注:本記事は新型コロナウイルス感染拡大後の情報を元にしています
【概要】

岡山県総合グラウンド陸上競技場(JFE晴れの国スタジアム)は、1957年開場、岡山県岡山市にあるファジアーノ岡山FCのホームスタジアム。
旧日本陸軍の練兵場跡地に作られた競技場で、国体が2回も行われた由緒正しき国体スタジアム。
そんな歴史あるスタジアムをホームにするファジアーノ岡山FCは、2004年に創設された市民クラブ。
元々は川崎製鉄水島製鉄所(現JFEスチール)のサッカー部OBによって作られたクラブを前身としているが、川崎製鉄水島製鉄所サッカー部自体はのちのヴィッセル神戸であり両者はいわば兄弟のような関係である。
またチーム名のファジアーノはイタリア語でキジを意味する。
由来は岡山県の県鳥がキジであること、そして桃太郎でキジが活躍したからである。
ファジアーノ岡山FCとなってからは岡山リーグ、中国リーグを駆け上がり、2007年にJFLへ昇格した。
2008年シーズンはJリーグ昇格ギリギリの4位となり、ほぼとんとん拍子で晴れてJ2リーグへの昇格が決まった。
しかし魔境J2リーグ、ここからが長かった…。
2009年は18チーム中18位の最下位。翌年も19チーム中17位に終わる。
以降は少しずつ順位が上がるも大体真ん中くらいをうろうろ。
そんな感じが10年以上続き、良くも悪くもすっかりJ2の住人となってしまった。
そんな中でも2016年にはクラブ史上最高の6位、J1参入プレーオフではシーズン3位の松本山雅FCを破り、決勝へと駒を進めた。
決勝のセレッソ大阪戦は0-1で敗れJ1昇格はならなかったが、確かな手ごたえを感じるシーズンとなった。
潮目が変わったのは2022年、木山監督が就任してから。
このシーズンクラブ最高順位の3位に食い込み、2度目のJ1参入プレーオフ出場を決めた。
ただ今度はシーズン6位のモンテディオ山形に0-3と前回と逆パターンで下剋上を食らい、またもJ1昇格とはならなかった。
プレーオフはどうもシーズン成績が全くあてにならないのである…。
しかし2024年、ついに運命の扉が開く。
シーズン成績こそ5位で自動昇格とはならなかったものの、準決勝では前回敗れたシーズン4位のモンテディオ山形に3-0とカウンターパンチを浴びせ決勝進出。
決勝にはシーズン6位のベガルタ仙台が上がってきたためホーム岡山で試合を開催できる幸運もあり、大声援を受けて見事2-0で勝利。
ファジアーノ岡山FCとなってから実に20年越しとなる、夢のJ1昇格をつかんだ。
J1での初のシーズンとなる2025年は、岡山でにわかにファジアーノ旋風が巻き起こっているという。
そんな岡山の風を肌で感じるため、一路山陽へと向かった。
【アクセス】
最寄まで★★★★★

最寄はJR岡山駅。スタジアムへは栄えている方と反対側の運動公園口(西口)から行く。
山陰、四国地方に接続する中国地方では広島に次ぐターミナル駅で、JRの支線数は東京駅に次ぐ日本2位。
もちろん新幹線のぞみも全列車が停車する。
こんな大きい駅から歩いて行けるJリーグスタジアムは日本でも有数だ。
場合によっては試合後新幹線に飛び乗って日帰りすることも可能だろう。
そんな岡山も含めて日帰りはせず3泊した香川・岡山の旅の記録はこちら。サンライズ瀬戸あり。
最寄から★★★☆☆

駅の出口からは徒歩約20分。
大通りを渡る必要がある手間はあるが、この道に沿って歩くだけなので特に難しくはない。
晴れの国ゆえ暑くて歩きたくない場合は、後楽園口(東口)の7番乗り場から出るバスに乗ってスポーツセンター前で下車すればよい。
帰りのバスは混んでいるかもしれないが…。要注意。

岡山名物の用水路を見ながら。
ここはガードレールがあるからだいぶマシか。

Bリーグのトライフープ岡山の本拠地であるジップアリーナ岡山が公園の入り口。
スタジアムまではもう少し。
【観戦環境】★★★★☆

陸上競技場ゆえピッチとの距離はあるが、全体は見やすい。
それにしても晴れの国だけあって夕方でも非常に暑いし、スタジアムも超満員で熱気ムンムン。
暑くて、熱い。それが晴れの国スタジアム。
水分は多すぎるほど用意して行こう…。

