スタ辞苑〜全国スタジアム観戦記〜

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スポーツ応援が繋ぐ絆~時には国境を越えて~【コラムその57】

日本のスポーツにおいては、応援がつきものです。

プロ野球やJリーグをはじめとするプロスポーツ、学生スポーツ、社会人スポーツなどなど、ありとあらゆるスポーツで熱い応援がなされています。

 

スポーツの応援といえば基本的には味方を鼓舞し、試合に勝利することを目的としています。

しかし、時折応援はあらゆる垣根を超え、敵味方の関係すら超えていく力を持っています。

今回は日本のスポーツにおける応援による絆を紹介します。

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1.復興への想いがつなぐ絆~ベガルタ仙台とヴィッセル神戸、川崎フロンターレ~

神戸に本拠地を構えるヴィッセル神戸は、1995年1月1日に誕生しました。

そのわずか16日後の1月17日、練習初日となる予定だった日、阪神・淡路大震災が発生します。

犠牲者6434人を数える未曽有の大災害によって、ヴィッセル神戸はしばらく活動ができず、初練習は2月6日まで延期、しかも岡山での開催となりました。

 

そんな神戸の惨禍、そして復興までをともに歩いてきたヴィッセル神戸は、「神戸賛歌」という応援歌に想いを込めて今も歌い継いでいます。

 俺達のこの街に お前が生まれたあの日
 どんなことがあっても 忘れはしない
 共に傷つき 共に立ち上がり
 これからもずっと 歩んでゆこう
 美しき港町 俺達は守りたい
 命ある限り 神戸を愛したい

 

そして時は過ぎ2011年3月11日。今度は東北を中心とした東日本大震災が発生。

日本中が大混乱となる中、Jリーグは延期。仙台を本拠地とするベガルタ仙台はその渦中にいました。

ホームのユアテックスタジアムは大きな損害を受け、避難所生活を強いられる選手もいるなどベガルタ仙台も大きな被害を受けました。

 

そんなヴィッセル神戸とベガルタ仙台が対戦した2011年6月11日。ヴィッセル神戸はベガルタ仙台を迎え入れるための特別なムービーを流しました。

ムービーの後は、「あの日」からの復興を歩んできたヴィッセル神戸サポーターによる神戸賛歌

恒例行事ではありますが、ヴィッセル神戸サポーターの歌声はいつもよりも心なしか力強く聞こえました。


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ピッチ上では敵であっても、一歩離れれば神戸と仙台はともに復興を目指す仲間なのです。

 

 

そして仙台の仲間は一人ではありませんでした。Jリーグ再開となった2011年4月23日、ベガルタ仙台は川崎フロンターレと対戦。

試合は2-1でベガルタ仙台が逆転勝ちとなりましたが、試合後川崎サポーターが歌ったのはベガルタ仙台のチャント「twisted」でした。

 

ベガルタ仙台 ゴー! 行くぞ仙台 俺達と共に レディゴー!

 


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同じチャントがスタジアムの360度から聞こえてくるという異様な光景。しかしそのメッセージは、ベガルタ仙台のサポーターにも痛いほど届いたことでしょう。

見るものを熱くさせるとはこういうことを言うんだな、と思わされます。

 

2.故郷愛がつなぐ絆~千葉ロッテマリーンズとジェフユナイテッド千葉~

千葉ロッテマリーンズは1992年より千葉に本拠地を置くプロ野球チーム。

そしてジェフユナイテッド千葉は1991年に設立された千葉県市原市を本拠地とする(のちに千葉市にも拡大)プロサッカークラブです。

そんなほぼ同時期同じ場所を本拠地とするこの2チームは盛んに交流を行ってきました。

 

そして2013年、ついに両チームは応援を交換する運びとなりました。ジェフ千葉は「Pride」を千葉ロッテへ。


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そして千葉ロッテは「チャンピオンフラッグをつかもうぜ」をジェフ千葉へ。


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野球とサッカーで同じ応援歌が使われているところを見ると、なんだかほっこりします。これらの応援歌は今もなお現役で使われていて、絆が続いていることがうかがえます。

たとえ競技は違っても千葉への愛はみんな同じなのです。

 

3.野球愛がつなぐ絆~日本と台湾~

一方、千葉ロッテマリーンズは台湾のラミゴモンキーズ(現楽天モンキーズ)との交流も活発です。

 

特にチャンステーマは台湾でも広く浸透し、とうとう国際試合でも使われるようになりました。


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台湾の応援なのにロッテのチャンテが流れているところを見るとなんだか胸が熱くなります

 

一方のロッテも、台湾で打率4割を記録しのちに日本ハムに入団することになるワンボーロンの応援歌をもらっています。


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現在も両チームの交流は続いていて、たびたび交流試合が組まれています。スポーツがつなぐ絆は、このように国境を超えることがあるのです。

 

4.応援は国境を超えて~ベガルタ仙台「twisted」~

最後に、先ほども紹介したベガルタ仙台の「twisted」を今一度ご紹介しましょう。

 

2008年にアップされた以下の動画。ベガルタ仙台サポーターがtwistedを歌っています。


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この動画が注目されることになったのは、2011年3月。やはり震災がきっかけでした。

このチャントはアメリカのヘビメタバンド、Twisted SisterのWe’re Not Gonna Take Itという曲がもとになっています。

 

そのTwisted Sisterのサイトにて、なんとコメント付きでこの動画が紹介されたのです。

コメントの内容は、日本の仙台でヘビメタの曲がチャントとして使われていること、仙台が被災地となったこと、そして仙台の人を元気づけるために世界中でこの歌を使ってほしいということ。

 

これに呼応してか、関係ないのかはよくわかりませんが、このチャントは一気に世界中に広まっていったのです。

そして下の動画の通り…


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ヨーロッパ、アジアの各国で、今なおTwistedが使われ続けているのです。

応援が仙台と世界をつなぐ架け橋になったのでした。

 

5.まとめ

以上、スポーツ応援がつなぐ絆をご紹介しました。

応援というのは基本的には相手に勝利するために使われるものですが、時にはを超え、競技を超え、そして国境を越えていくのですね。

 

今後も、こういった事例がいくつもできていくといいなあと思います。試合に勝つだけがスポーツのすべてではありませんから。

 

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