プロスポーツの大きな指標の一つ、それが観客動員数です。
プロたるもの、お客を呼んでナンボというのは避けて通れない宿命です。
一方、観客動員数の評価の時によく使われるのが「平均値」です。
その算出方法はあえてここで説明はしませんが、この平均値には実は大きな落とし穴があるのです。
その例えとして、「全国中学校校長の平均売春人数」というのがあります。
イメージで言えばもちろん0人のはず…ですが、実はこれは1.2人なのです。
え、中学校の校長ってみんな売春してるの…?
…というわけではなく、これは一人のレジェンド校長が平均値を押し上げまくっているにすぎないのです。
このように平均値は数値のある一面を表現しているにすぎず、平均だけを見ていると必ず見落とす部分があるのです。
今回は平均値で語られがちなJリーグの観客動員数を、あえて平均値を使わずに考えてみたいと思います。
なお、今回の対象は以下の通りとします。
1.2023シーズンのJ1リーグに参入していた20クラブ
2.リーグ戦のホーム17試合
本当は標準偏差などより多様な値を使えばいろいろな面が見えてくるのですが、簡単のため今回はヒストグラムと呼ばれるグラフを眺めてみたいと思います。
なおグラフ横軸は観客動員数、縦軸は試合数となっております。(細かいところですが、横軸の数字は〇〇人以下という意味を指します)
- 北海道コンサドーレ札幌
- 鹿島アントラーズ
- 浦和レッズ
- 柏レイソル
- FC東京
- 川崎フロンターレ
- 横浜F・マリノス
- 横浜FC
- 湘南ベルマーレ
- アルビレックス新潟
- 名古屋グランパス
- 京都サンガFC
- ガンバ大阪
- セレッソ大阪
- ヴィッセル神戸
- サンフレッチェ広島
- アビスパ福岡
- サガン鳥栖
- まとめ
北海道コンサドーレ札幌
北海道コンサドーレ札幌において特徴的なのは、14000人の部分が突き抜けて多いところですね。
つまり、平時の基本的な動員力はこのあたりだと考えられます。札幌ドームのキャパシティを考えると、もっと上を目指していきたいところです。
1試合だけ少ないのは厚別で行ったものです。いくら聖地と言えど、悪条件も多いスタジアムなので致し方なしか。
動員だけを考えれば札幌ドームを使わない理由はないでしょう。
また最終節の浦和レッズ戦では3万人を超えるお客さんを集めました。
本気を出せばこれだけ集められることの証明ですが、これが当たり前になってくるといいですね。
鹿島アントラーズ
鹿島アントラーズは安定して2万人前後を集客できる力を持っています。
東京駅からバスで2時間以上かかる立地の悪さを考えると、これは驚異的と言っていいでしょう。
さすがサッカーとグルメで集客できるチームは強いです。
そして浦和戦や川崎戦、横浜FM戦では3万近く集客したほか、国立競技場で行った試合では56000人を集めました。
なんだかんだ言われる国立競技場ですが、集客に限って言えば劇薬と言っていいくらいの効果が見られます。
浦和レッズ
浦和レッズと言えばやはり圧倒的な動員力が魅力のチーム。
グラフを振り切れるほどの4万人以上の集客を見せた試合が4試合あり、これが動員数を引き上げていることは間違いありません。
ただ一方、気になるのは2万人前後の試合もそこそこ多いところ。
もちろんこれでもJ1上位なのですが、毎試合圧倒的な動員力でスタジアムを満員に、という風にはなってきていないのが現状です。
キャパシティ的に浦和駒場でやっている2試合が2万人に届かないのはしょうがないとしても、埼玉スタジアムでも2万人に届かない試合があります。
いくら平日と言っても、Jリーグの中ではかなり恵まれたアクセスがありながらこの人数はやはり寂しいところがあります。
いつ平均入場者数で年間1位から陥落するかというのが最近のトピックとなっている浦和レッズですが、なんといっても集める試合は集めるのでその貯金でまだ1位は譲らないといったところです。
