スタ辞苑〜全国スタジアム観戦記〜

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Tリーグのイマとミライ~卓球観戦文化定着のために~【コラムその47】

卓球、というとどんなイメージでしょうか?

 

温泉卓球という言葉があるように、老若男女問わず誰もが気軽にできるスポーツというイメージが強いのではないのでしょうか。卓球を人生で一度もやったことがないという人はほとんどいないでしょう。

非常に広く普及しているスポーツの一つと言えます。

 

その一方で、室内スポーツということもあり陰気な、暗いスポーツというイメージがあったことも事実です。まあ、〇中卓球部の影響も大きい気がしますが…。

 

しかし、テレビで「泣き虫愛ちゃん」が取り上げられるようになると風向きが少しずつ変わっていきます。

カメラの前で泣きじゃくっていた愛ちゃんは、いつしか日本のエース福原愛へと変貌を遂げ、日本に2つのオリンピックメダルをもたらしました。

そして男女問わず石川佳純、伊藤美誠、水谷隼など数々のスター選手が誕生しました。今では卓球王国である中国の牙城を切り崩す一番手として日本の名前が挙がるほどです。

 

そうして卓球の魅力は日本中に十分に広まってきていると思いますが、とはいえ卓球の試合を見る機会はなかなか限られています。

そんな中、「観るスポーツ」としての卓球を定着させるのに重要な役目を果たすのが、Tリーグです。今回はそんなTリーグを掘り下げていきます。

1.Tリーグの仕組み

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Tリーグの開幕は2018年。10月24日の開幕戦は両国国技館で5624人を集めて大々的に行われました。


【卓球 Tリーグ男子開幕戦】TT彩たまvs木下マイスター東京/全試合ダイジェスト【卓球専門メディアRallys】【卓球動画】

 

現在では男女それぞれ4チームずつが参加しています。

男子

T.T彩たま(埼玉県)

木下マイスター東京(東京都)

岡山リベッツ(岡山県)

琉球アスティーダ(沖縄県)

 

女子

木下アビエル神奈川(神奈川県)

トップおとめピンポンズ名古屋(愛知県)

日本生命レッドエルフ(大阪府)

日本ペイントマレッツ(大阪府)

 

なんか…ネーミングが独特ですよね…。彩たま…おとめピンポンズ…

 

上記のようにチーム数が少ないので、レギュラーシーズンは7回戦総当たりの計21試合を行います。

詳しいレギュレーションは省きますが、1試合はダブルス1試合、シングルス3試合から構成されます。

各試合の最終ゲームだけ6‐6からスタートしたり、2勝2敗の時のみ行われる延長戦はシングルスでたったの1ゲームマッチだったりと、見ていても飽きないよう緊張感を持たせる工夫がされています。

 

更に選手を世界ランキングなどの実績をもとにS、AAA、AA、Aの4つのランクに分け、Sランクの選手を必ず一人登録する、日本人選手を必ず一人は出場させるなど、戦力の均衡を図り、かつ見どころを作るような工夫も施されています。

 

リーグ戦の結果上位2チームがファイナルに進出し、勝った方が優勝となります。なお、開幕からの2シーズンは男子が木下マイスター東京、女子が日本生命レッドエルフがともに2連覇しました。

2019‐20はシーズン途中で中止となりましたが、2020‐21シーズンは琉球アスティーダ、日本生命レッドエルフがそれぞれ優勝しています。

 

更に2021年シーズンより、女子に九州アスティーダというチームが加わることが決まったようです。なぜ男子と女子でホームが違うのかはわかりませんが…。

 

2.各チームの紹介(2020‐21シーズン)

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さて、男女合わせて8チームしかありませんから、簡単に全チームの紹介をしましょう。全部紹介してもサクッと読める分量ですので。

 

T.T彩たま(埼玉県)