メインスタンドから見て左側。
こちらにビジョンがあり、建物が並ぶ市街地だ。

右側の後ろには森が広がっている。
ゴール裏には座席がなく芝生になっていて、サポーターはゴール裏ではなくバックスタンドの左右に分かれて応援する。

車椅子スペースもあったり。ちょっと狭いが。
屋根はスタンドの上半分を覆うくらいの大きさはある。
一方でメインスタンド以外は雨ざらし、直射日光が照りつける。
なかなか過酷な環境である。

ビジョンはとても鮮やかな発色。クラブのロゴも良く見える。

続いてコンコース。なかなかきれいに整備されている。

広くとられているのでスタジアムが満員でもそんなに混みあうことはない。
急角度で日差しは入ってくるが。

コンコースから見たスタジアム前。
すぐ奥に森とは言わないまでも木がたくさん植えられている。一休みするスペースがたくさんあるのはありがたい。

何に使われているのか分からないが、樽募金が行われている。
素直に考えれば新スタジアムに向けて使うと思うのだが、そう書いてないのはまだ計画もないからだろうか…?
そして樽募金の発祥と言えばなんといっても広島東洋カープ。
中国地方には樽募金の文化が根付いているようだ。

続いてスタジアムの外へ。
メインスタンドの入り口の奥にはフォトスポット、そして「FAGIANO OKAYAMA」の横断幕がある。
「100年続くクラブのDNAのために」はファジアーノ岡山のスローガンである。
外観はなんとなく国立競技場みがある。木材は使われていないけど。

ファジアーノ側の入り口というわけではないが、「ARE YOU READY?」の煽り弾幕がある。

こっちがホーム側の入り口か。
木の隣にあるのは聖火台だろうか?国体スタジアムには必ず聖火台がある。

こちらはバックスタンド。
木があって涼しげだが、あまりゆっくりできるスペースはない。

待機列はスタンド下の陸上トラックに設けられていて、ここが一番ゆっくりできる。

こちらは再入場口だが、そのすぐ横を車が走っている。
市街地にあるスタジアムゆえ、ギリギリのスペースで作られているのが良く分かる。

そしてビジョンの真裏は完全に道路に面している。
これでは拡張の余地が全くないだろう。

キッズパークにはマスコットであるファジ丸のふわふわが置いてある。
ただ他にも遊具の多い公園なので、あんまり子供は遊んでいない。

この日は試合前にプロレスイベントが行われた。このクソ暑い中大変だ…。
ちなみにファジ丸はプロレス大好きという設定があるらしい。

こちらは岡山市出身のマラソンランナー有森裕子さんの像。なんでこんなに遠いん…?
他にも同じく岡山に縁のあるアスリートの人見絹枝さん、木原美知子さんの像もある。

20世紀に残った記録を示すプレートもある。

こんな感じで地面に記録が残っている。
挑戦したい人は試合がない日にどうぞよろしく。ケガには気を付けて。

公園にはゆるりと休めるスペースも多く、とてもありがたい。
意外とスタジアム外に座れる場所が無く困ることも多いのだ。

さて、こちらはメインスタンド前の広場に逆戻り。
ここには津島遺跡の説明書きがある。スタジアムの目の前にある遺跡も多分日本でここくらいだろう。
津島遺跡は縄文時代から弥生時代、古墳時代にかけての遺跡で、弥生時代前期の集落と水田が隣接して発見された日本初の遺跡。
出土品はスタジアム内のミュージアムに展示されているが、試合日は入れないようだ。

スタジアムのこんな目の前に高床式倉庫があるなんて不思議な光景だ。
なんか土俵にも見える。

こちらは水田跡だが、スタジアムに近いのでちょうどいい休憩スペースとなっている。

湿地帯も残されている。再現されているという方が適切か?
弥生時代からあると思うとなかなかにロマンがある。今は岡山市民の憩いの地だ。
【雰囲気】★★★★☆

この日配られたハリセンには、ファジアーノ岡山とヴィッセル神戸を巡るストーリーが紹介されていた。
実況には「世界一ハートフルな兄弟喧嘩」と形容された。平和が一番だ。

満員のファジアーノ岡山サポーター。
狭いスタンドとはいえこれだけぎっしり埋まると迫力満点だ。

しかしその勢いは、ヴィッセル神戸サポーターの前では無力だった。
声の大きさが段違いで、ファジアーノ岡山側の声援をすべてかき消していった。紡いできた歴史と実績の差がこの違いを生むのか。

右側にある白い部分が両チームの境目なのだが、人数と反比例して右側から聞こえてくる応援の方が明らかに大きい。
まだまだファジアーノ岡山は兄貴の背中を追っていく立場なのだ。

