注:本記事は新型コロナウイルス感染拡大後の情報を元にしています
【概要】
広島広域公園陸上競技場(エディオンスタジアム広島)は、1992年開場、広島県広島市にあるサンフレッチェ広島のホームスタジアム。広島ビッグアーチの愛称が付けられている。
開場直後のこけら落としとなったアジアカップでは、日本が初優勝を果たした縁起のいいスタジアムでもある。
広島市街からは山を隔てており、天候が変わりやすいことで知られている。
市街地で雨が降っていなくてもスタジアムでは雨が降っている、冬季は降雪のために閉鎖される、など日本の大規模スタジアムの中でもかなり特殊な環境と言える。よく作りましたねこんなとこに…。
そしてこのスタジアムは、ワールドカップを巡るドラマがあることでも有名だ。
開場当初、広島市はこのスタジアムの使用を想定し、2002FIFAワールドカップの開催地の一つとして立候補した。
当時このような大規模なスタジアムは日本にほとんどなく、開催は確実視されていた。
しかし開催にあたって、屋根をつけること、座席の改修が必要となった。
これに対し当時の広島市長は、「開催されるとしても3試合、それでは費用対効果に見合わない」として改修を見送ったのである。
結果的に広島での開催はならず、ワールドカップの誘致は実現しなかった。この時の判断が正しかったのか、そうでなかったかについては未だにわからない。
ただ、この判断がサンフレッチェ広島の新スタジアム構想に影響した可能性は十分に考えられる。
すなわち、エディオンスタジアムでのJリーグ開催には現在もなお問題点も多く残っているのだ。
具体的には上記の屋根、あるいはトイレなども含めた設備上の問題、市街地からのアクセスの悪さなどなど。
というわけで、現在は広島の中央公園内に新スタジアムを作る計画が立てられている。そちらについては改めて訪れた時にご紹介したい。
そして新スタジアムの開場は2024年を予定。そのためこちらのエディオンスタジアムで試合を見られるのはおそらく2023年までだ。
今回はJリーグオリジナル10の一つ、そしてJリーグ連覇を果たし黄金期を築き上げたサンフレッチェ広島の試合を、残りわずかとなったエディオンスタジアムで観戦した。
【アクセス】
最寄まで★★☆☆☆
最寄はアストラムラインの終点、広域公園前駅。
広島駅からは乗り換えも含めて1時間弱かかり、とてもアクセスがいいとは言い難い。坂をぐんぐん上っていくので景色は楽しいけど。
またJR横川駅からはシャトルバスも運行されていて、そちらを利用する人も多い。
最寄から★★★☆☆
広域公園前駅からは徒歩10分ほど。距離はそれほど遠くないが、上り坂があるので結構足腰には来る。
その分、スタジアムが見えてきた時の達成感も格別だ。
【観戦環境】★★★☆☆
今回はバックスタンドからの観戦。陸上競技場のためピッチからは距離があるが、スタンドがすり鉢状になっているのでそれなりに見やすい。
引きで見るとこんな感じ。両側にそれぞれビジョンがついている。
ピッチ全体も見渡せるし、同時にサッカーの迫力も感じられるいい距離感だ。
メインスタンド向かって左側。
ご覧のようにシートがベンチになっているため、座り心地はよくはない。クッションがあると便利。
向かって右側。どちらを向いても自然が豊かで、山を切り開いて作ったスタジアムなんだなと実感させられる。
大都市広島からはとても想像できない空気感だが…。
左側にあるフルカラーのビジョン。大きくはないが、ちょっと古いJリーグのスタジアムにはよくあるビジョンだ。
このスタジアムの大きな特徴と言えるのが右側のビジョン。
オレンジ一色の昔ながらのビジョンという感じだが、とりわけ文字のフォントがいかにも平成初期を想起させる。このフォント令和にもまだ生き残ってたんだ…。
このビジョンのおかげで、なんだかJリーグ初期にタイムスリップしたような錯覚に陥る。ビジョンの作る雰囲気って本当に大事なんだな…。
私はとても興味深くて楽しかったのだが、これを古めかしいと思う人もいるだろうし、感じ方は人それぞれだろう。
ただ間違いなく言えるのは、J1リーグという大舞台でこういう昔ながらのスタジアムを体験できるのはある意味とても貴重である、ということである。
スタメン表示は、なんと全部カタカナである。ファミコンみたいだ…。
このスタジアムの愛称の由来となっているビッグアーチこと屋根。
ビッグアーチという割にはメインスタンドの一部にしかかかっていないし、バックスタンドは野ざらしだ。
おそらくこのスタジアムができた時は画期的だったのだろうけど、今となっては中途半端だなあ、と思えてしまう。屋根の大きいスタジアムもずいぶん増えましたし…。