T.T彩たまという独特のネーミングですが、もともとは仮で「チーム埼玉」という名前がついていました。

しかし、フジテレビの番組ワイドナショーで柚木美音さんが「Table Tenissだし、TWICEのTT流行ってるし、TTさいたまでいいんじゃね?」と発言(内容はともかく、言い方は私が勝手に決めております)。

それを真に受けてしまい正式に取り入れ、さらに埼玉県が作成した愛称である「彩の国」を組み合わせてT.T彩たま、という名前になりました。TTさいたまでいいんだけどなぁ… 

 

所属選手で柱となるのが松平健太。世界選手権でも4つのメダルを獲得した実績があります。

日本代表からは引退したものの、Tリーグではまだまだ健在の実力者です。

 

木下マイスター東京(東京都)

Tリーグを2連覇した王者。その名の通り木下グループが運営しています。

目を見張るのは、やはり水谷隼張本智和のダブルエースでしょう。日本代表でもエースを張るこの二人がいて、弱いわけがありません。というかなんで同じチームにしちゃったのよ…

 

さらに世界卓球選手権でふたつの銀メダルを獲得している大島祐哉、世界ジュニア選手権で優勝経験のある韓国の張禹珍など5人のSランク選手がおり、選手層も厚いです。そりゃ勝ちますわ。

 

岡山リベッツ(岡山県)

リベットというのはジーンズとポケットをつないでいる部分で、卓球と岡山の架け橋になりたいということでつけられた名前です。

岡山はジーンズの名産地であり、「岡山デニム」は一つのブランドとして確立されており世界中から高い評価を受けています。にしても、リベットをわざわざ選ぶあたりがシブい…。

 

エースとなるのは丹羽孝希。リオオリンピックでの銀メダルに貢献した日本トップクラスの選手です。さらに世界卓球選手権で銀メダル獲得の実績もある森薗政崇も所属しています。

 

たまたま見つけたプロモーションビデオがなかなかいいのでご紹介しておきましょう。


岡山リベッツ2020-2021 プロモーションビデオ

 

琉球アスティーダ(沖縄県)

Tリーグ2020‐21シーズンを制した現王者

アスティーダのアスは文字通り明日、ティーダは沖縄の方言で太陽を表し、未来を照らす太陽になるという意味が込められています。

 

エースは水谷選手、丹羽選手と共にリオオリンピックの銀メダルを獲得した吉村真晴。さらに世界卓球選手権で男子ダブルス金メダル獲得経験もある台湾の荘智淵も所属しています。

 

木下アビエル神奈川(神奈川県)

木下アビエル神奈川は、その名の通り木下マイスター東京と同じく木下グループが運営するチーム。

エースはなんと言ってもオリンピックでふたつのメダルを獲得している石川佳純。さらに香港出身で世界卓球選手権で4つの銅メダルを持つドー・ホイカンや、張本智和の妹である張本美和がいます。

 

トップおとめピンポンズ名古屋(愛知県)

なかなかに衝撃的なチーム名が印象的。トップというのは親会社の名前で、おそらく頭文字をとるとTOPになるようにしたものと思われます。

 

海外の選手が多いのが特徴的で、2016リオオリンピックで日本チームを準決勝で破ったドイツチームの一人ハン・インや、世界ランキング最高13位のルーマニア出身エリザベタ・サマラ、ワールドカップでシングルス3位に輝いたこともある台湾のチェン・イーチンなど国際色が豊かです。

 

日本生命レッドエルフ(大阪府)

日本生命レッドエルフはTリーグ3連覇中、それ以前のものもあわせて42回ものタイトルを獲得している名門チーム。

チーム名のエルフには英語の「妖精」と、ドイツ語の「11」(卓球は11点先取であるため)の二つの意味が込められています。オシャレだなあ。

 

平野美宇、早田ひなの女子卓球黄金世代の二人がチームをけん引する存在です。その二人を含めてSランク選手が6人もおり、他を圧倒する選手層を誇っています。

 

日本ペイントマレッツ(大阪府)

