選手と観客席の距離が近いことで話題となったエスコンフィールド北海道。
ところが、あまりにも近すぎることで規約に違反することが分かってしまいました。
よく考えてみるとサッカーやバスケではコートの大きさが決まっていますが、野球場では大きさがバラバラですよね。
そこで、野球場の大きさの規定を今一度ちゃんと見てみることにしました。
1.そもそも野球のルールはどこに書いてあるのか
そもそも、今回エスコンフィールド北海道が違反した規則とは何なのでしょうか。
それは「公認野球規則」と呼ばれる、野球のルールを定義している規則のことです。
昔はプロアマでルールが違っていた時代もあるようですが、1955年に統一されました。
つまり今は、プロ野球も、社会人野球も、学生野球も、同じルールでやっているというわけですね。最近だと申告敬遠(故意四球?)はプロもアマもほとんど同時に導入された記憶があります。
もっとも、タイブレークなど細かな違いはあるでしょうが。
この公認野球規則ですが、基本的にはアメリカで作られたルールを日本語に翻訳しているだけのものです。軟式野球に合わせて少し注釈がついている程度の違いです。
メジャーリーグで取り入れられたルールが翌年プロ野球に輸入されるようになっているのはこのためです。先ほどの申告敬遠もそうですね。
ただし、アメリカがそうしろといっているわけではなく、あくまで勝手に日本が取り入れているだけです。
もしやろうと思えば日本で勝手にベースを増やそうが、走る向きを逆回りにしようが、特に問題はありません。違う意味で大問題になるでしょうけど。
2.公認野球規則の競技場の項目を見てみよう
さて公認野球規則ですが、現在では書店で購入することができます。
販売を開始したのが2006年なので意外と最近なんですよね。それ以前にルールを勉強したいと思った人はどうしていたんでしょう。
また今はググっても文章だけではありますが簡単に出てきます。昔の人は野球のルールを勉強するのも大変だったんだな。
yokouchibaseballclub.web.fc2.com
この第二章に競技場の規定がありますので、さっそく見てみましょう。
・まず、本塁の位置を決め、その地点から二塁を設けたい方向に、鋼鉄製巻尺で、127㌳3⅜㌅(38.795㍍)の距離を測って二塁の位置を定める。次に本塁と二塁を起点としてそれぞれ90㌳(27.431㍍)を測り、本塁から向かって右側の交点を一塁とし、本塁から向かって左側の交点を三塁とする。したがって、一塁から三塁までの距離は127㌳3⅜㌅となる。
これは、塁の位置を決めたものですね。塁間が球場によってばらばらだったら野球にならないので当然です。
決め方としては先に本塁と二塁を決めてから一塁と三塁なんですね。別に順番はどうでもいいんですけど。
・90㌳平方の内野を作るには、まず各ベースライン(塁線)およびホームプレート(本塁)を同一水平面上に設け、続いて内野の中央付近に投手板をホームプレートより10㌅(25.4㌢)高い場所に設け、投手板の前方6㌅(15.2㌢)の地点から、本塁に向かって6㌳(182.9㌢)の地点まで、1㌳(30.5㌢)につき1㌅(2.5㌢)の傾斜をつけ、その傾斜は各競技場とも同一でなければならない。
これはどうやらマウンドに関する規定のようです。結構厳密に決まっているんですね。
よくあの球場はマウンドが低いとか、傾斜がないとか言いますが、ルール上はそういうことはないってことなんですね。現実問題として多少はあるのかもしれませんが…。
・本塁からバックストップまでの距離、塁線からファウルグラウンドにあるフェンス、スタンドまたはプレイの妨げになる施設までの距離は、60㌳(18.288㍍)以上を必要とする。
これが問題の記述です。エスコンフィールドは本塁からバックネットまでの距離が15mだったので規約違反となるわけです。
これに気付かないで球場を作っちゃったんだとしたら完全にうっかりミスですねぇ…。事前に規則を確認したり、あるいはNPBに問い合わせておくべきでしたね。