ただこのいびつなグラフを見ていると、この状態でいつまで持たせられるかは悩みのタネでしょう。
柏レイソル
柏レイソルはなんときれいなグラフ…。全部ほとんど同じです。
スタジアムのキャパシティー的にこれ以上の伸びしろはほぼありませんが、それでもこの安定感はさすが。いぶし銀なクラブです。
実際柏に試合を見に行ってみると本当にスタジアム全体の距離感が近く、ハマる人はどっぷりハマる独特の雰囲気を醸し出しています。
小さなスタジアムでコアなファンがモリモリ養成されている、それが柏レイソルなのです。
FC東京
近年観客動員数で浦和レッズに次ぐ2位につけているFC東京。
国立競技場で56000人を集める爆発力、3万人前後を安定して集められる安定感を兼ね備えたバランスのいいクラブです。
その一方で2万人を切る試合が2試合、2万人台の試合もそこそこあるなど、集客できない試合もなくはありません。
このあたりの底上げができてくると、本当に動員数1位奪取も見えてくるのではないでしょうか。
浦和が一番苦しんでいる部分ですしね。
川崎フロンターレ
川崎フロンターレもまた、柏レイソルに似たきれいなグラフをしています。
フロンターレの場合は等々力のキャパシティ的にこれがほとんど限界なのも感じます。
強いて言えば2万を切る試合を無くしたいですかね。
今後の等々力は専用競技場に改修されるという夢のような構想もありますから、ここからどれだけ上に行けるかは楽しみなところです。
一方、サッカーの成績は一時期に比べると落ち着いてきたので、今のままの動員数を保持できるかも大事なポイントです。
横浜F・マリノス
横浜F・マリノスも、全体的な傾向としてはFC東京に似ているでしょうか。
2万人以上は安定して集客しつつ、いざというときはJリーグ史上最多の観客を集めるほどの爆発力も秘めています。
ただし、ニッパツ三ツ沢での開催になると平日開催の影響もあるでしょうがガクンと落ちる傾向にあるようです。
入場者数という観点で言えば、日本一のキャパシティを誇る日産スタジアムを使わない手はないと言えるでしょう。
そしてそれだけの伸びしろ、ポテンシャルも秘めているはずです。
マリノスはまだまだ上を目指せるクラブだと思います。
横浜FC
横浜FCはなんだか下へのぶれ方が大きい感じが…。
京都戦での3401人という観客数は結構衝撃的でしたね…。本当にJ1なのか…。
ただ一方、集まるときはほぼキャパシティいっぱいまで集まるときもありますし、全体的には1万人を超える試合も多く見られます。
下振れを何とか底上げできれば柏レイソルのようなグラフが作れるのではないでしょうか。
湘南ベルマーレ
湘南ベルマーレもまたなかなかに安定感があります。
スタジアムのキャパシティの都合で上限はせいぜい14000人くらいですが、その中でも1万人を超える試合が多め。
観戦の環境としては結構劣悪なスタジアムなのですが、それを考慮すると頑張っていると思います。
そして国立競技場では54000人ものお客さんを集めました。
国立競技場は集客においては完全にドーピングですね…。
アルビレックス新潟
かつてJリーグナンバーワンの観客動員を記録したこともあるアルビレックス新潟、その集客力はいまだ健在のようです。
条件が悪くても2万人くらいは集められますし、多い時には3万人を超えることもできます。
全盛期には平均で4万人集めていたことを考えれば少し落ち着いてはいますが、それでも地方でこの集客はやはり驚異的です。
新潟の秘めるプロスポーツのポテンシャルはとてつもないものがありそうです。
名古屋グランパス
名古屋グランパスは、割と上下に分散したグラフになっています。
長良川競技場で開催した2試合は1万人ですが、それを考慮してもだいぶブレが激しいですね。
名古屋から遠い豊田スタジアムという場所ゆえなのかわかりませんが、何かしらの理由がありそうです。