日本生命レッドエルフと同じく大阪を本拠地とするチーム。大阪に本社を置く日本ペイントのチームです。

中心となるのは世界ランク最高13位、世界選手権ベスト8の実力者加藤美優。それを実績で上回るのが、オリンピックで3つのメダル、世界ランク最高3位の世界トップクラスのプレイヤー、シンガポールのフォン ティエンウェイ

 

以上のように、Tリーグには日本のトッププレイヤーが集まるばかりか、世界のトッププレイヤーも参加しています。これほどのレベルの卓球を見られるというのは幸せなことですよ。

 

3.Tリーグの課題

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日本卓球を盛り上げるべく立ち上がったTリーグですが、課題も山積しています。

 

・お客さんが入らない

まずぱっと目に付くのは、お客さんの少なさです。同じアリーナスポーツであるバスケットボールのBリーグが3000人以上のお客さんを集めるのに対し、Tリーグではまだ1000人そこそこ。

そもそもの知名度の低さや下記に述べるような問題など複雑な要因が絡んでいると思われます。

 

・中国のトップ選手がいない

日本のトップ選手をはじめ各国の上位選手が集まってきてはいますが、やはり見たいのは世界最大の卓球王国中国のトップ選手。

おそらく日本人が一番興味があるのは、「中国の選手はどんな卓球をするんだろう?」とか、「日本人選手が中国人選手に勝つところが見たい!」とか、そういったところだろうと思います。

 

一応スカウトはしているようですが、中国選手からしたら国内リーグのレベルが高くわざわざ日本のリーグにまで行く必要がないのでしょう。

 

また中国選手の情報をTリーグで見せたくないといった、水面下での情報戦も要因となっているようです。同じ理由で伊藤美誠選手も現時点で参加していません(東京オリンピックが終わったので参加するかもしれませんが)。

中国からも試合をしに行きたいと思えるような、何か大きな魅力が欲しいところです。

 

・チームとしての一体感にかける

卓球は基本的に個人競技なので、言ってしまえばチームになる必要ってないんですよね。

実際、試合当日だけ集まって後は解散しているようなチームもあるようです。

 

そうなると見ている方としても、「チームの応援」ではなく「個人の応援」がメインになってきてしまい、どうしても見に行く理由としては弱くなってしまいます。

目的の選手が欠場したり移籍したりしたら見に行く理由がなくなってしまいますから。

 

ですから、チームとしての一体感の醸成は今後必要になってくるだろうと思われます。

 

・地域への貢献まで手が回らない

Tリーグの大きな目的として、ホームタウンへの卓球の普及、そして選手の育成と言ったことが挙げられると思います。

 

しかし現状ではまだまだお金が足りず、チームを運営するのでいっぱいいっぱいという状況のようです。

そうなるとなかなか地域に対する活動というところまで手が回らない、というのは大きな問題でしょう。

 

ただ個人的に気になる部分があって、日本ペイントマレッツのサイトに載っている概要なのですが、

「当社グループが「日本ペイントマレッツ」を応援することで、グループ全体の“一体感”を醸成し、その結果として、「Global One Team」としての企業力の向上につなげます」

という記述があります。

 

この日本ペイントマレッツのサイトというのが日本ペイントの会社のホームページ内にあるというのもあるというのも大きいでしょう。

しかし個人的にはプロスポーツとしてやっていく以上、まずは会社の方ではなくホームタウンである大阪の方を向いた運営をしてほしいな、というのが正直なところです。

 

4.まとめ

以上Tリーグについてまとめてみました。

日本において卓球というスポーツ自体は広く普及していますし、オリンピックでのメダルも獲得して大きな注目も集めています。

 

しかしせっかく高まった卓球人気を定着させるにはTリーグの発展は不可欠です。

まだまだ課題は山積していますが、少しずつプロスポーツとしての魅力を高めていき、そして地域から愛されるようなチームがどんどん増えてほしいなと思います。

 

筆者がTリーグを観戦した感想はこちら。

sportskansen.hatenablog.jp

 

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