・外野は、1図に示すように、一塁線および三塁線を延長したファウルラインの間の地域である。本塁よりフェアグラウンドにあるフェンス、スタンドまたはプレイの妨げになる施設までの距離は250㌳(76.199㍍)以上を必要とするが、両翼は320㌳(97.534㍍)以上、中堅は400㌳(121.918㍍)以上あることが優先して望まれる。
こちらは外野フェンスの位置を決めている規則のようです。最低76.199m、できれば両翼97.534m中堅121.918m取ってください、ということですね。
これを見ると、大きい限りはいくらでもいいってことでしょうか。
全然ホームラン出ない球場とかあっても面白いかもしれませんね。試合は面白くないかもしれませんが。
また、外野フェンスの高さに関する規定はないんですね。結構意外です。
だからフェンウェイパークのグリーンモンスターみたいなのもできちゃうというわけですね。逆にフェンスなしの球場って許されるんでしょうか。
ちなみにプロ野球の球場では、両翼まで横浜スタジアムが94m、甲子園が95m、神宮球場が97.5mです。あれ、普通に足りてないな…。
・巻頭1図のグラスライン(芝生の線)および芝生の広さは、多くの競技場が用いている規格を示したものであるが、その規格は必ずしも強制されるものではなく、各クラブは任意に芝生および芝生のない地面の広さや形を定めることができる。
こちらは芝生に関する規定ですが、あくまで努力目標であってある程度自由にできるようです。
日本では甲子園が黒土だったり、球場によって様々な特徴がありますね。
とまあ、球場の規定はこんな風になっております。
もちろん塁の位置やマウンドなどはしっかり決められていますが、それ以外は割とゆるゆるなのが野球の特徴ですね。
サッカーでゴールポストの形がいびつだったりしたら大変ですが、野球ではそれが許されてしまうのです。
本場アメリカには本当にめちゃくちゃな球場がいっぱいありますよ。
3.なぜ球場の大きさはバラバラなのか
ではなぜ球場の大きさはバラバラなのでしょうか?
これには、野球という競技の成り立ちが関係しているようです。
野球は元々、タウンボールと呼ばれるアメリカのそれぞれの町で行われていた遊びを、ルールを統一したところから始まっています。
ですから、いくらルールを統一したと言えどそれぞれの公園の大きさはバラバラだったので、それに合わせて球場の大きさもバラバラになったということなのです。
そもそも、当初は外野フェンス自体がなく、ホームランと言えば今でいうランニングホームランだけを指していたんですよね。
そのあたりの野球の起源については以下の記事でより詳しく書いておりますのでどうぞ。
ですから、メジャーリーグでは特に球場の大きさがバラバラ、さらには左右非対称だったり変な形だったりしているわけですね。
一方で、日本においては大きさこそバラバラなものの左右対称の綺麗な球場がほとんどです。
これは想像ですが、おそらく日本に入ってきた時はすでに立派なスポーツとして輸入されたため、さらには日本人のまじめな性格も相まってキレイな形の球場が増えたのではないでしょうか。
ただし最近では、ズムスタのように日本の球場でも左右非対称のところが出てきました。
エスコンフィールドも左右非対称で、しかも外野フェンスが全て直線で構成されるようです。日本の球場としてはとても画期的ですね。
無理に非対称にする必要もないとは思いますが、その場所の事情に合わせて少し変わった形状にしてみるというのも味があって良いかもしれませんね。
4.まとめ
以上、野球場の大きさの規定を調べてみました。
エスコンフィールド北海道の件で何かと話題になった球場の大きさの規定ですが、ちゃんと見てみるといろいろ面白いことも分かりますね。
一方で、ホームからバックネットまでの距離の規定は必要なのかどうか?これもしっかり議論する必要があるのかもしれません。
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