注:本記事は新型コロナウイルス感染拡大後の情報を元にしています
【概要】
御崎公園球技場(ノエビアスタジアム神戸)は、2001年開場、兵庫県神戸市にあるヴィッセル神戸のホームスタジアム。
昔話をすると(本当に大昔の話)、この地にはかつてカネボウの工場があったが、第二次大戦の空襲で焼失。
その跡地には神戸競輪場ができた。神戸という場所柄、暴力団が警備や飲食を取り仕切っており、抗争事件も起きたそうな(昔話ですよ!)。
そういった影響で評判も悪く1960年をもって競輪場は廃止、その跡地にできたのが極めて健全な神戸市立中央球技場である。
この球技場は当時日本で初めての夜間照明を備えた球技場で、13000人を収容できる当時としては大規模なスタジアムだったようだ。
大きな転機は2002FIFAワールドカップに訪れる(日本のサッカースタジアムはだいぶワールドカップに影響されている)。
この時ワールドカップ開催に合わせて42000人を収容できる大規模スタジアムに改築、そして名前も御崎公園球技場(神戸ウイングスタジアム)と改められた。神戸では決勝トーナメントのブラジルvsベルギーを含めた3試合が行われた。
が、このままだと大きすぎて使いこなせないので、大会終了後は仮設席を撤去し34000人規模に改められ、開閉式の屋根、パノラマレストラン、スポーツジムの各施設を整備した。
その後は2017年に芝を天然芝と人工芝を混ぜて作ったシスグラスに張り替えたり、照明をLEDにしたり、VIPラウンジを増設したりしながら、2019年にはラグビーワールドカップも開催され、今に至っている。
サッカーとラグビーの両方のワールドカップが開催されたのは関西ではここだけ。
そんな御崎公園球技場をホームとするヴィッセル神戸は1995年生まれ。
初練習を1月17日に予定していたが、この日の5時46分、クラブの運命が大きく変わることになる。
阪神淡路大震災である。
大きな地震など来ないと思われていた兵庫で起きたこの大地震は、死者6434人を数えるなど未曽有の大災害となった。
むろんヴィッセル神戸も練習場所の変更を余儀なくされ、2月になって初めて岡山県倉敷市で初練習を行ってからも練習場所を転々とする日々が続いた。
また震災の影響によりスポンサーだったダイエーが撤退するなど資金面でも大きな痛手を受けたが、1996年にはJFLで2位となりなんとかJリーグに昇格することができた。
それでも資金面では苦しい状況が続いたが、2004年、兵庫県出身の三木谷浩史が代表を務める株式会社クリムゾンフットボール(現在は楽天の子会社だが当時は三木谷氏が全額出資)が営業権を譲り受けることになる。
余談であるが、この年の暮れに楽天はプロ野球チーム「東北楽天ゴールデンイーグルス」を創設することになるが、そちらも神戸を本拠地にする計画があったらしい。
本拠地となったかもしれない同じ神戸市内にあるほっともっとフィールドはこちら。
その後はJ2に2度の降格を経験しながらも這い上がるなど粘りを見せていたヴィッセル神戸だが、2018年にある大事件が起きる。
スペイン代表、アンドレス・イニエスタの加入である。
イニエスタはFCバルセロナの育成アカデミー出身で、長年常勝軍団バルセロナの中心選手として活躍し続け、実に35ものタイトル獲得に貢献したまごうことなきレジェンド選手である。
またスペイン代表としても2010年のワールドカップに出場し、オランダとの決勝でゴールを挙げスペインの初優勝にも大きく貢献した。
そんな世界のトッププレイヤーがまさかのヴィッセル神戸に加入するというニュースは日本中、いや世界中でも大きく取り上げられ、各地のスタジアムで試合をする度にチケットが売り切れるなどJリーグ全体に大きな影響をもたらした。
またヴィッセル神戸も2019年にはクラブ初タイトルとなる天皇杯を獲得するなど、大きな成長を見せている。
本人もヴィッセル神戸でのプレー、そして神戸での生活を楽しんでいる様子で、おそらく引退の地として神戸を選ぶことになるようである。
長くなったが、震災と共に産声を上げ、傷つきながらも成長してきたヴィッセル神戸は、今やイニエスタの加入により日本トップクラブの仲間入りを果たしたのだ。
そういった神戸の歴史は、今でも神戸賛歌としてサポーターによって歌い継がれている。
20周年を記念してノエビアスタジアムのメモリアルムービーも公開されました。
ヴィッセル神戸優勝記念の記事を作りました!