ちなみに、この屋根は原爆ドームをイメージして作られた、という話もある。
サイドスタンドからバックスタンドに向かうコンコース。
このスタジアムではバックスタンドの裏が山になっている影響か、バックスタンドに向かうにはサイドスタンドから入る必要がある。
最初よくわからず右往左往してしまった。
バックスタンドのコンコース。影になっていて涼しく、グルメも売っている。
ふと横を見ると、噴水が上がっていた。のどかだねえ…。
【雰囲気】★★★★☆
ホームサンフレッチェ側はほとんど埋まり、一体感のある応援が行われた。
この日はクラブ30周年の記念試合とあって、歴史を感じるいい雰囲気を感じることができた。
何より、観客がサッカーを「よく知っている」のがとても印象的だった。
いいプレーで歓声が上がるのは当たり前だが、このスタジアムではいいプレーが起きる「一瞬前」に歓声が上がる。
観客がサッカーに詳しい何よりの証拠だ。さすがサッカー王国広島である。サッカー王国が清水か、浦和かという話は置いといて…。
一方、反対側に目を向けるとスタジアムの大きさも相まって空席も目立つ。アクセスの悪さもあってか、なかなか客足は伸びないようだ。
良いスタジアムなんだけどね…。
コーナーキックのチャンスでは、タオルマフラーをぐるぐる回して応援。私も買って一緒にやりたかった、と思えるほど楽しそうだった。
例え声が出せなくても、こういう一体感を感じられる応援はとても大事だね。
【グルメ】★★★★★
スタジアム前の広場にはグルメの屋台がずらっと並びテンションアップ。
今回購入したのは焼鯖寿司、とり天とイカ天、そしてクラブの名前が入ったサンチェバーガー。
スタグルで寿司とは珍しいが、非常においしくて満足。
同じお店で焼牡蠣も売っていたのでとても食べたかったが、以前牡蠣を食べた時にあたったトラウマがあり、泣く泣く断念。
皆さんはぜひ食べてみてください。
こちらのサンチェバーガーは、2022年から発売された鹿肉を使った逸品。農作物への被害を防止するために捕獲されたシカのお肉を使っているようだ。
非常に肉々しく、野菜もたっぷりで大満足できた。これはオススメ。
しかし、せっかくの広島なのにお好み焼きの屋台があんまりないのはなぜなんだろう…?
作るのに時間がかかって回転が悪いから、とかかな?
お好み焼きなど広島のソウルフードを駆け抜けた今回の広島旅行記はこちら。
【街との一体感】★★★★☆
広域公園前駅を降りると、サンフレッチェの紫に染まった階段が目に入る。これだけでも非常にテンションが上がる。
駅の1階には、Jリーグを優勝した栄光の歴史がずらっと並ぶ。これだけ並ぶと非常に圧巻だ。
他にもユニフォームが飾られていたり、
選手のパネルが置いてあったり。
しかし車内には、サンフレッチェのポスターの下に大きなカープのロゴが。車体自体も真っ赤に染まっていた。
やっぱり、広島においてカープの存在感はあまりにも大きすぎる。
スタジアム周りにはマンホールがあったり、
サンフレッチェ仕様の自販機が設置されている。
アストラムラインのもう一つの終点本通駅にはサンフレッチェの看板があり。
その近くにはサンフレッチェのグッズショップがある。
広島市街の大きなアーケードにはサンフレッチェの幕があり、
お好み焼き屋さんが集まるお好み村というビルにもポスターがあった。
旅の終わりに買った、広島のソウルフードむさしのお弁当には、カープとサンフレッチェが並んで描かれていた。
とまあ、30年の時を経て広島という街にすっかり定着してはいるのだが、カープの存在感があまりに強すぎてちょっと埋もれがち、というかわいそうな面はある。
新スタジアムができてもっと広島市民になじんでくるといいんだけど…。
こちらが新スタジアム建設予定地。まだ全貌は見えないが、建設は着々と進んでいるようだ。
広島駅前にも掲示がされている。楽しみだなあ。
【満足度】★★★★☆
昨今ではどんどん新しくなり、キレイで快適な観戦ができるスタジアムが増えてきた。
そんな中30年の歴史があるエディオンスタジアムは、どこか時が止まっているような、古き良きJリーグの趣を残しているように思えた。
観客も非常にサッカーに詳しく、自然も豊かで独特の雰囲気をまとった面白いスタジアムだと感じた。さすがオリジナル10のスタジアムはどこに行っても何らかの発見があり、面白い。
今後新スタジアムに移行して、スタジアムの雰囲気がどのように変容していくのか、とても興味深いところ。
是非ともまた広島を訪れたいものだ。
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