょうね…。
ガヴァナーは無敗でダービーを制するも、調教中の事故により安楽死の措置が取られました。そのためたった3戦で終わってしまいました。
当時の調教技術の未熟さが招いた事故と言えるでしょう。
クリフジは11戦11勝を挙げ、歴代最多全勝記録を持っています。
数字だけを見れば、歴代最強馬の一頭に挙げられてもおかしくありません。
トキノミノルはダービーまで無敗、10戦10勝でクラシック二冠に輝きましたが、残念ながらダービーから17日後に破傷風を発症し亡くなってしまいました。
そのため「幻の馬」と称されています。
生涯最低勝率
1位 オペックホース(第47回)9.8%
2位 ワンアンドオンリー(第81回)12.9%
3位 コマツヒカリ(第26回)17.1%
最低勝率は最多敗の順位が入れ替わっただけなので省略。
しかしここにもワンアンドオンリーの名が…。
これだけだとかなり古いデータも入ってくるので、グレード制導入以降の記録も見てみましょう。
グレード制導入以降
生涯最多勝
1位 シンボリルドルフ(第51回)13勝
2位タイ ナリタブライアン(第61回)12勝
2位タイ ディープインパクト(第72回)12勝
グレード制導入以降で最多勝を挙げたのは皇帝・シンボリルドルフ。
史上初となる無敗の三冠、史上初G1で7勝を挙げるなど皇帝の名にふさわしい強さを誇っていました。
種牡馬としての代表産駒は、なんといっても同じく日本ダービーなどG1で4勝を挙げたトウカイテイオー。
その他にも重賞勝利馬を多数輩出し、種牡馬としても成功を収めました。
2位タイは同じく三冠を達成し、「シャドーロールの怪物」として親しまれたナリタブライアン。
胃破裂を発症し8歳で亡くなってしまったため種牡馬としてはあまり活躍できませんでしたが、母父として孫の代に重賞勝利馬を何頭か輩出しています。
同じく2位タイは「日本近代競馬の結晶」とも評されたディープインパクト。
シンボリルドルフ以来2頭目となる無敗の三冠、同じくG1で7勝を挙げるなど最強の名をほしいままにしてきました。
種牡馬としても父サンデーサイレンスの後継、あるいはそれを上回るほどの大活躍。
産駒のJRA通算勝利数は2750勝を数え、これはサンデーサイレンスを上回る数字です。代表産駒はジェンティルドンナやコントレイルなど挙げたらキリがありません。
生涯最多敗
1位 ワンアンドオンリー(第81回)27敗
2位タイ エイシンフラッシュ(第77回)21敗
2位タイ マカヒキ(第83回)21敗
最多敗は当然ワンアンドオンリー。
2位タイはエイシンフラッシュ。日本ダービー後は惜敗が続き、生涯で2勝しかできませんでした。
とはいえ漆黒の名優の異名を持ち、日本ダービーのみならず天皇賞(秋)も勝った、どちらかというと名馬寄りの実績を持っています。
何より印象的だったのは天皇賞勝利後デムーロ騎手が見せた、コース上での天皇陛下への敬礼。
日本競馬の歴史に刻まれる印象的な名シーンでした。
一方種牡馬としても、ジャパンカップを勝ったヴェラアズールを輩出するなどなかなかの活躍を見せました。
同じく2位タイとなったのはマカヒキ。
ダービー後はフランスのニエル賞、そして京都大賞典で勝利していますが、それ以外は勝つことができませんでした。
種牡馬としての実績はこれから積むことになりますが、果たしてどうなるでしょうか。
生涯最高勝率
1位 ディープインパクト(第72回)92.3%
2位タイ ミホノブルボン(第59回)87.5%
2位タイ キングカメハメハ(第71回)87.5%
最高勝率ナンバーワンはやはりディープインパクト。
日本においては有馬記念でハーツクライに敗れたのみです。勝利よりも敗北を語りたくなる、そんな馬ですね。
2位タイとなったのはミホノブルボン。
三冠をかけた菊花賞で敗れるまでは全勝、しかしその菊花賞後に故障が発生し引退という悲しい歴史を持っています。
種牡馬としても地方重賞で勝利した馬は輩出したもののJRAの重賞ウィナーを出すことはできず、活躍には至りませんでした。
老衰で亡くなるまで28歳まで生きることができたのが、せめてもの救いでしょうか。
同じく8戦7勝の成績を上げたのがキングカメハメハ。
NHKマイルカップと日本ダービーの二冠を達成した、かなり珍しい経歴の持ち主でもあります。
同じく故障をきっかけに引退しましたが、種牡馬としては大活躍。
サンデーサイレンスと血のつながりがなかったため相性が良く、ディープインパクトに次いで史上3頭目となるJRA通算2000勝を達成しました。
代表産駒にはロードカナロアやホッコータルマエなど、歴史的名馬の名前が並びます。
生涯最低勝率
1位 ワンアンドオンリー(第27回)12.9%
2位 マカヒキ(第83回)19.2%
3位 エイシンフラッシュ(第77回)22.2%
最低勝率は最多敗と同じ3頭なので割愛。
ここに入るくらいレース数をこなしたんだからそれはそれですごいことですけどね。
まとめ
以上、日本ダービーを勝った馬は本当に強いのか?検証してみました。
総じてみると、やっぱり日本ダービーを勝った馬は強いと言っていいのではないでしょうか。
また種牡馬としてはそのすべてを調べることはできませんでしたが、ディープインパクトやキングカメハメハは別格としてもそこそこ活躍している印象があります。
ただ日本ダービーを勝った馬は1頭残らず大活躍、とはいかないのも現実としてはあるように思います。
同様の検証を皐月賞や菊花賞、あるいは有馬記念などでも実施して、比較が出来たら面白そうですね。
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