【アクセス】
最寄まで★★★★★
最寄は神戸市営地下鉄海岸線の御崎公園駅。
神戸最大の駅三宮からは10分ほどで来ることができる。海岸線の三宮駅自体が他の路線の駅から離れているのがネックではあるが。
またJR、地下鉄の和田岬駅も徒歩圏内だが、行きはともかく帰りは非常に混むので和田岬駅は非推奨ルートであり、わざわざ兵庫駅までのシャトルバスが運行されている。
というのも、和田岬駅に通じている和田岬線は基本的に通勤通学需要を満たすための路線であり、こういった大規模な輸送を想定していないのである。
ただ和田岬駅には改札がなかったり(兵庫駅ですべての清算を済ます)、結構特色があって面白い路線なので行きは乗ってみるのもよいだろう。
最寄から★★★★★
御崎公園駅からは大通り沿いにまっすぐ行くと5分ほどで着く。
利便性ではかなり優れているスタジアムだ。
【観戦環境】★★★★★
関西を代表する大規模なスタジアムだが、球技専用スタジアムであり見やすさもトップクラス。
屋根もスタンドを覆うには十分な大きさで、日差しや雨も気にせずに試合を観戦することができる。
メインスタンド側。二層式になっており、傾斜も十分にありそうだ。
VIP席などいろいろな席種が用意されている。
バックスタンド(ビッグスタンドとも呼ばれている)。その名の通りとにかくシンプルに座席がずらっと並んでいてビッグなスタンド。
最上段から見たらどんな風に見えるのかは気になる。でも日産スタジアムの一番後ろの座席よりは近いだろう。
日本最大のスタジアム日産スタジアムはこちら。
アウェイ側のスタンド。この日はアウェイサポーターは入場できず、コレオが貼られていた。
ヴィッセル神戸側スタンド。よりピッチに近い部分にも仮設のようなスタンドが設けられていて、アウェイサポーターよりも選手の近くで応援できるようになっている。
ホームアドバンテージの一つ。
屋根は開閉式になっており、雨が降ったときは屋根を閉めてピッチが濡れないようにできるようだ。
非常にお金がかかっているスタジアムである。
ビジョンは対角線上に2枚同じ大きさのものが設置されており、どこからでも見やすくなっている。
なおこの日はイニエスタが契約延長を発表した次の試合であり、改めてイニエスタがクローズアップされることとなった。
入り口のコンコース。新しくてキレイ。
メインスタンドのコンコース。地元少年クラブのポスターみたいなのがずらっと並んでいる。
【雰囲気】★★★★☆
応援はサポーターの叩く太鼓とスピーカーから流れるチャントの混合方式。ヴィッセル神戸の応援はリズムがよく乗りやすいが、一部複雑なものもある。
この試合では試合終了間際に同点に追いつき、スタジアムのボルテージも最高潮となった。
スタジアムは御崎公園内にあるが、横にこの広場がある程度で基本的にはスタジアムしかない。
周りは住宅街なので帰りは盛り上がりすぎないように気をつけよう。
【グルメ】★★★★☆
グルメはスタジアム外の屋台とスタジアムに常設のお店の主に2種類。
こちらはスタジアム外にあったタンドリーチキンカレー。チキンとカレーのバランスがよく、大変美味しい一品。
香ばしいカレーのにおいが食欲をそそる。
こちらはスタジアム内で売っていた牛すじ焼きそば。神戸では牛すじとコンニャクを甘辛く煮込んだぼっかけが名物であるが、おそらくそれを意識したものだろう。
こちらも大変美味しい一品。
グルメ自体は満点クラスに素晴らしいのだが、楽天生命パークと同じくネックになるのがスタジアム内が完全キャッシュレスであること。
ただキャッシュレス自体は大きな問題ではない。現金をチャリチャリする方が時間がかかるので時間の短縮にもなる。
最大の問題は、以前の楽天生命パークと同じくEdyや楽天Payなど楽天系の支払い方法しか使えないという点だ。クレジットカードも使えるが…。
完全キャッシュレスをうたうなら交通系ICカードやPayPay、d払いなども使えるようにしないと不公平である。
ちなみに、楽天生命パークでは交通系ICカードは使えるようになったようだ。ノエビアスタジアムも開放しないと…。
【街との一体感】★★★★★
御崎公園駅では階段を上るたびにどでかい看板がお出迎えしてくれ、否が応でもテンションが上がる。
地下鉄内でもキャッシュレスを宣伝している。だったらICOCAも使えるようにして…。
神戸の繁華街ハーバーランド近くにはヴィッセル神戸のグッズショップもあり、存在感を放っている。
神戸の中心地三宮の大通りの中央にはヴィッセル神戸のフラッグがずらっとたなびいている。
そしてスタジアム近くのローソンにはヴィッセル神戸仕様のローソンがあり、
マンホールもヴィッセル神戸仕様。
そして三宮駅近くのスーパーにはヴィッセル神戸コーナーが設けられている。
さらに神戸空港にはヴィッセル神戸のロゴをつけた牽引車が走っている。
色んな所を散歩してみて、神戸の街全体に浸透してきている印象を持った。
個人的には、イニエスタのでっかい顔が三宮にあったりしたらもっと面白いかなとは思うが、それでなくとも十分な浸透具合だろう。
神戸空港観光なども含めた神戸・明石観光記はこちら。
【満足度】★★★★★
試合の見やすさや神戸という街への浸透具合など、間違いなく関西を代表するスタジアムの一つと言っていいだろう。
震災に打ちひしがれたあの日々からはや26年、震災の日に生まれたヴィッセル神戸はスペインの至宝アンドレス・イニエスタが加入し、天皇杯を獲得するクラブになるまで成長した。
これからもヴィッセル神戸はあの日の想いを胸に神戸で戦い続けるだろう。
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