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人馬のスポーツ・馬術を学ぶ~競馬だけじゃない~【コラムその167】

人馬のスポーツといえば、やっぱり競馬でしょう。

日本人の99%が競馬を思い浮かべることと思います。

 

しかし競馬並み、いやもしくは競馬以上に歴史ある人馬のスポーツがあります。

それは馬術です。

 

そんな馬術、知名度は決して高くありません。

馬術とは一体どんな競技なのでしょうか?

1.馬術の歴史

馬を自在に操る馬術は、当初騎馬戦を行うための技術として発展してきました。

その中でハミや鞍といった馬具も発達しました。

 

最古の馬術に関する記述は紀元前1400年ごろヒッタイトで書かれたもので、戦闘用の馬を調教し飼育管理する方法に関するものでした。

人類の歴史は戦争の歴史でもあり、戦争に欠かせない馬を操る馬術もまた大変に歴史の長いものです。

 

また紀元前400年ごろには古代ギリシアで馬術書が書かれました。内容は馬が主人を信頼する召使になるよう育てる技術でした。

これは十分現代でも通用する内容であり、先見性の高さを感じます。

 

その後馬術は騎馬戦のための実践的な技術から、貴族のたしなみへと変化していきました。

16世紀ごろからイタリア、オーストリア、フランスで馬術書や馬術学校が作られ、それらは現在に至るまで継承されています。

 

そして18世紀、19世紀ごろに近代馬術が確立し、今に至っています。

すなわち馬術とは、伝統あるヨーロッパ貴族のたしなみなのです。

 

2.オリンピックの馬術競技

そんな馬術は、オリンピックでも第2回のパリ五輪から行われている伝統の競技です。

現在のオリンピックで行われているのは以下の3競技です。

 

・馬場馬術

馬場馬術は演技の正確さと美しさを競う競技です。

フィギュアスケートや体操に似ていますね。

 

馬場馬術の目的は国際馬術連盟の規定によれば、

「馬場馬術の目的は調和のとれた調教により馬を幸あるアスリートに育て上げることにある。その結果、馬は沈着で、関節の柔軟性や伸び伸びとした前進性、筋肉の柔軟性といった数々の上達を見せ、騎手の指示に注意深く敏捷に従い、自信に満ちた演技を見せるようになる。そこに人馬一体の妙技ができあがってゆく。」

とのこと。

すなわち人ではなく、あくまで馬を育てることに重きを置いている競技なのです。

 

・障害飛越競技

障害飛越競技はコース上に設置された障害を飛び越え完走するまでのミスの少なさ、速さを競う競技です。

陸上のハードル走に似た競技ですね。

 

基本的には減点法を取っており、バーを落下させたら4点、馬が嫌がったら4点、規定時間を超えたら4秒ごとに1点減点などのルールがあります。

つまり0点が最高点で、減点数が等しかった場合は決勝戦を行ったりタイムの早い方を勝ちとしたりします。

 

コースは競技直前に発表され、下見を行うことはできますがその時間はわずかです。

更に障害もあえてカラフルで装飾も施されており、馬がびっくりしやすいようになっています。

そのため、人馬の絆の強さが試される競技です。

 

また速さを競う競技であることから競走馬から転向した例も多く、菊花賞優勝馬のデルタブルースは引退後馬術で活躍しました。

 

・総合馬術

総合馬術はその名の通り総合力が試される競技で、障害馬術と馬場馬術にクロスカントリーを加えた3競技によって行われます。

 

先ほどの規定によれば総合馬術の意義

「総合馬術競技は馬術の要素をほぼすべて盛り込んだ複合競技であり、多岐にわたる馬術競技での経験と自馬の能力に対する的確な認識を選手に求め、馬には正しい情報に基づく理にかなった調教で培われた一定の総合能力を求めるものである。」

だそうです。

馬にも人にも総合的な能力が求められる、非常にタフな競技です。

 

総合馬術特有の競技がクロスカントリーであり、人馬は起伏の激しいコースに設置された障害に挑みます。

障害の内容も「竹柵」「生垣」「池」「水濠」「乾壕」とバラエティに富んでおり、世界レベルでは距離6㎞以上、障害数40以上と非常に厳しい設定となります。

 

これに加えて馬場馬術と障害馬術を3日間でこなさないといけないわけですから、人馬ともに極めて高い能力が求められます。

以上より「馬術のトライアスロン」とも形容されることがあります。

 

そしてオリンピックの馬術競技における最大の特徴が、「男女の区別がない」ということです。

これは体力の差が競技に影響しないためであり、ある意味究極のジェンダーレススポーツといえるでしょう。

www.youtube.com

 

3.世界の馬術

世界各国、馬がいるところには馬術があります。

というわけで世界の馬術を見ていきましょう。

 

・日本の馬術

日本には4世紀ごろ中国から騎馬の風習が伝わり、鎌倉時代ごろには武芸の一つとして重要視されていました。

馬の上で立ち上がる必要があるため馬具も独特なものを使用していましたが、蹄鉄や去勢の技術がないなど西洋に比べると未熟だったようです。

 

現在でも行われている日本の馬術といえば流鏑馬(やぶさめ)です。

馬に乗りながら弓で的を射る、大変カッコいい馬術です。

 

小笠原流などの流派にのっとった伝統的な流鏑馬から神事としての流鏑馬、はたまたスポーツ流鏑馬まで、今もなお様々な形で受け継がれています。

 

・ブリティッシュ馬術

ブリティッシュ馬術はその名の通り、イギリスの上流階級で行われてきた馬術です。

主に運動の正確さ、美しさを重視する馬術で、まさに貴族のたしなみといえます。

 

運動だけでなく身なりも正装が定められていて、燕尾服やシルクハットといったいかにも貴族な服装を着用します。

オリンピックの馬術競技もそのほとんどがブリティッシュ馬術に由来するものです。

 

・ウエスタン馬術

ウエスタン馬術はいわゆるカウボーイに由来する馬術です。

カウボーイハットにジーンズと、ブリティッシュ馬術に比べかなりラフな格好なのが特徴です。

 

カウボーイの仕事から生まれただけにかなり実用的な馬術で、鞍は長時間乗っていても疲れないように工夫され、手綱は馬が首を動かしやすいよう緩くするなどの特徴があります。

 

3つともそれぞれてんでバラバラな馬術ですが、すべてに共通する特徴は「とてもカッコいい」ということですね。

 

参考文献

farmhist.com

4.まとめ

以上、馬術のご紹介でした。

競馬に比べると日本では非常に地味な馬術ですが、オリンピックでは今なお脈々と受け継がれる競技でありますし、映画などでも頻繁に使われる大変カッコいい技術です。

 

もし競馬場などで馬術を見かける機会があれば、ぜひそのたたずまい、所作の美しさにほれぼれしてみてくださいね。

 

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