試合前にはチャントの歌詞をビジョンに映してくれる。
初めてスタジアムを訪れた人にも親切な演出。

試合前にはビッグフラッグを掲出。
この真ん中にあるファジアーノの昔のエンブレム、素人がパワポで作ったみたいな手作り感があってなんともいえぬ味があるんだよなあ。
無論、左にある現在のエンブレムの方が段違いでカッコいい。
J1に上がる前に変えといてよかったねえ。

スタジアムは文字通り一つも空席がないほどの満席。
スポーツ不毛の地だった岡山でこの光景が見られるとは、万感の思いが込み上げる。
これがただバブルで終わるのか、それとも岡山の文化として成熟するかはこれからの頑張り次第だ。
この光景が数年続けば、自然と声援の大きさもヴィッセル神戸に負けないようになるだろう。

晴れの国に沈みゆく太陽と岡山の山並み、そしてスタジアムにともる照明。
エモいねえ…。


やがて暗くなり。


晴れの国の陽は沈む。

試合内容でも終始押されっぱなしのファジアーノ岡山だったが、試合終了間際気合でゴールを決める。
転んでもただは起きない、これぞ意地とプライドがぶつかる兄弟喧嘩だ。
そしてスタジアムを埋め尽くす観客はみなファジアーノ岡山を愛していることが、この歓声の大きさからもよくわかる。
今まさに岡山への愛が爆発中だ。そっぽ向かれないように頑張らなきゃね。

陽が落ちてもまだまだアツい岡山の夜。
ていうか、暑すぎてホテルに戻るまでしんどかったなあ…。駅までシャトルバスだしてほしいなあ…。
【グルメ】★★★★☆

スタジアム前にずらっと並ぶ屋台村「ファジフーズ」。
これだけ横一列に長い屋台は初めて見た。屋台の名前が番号なのが非常にわかりやすい。

まずはブランド牛である千屋牛の牛串から。
千屋牛の歴史は江戸時代にまでさかのぼり日本最古の和牛とも言われ、小規模生産のため出荷数が少ない貴重なお肉である。
そんな千屋牛は肉質がとにかくきめ細やかで柔らかく、かなりあっさりとした味わい。
とても上品でおしとやかなお肉である。

続いては岡山の特産品である黄ニラを使った餃子。
青いニラに日光を当てないで育てると黄色くなるらしく、岡山が生産量の7割を占めるとか。
普通のニラと比べて匂いが抑えられ、甘みが増しているのが特徴。
高級食材でもある黄ニラを手軽に食べられるファジフーズはありがたい存在だ。

続いては津山ホルモンうどん。
B-1グランプリで2位になったこともある、岡山を代表するB級グルメだ。
麺はもっちもち、ホルモンはいつまでも噛んでいられるとてもおいしい一品。
ただ、ホルモンが3切くらいしか入ってなかったのがちょっと寂しい…。

そんなファジフーズは、ファジアーノ岡山のエンブレムが刻まれた袋に入れてくれる。
実はそれぞれのお店自体は別個で運営されているらしいが、「ファジフーズ」として統一のブランドを築き上げている点がとても特徴的だ。
客側としてはとても分かりやすいし、会計等のシステムも統一されていて非常にありがたい。
お店ごとにシステムが違ったりするとどうしてもトラブルのもとになるしね…。

そんなファジフーズとは離れたところにあるのが「ファジバー」。
その名の通りアルコールを含めた飲み物が購入できるお店だ。これもまた分かりやすい。

めちゃくちゃ種類があってとても迷ったのだが、今回はファジアーノ公認日本酒「純米酒酒一筋ファジアーノ岡山」を使ったカクテル、その名も「雉酒」を購入。
いやもう何から何までオシャレすぎるっしょ。こんなん呑む前から酔っちゃいますわ。
他にあったのは「ファジビール」「ファジレモンサワー」「ファジネーブル」「ファジレッド」「神風」「岡山マスカットハイボール」「清水白桃ハイボール」「瀬戸内ハイボール」「勝利のキューピッド」などなど…。
名前だけで気になるお酒ばかり。全部飲んでたら試合前にノックアウトだ。
これだけの種類のお酒が楽しめるスタジアムは日本屈指で間違いない。

そんなファジバーに置いてあるおつまみは、津山で有名なヨメナカセと干し肉のコンボ。
ヨメナカセは牛の大動脈にあたるが、前時代的な名前の由来は「美味しくて嫁に食べさせられない」「調理が大変で嫁が泣く」とかの説がある。
嫁に泣くほど大変な調理をさせた挙句おいしすぎるという理由で食べさせないんだとしたら、今であれば立派な離婚案件である。
そんな由来はともかく、確かにおいしすぎるのは間違いない。お酒にもよく合う。
干し肉はなんかイカみたいで面白い食感だった。