とはいえ日本三大都市の一つ名古屋、上振れの時は4万人を集めるえげつない動員力も持っています。
それでも今季最多は国立競技場で開催した57058人という記録。おかしい、おかしいよ…。
京都サンガFC
新スタジアムを引っ提げて意気揚々とJ1に参戦した京都サンガ、その集客はぼちぼちといったところでしょうか。
とりあえず安定して1万人くらいは集客でき、いい時にはほぼキャパシティいっぱいの2万人近い集客も出来ています。
一方で毎試合満員になっているかというとそうでもありません。
スタジアムとしてはJリーグでも最高峰の夢のスタジアムですが、それが集客に直結するわけではない、という難しい現状も垣間見えます。
ガンバ大阪
ガンバ大阪もまた、ブレの激しさが見られます。
少ない時には1万5000人程度にとどまる一方、多い時には3万人を超える試合も見られます。
全体的な傾向は2万人台が多いようですね。
ガンバ大阪もまた夢のスタジアムを作り上げたクラブの一つですが、それでも毎試合満員レベルにはならないようです。
このあたりはJリーグ全体でどうにか考えたい問題かもしれませんね…。
セレッソ大阪
セレッソ大阪はスタジアムのキャパシティが2万4000人と決して大きなスタジアムではありませんが、1万人を割る試合がなく安定感が光ります。
特に関西のクラブと対戦するときは2万人を超える傾向があり、その立地の良さが集客にも反映されているように感じます。
行きやすさはまず何よりも大事なポイントかもしれません…。
ヴィッセル神戸
Jリーグ初の優勝を飾ったヴィッセル神戸ですが、意外と1万人台の試合も散見されます。
もちろん優勝が差し迫った最後の3試合はほぼ満員ですが、それまでは割と例年通りだったかもしれません。
そしてやはり今季最多は国立競技場の53444人…。
味を占めたJリーグは2024年国立DAYなるものを設定し、国立競技場での試合を増やそうと目論んでいます。
当初はヴェルディがそういうのを目指してたんやけどな。
サンフレッチェ広島
エディオンスタジアム最終シーズンとなったサンフレッチェ広島、最終節では3万人近くのお客さんを集め見事な幕引きとなりました。
とはいえ1年を通してみるとその多くが1万人台に収まっており、その立地の悪さが足を遠のかせていた大きな要因になっていたことは間違いありません。
エディオンスタジアムも楽しいスタジアムでしたが、さすがに集客には条件が厳しかったようです。
新スタジアムになってどれだけ集客できるかは大きな楽しみとなります。
アビスパ福岡
今シーズン初のタイトルを獲得したアビスパ福岡、しかし集客は相変わらず難儀の一年でした…。
過半数の試合が1万人に満たず、シーズン序盤とはいえ6000人台も3試合ありました。
ただルヴァンカップ優勝直前の試合では13000人集めており、その後に行われたシーズン最終戦では18000人を超えました。
もちろん大都市福岡ゆえ、ポテンシャルはまだまだあるはずです。
サガン鳥栖
Jリーグ最小都市のサガン鳥栖、集客に関してはなかなか苦しいシーズンでした…。
半数の試合が1万人を超えず、6000人台に落ち込む試合もありました。
一方でシーズン後半には持ち直しも見せ、九州ダービーでは18000人近く、それ以外での試合でも13000人前後の集客がありました。
2024年はシーズン後半の勢いを維持していきたいところです。
まとめ
最後に、せっかくなのでJ1リーグ全体のヒストグラムも見ていきましょう。
ううん、よく分からん!
とりあえず1万人台と2万人台に山があり、そこに何らかの見えない壁があるような感じがします。
ビッグクラブを目指すには、平均2万人台の壁を乗り越えないといけないのかもしれません。
あ、平均を使ってしまったのでこの記事は終わりです。
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