またメインスタンドの中にもちょっとした売店がある。

ここで売っているのは岡山のソウルフード、岡山木村屋のバナナクリームロール。
岡山で知らない人はいないと言われるほど有名なパン。バナナのクリームがたっぷりでとってもおいしい。


そんな岡山木村屋、スタジアムまでの道中にもいくつかお店があるのでそこで買うのもオススメ。
もちろん種類もお店の方が豊富だ。
全然関係ないが、翌日児島競艇に向かうバスに乗ったとき同乗していたおじさんが岡山木村屋の袋を持っていてちょっと感動した。
おじさんも食べる岡山木村屋です。
【街との一体感】★★★★★

岡山駅の改札に入ると早速ファジアーノ岡山コーナーがある。
何もないっちゃ何もない岡山だけに、ファジアーノ岡山の存在は岡山市民にとって大きなアイデンティティとなりうるだろう。

駅ビルにもフラッグが掲げられている。
セールの色がファジアーノカラーだが、これは偶然かはたまた狙ったのか。

中にもユニフォームが飾られている。
なんでヴィッセル神戸じゃなくてガンバ大阪なんだろ?

岡山駅の西口に出ると大きなエンブレムが目に入ってくる。
偶然ではあるがこの建物にはNHKの岡山放送局も入っていて、NHKの文字のおかげで説得力が爆増している。

岡山駅近くの商業施設にはファジアーノ岡山の名を冠したフットサル施設がある。
岡山市民の健康をファジアーノが支える。

岡山の中心とも言える岡山表町商店街には、ど真ん中にポスターと新スタジアムを訴えるメッセージが置いてあった。

このお店にはファジアーノ岡山のポスターが2枚も貼ってある。
贅沢な使い方だ。

街の掲示板にポスターが貼ってあるクラブは本物、と個人的には思っている。
それだけ街に浸透した存在ということだ。

大通りに面したこちらのスポーツショップの横には、でかでかとポップが貼りだされている。
通行車に向けたPRもばっちりだ。

スタジアムまでの途上にある奉還町商店街。
明治維新によって職を失った武士が、藩から与えられた奉還金を元手に商売を始めたのでこの名前になったんだとか。
その入り口にはいきなりファジアーノ岡山への応援タペストリーを掲出するなど気合十分。
ファジアーノ岡山は現代に生きる武士と言えよう。

こっちは試合結果。「負け」の文字が哀愁を誘う。

どうやら本日の推し選手の背番号をはっつけているらしい。
この日は49番のブローダーセン選手。手作り具合がたまらない。

神社はファジアーノ岡山を含めた岡山のスポーツチームの必勝祈願に活用されている。
スポーツが盛り上がれば盛り上がるほど奉還町の人通りも増えるから、死活問題でもある。

スタジアムへの道中には、ファジアーノ岡山を含めた各チームのマンホールが設置されている。
絶対に見逃すことはないくらいの膨大な数があり、行政も力を入れている様子がうかがえる。

ファジアーノ岡山仕様の自販機。
色合いがシックでとてもオシャレ。阪急マルーンみたい。

更に進むとファジスクエアと呼ばれるグッズショップがある。
が、肝心の試合日はお休み。
たぶんスタッフがスタジアムに駆り出されているのかなと思うが、営業していたら絶対売れるだけになんだかもったいない。

ここにはのぼりがずらっと並ぶ。
子供たちに夢を…と言いつつ、チケットが取れな過ぎて子供が来れていない現実もある。

スタジアム前のお店はファジアーノ岡山がJ1に昇格したとき、ラーメン200杯無料にした店であることを大々的に宣伝している。
何なら店名よりよっぽど目立っている。
きっとのれんが擦り切れて文字が見えなくなるまで出し続けるだろう。
そう思えばラーメン200杯など安いもんだ。
【満足度】★★★★☆
実際に訪れてみた岡山は、確かにJ1へ初めて挑戦する高揚感に満たされていた。
そのワクワクが市民にも広がり、全試合でほぼ満員という結果にもつながっている。
しかし一方で、一時的なバブルに終わってしまうのではないかという懸念もある。
チームが強い時期、あるいは成り上がっている時期は盛り上がるものの、頭打ちを迎えると一気に観客が減るというのは各地で見られてきた現象でもある。
ということは、スタジアムが満員になっている今のうちにお客さんを離さない「何か」を身に付けることが必要になってくる。
それは勝ち続けるとか新スタジアムを作るとかそんな単純な話ではなく、運営を含めたクラブ全体がレベルアップしなければいけないということだ。
「100年続くクラブのDNAのために」。
このスローガンはまさに今、クラブに試練を与えている。
索引を作りました!
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