2016年華々しく開幕したBリーグは、現在もなおどんどん成長を続けています。
日本二大プロスポーツであるプロ野球、Jリーグに並び、そして超えるべく日々進化しています。
そんなBリーグは、開幕10周年となる2026年に向け、新たな改革案を打ち出しました。
これがまた、これまでの日本にはなかった全く新しいスタイルのプロスポーツリーグとなるようなのです。
そこで今回は、「2026 NEW B.LEAGUE」の内容をじっくり見てみることにしましょう。
1.これまでのBリーグ
まず、改めてこれまでのBリーグのシステムを見てみましょう。
Bリーグができた経緯については下の記事にまとめています。
Bリーグの開幕にJリーグを作った川淵三郎氏がかかわったこともあり、基本的にはJリーグと非常によく似ています。
・B1リーグ、B2リーグの2階層(別運営でプロアマ混合のB3リーグもあり)
現在ではB1リーグに24チーム、B2リーグに14チームが所属していて、その下にプロアマ混合のB3リーグがあります。
B3リーグは続々と新チームが加盟していて、長崎ヴェルカやアルティーリ千葉など1シーズンでB2へ昇格していくようなチームもあります。
チーム数が各リーグでバラバラなのは、コロナの影響で降格がなくなったシーズンがあるため。
現在まだ成長中のBリーグでは、なるべくB1リーグのチーム数を増やして規模を拡大したいという意向も見え隠れしています。
・競技成績による昇降格
前述の通り降格のないシーズンもありましたが、基本的に競技成績によって昇格・降格があります。
ブザービーターでの降格、下剋上での昇格、などこれまでにも数々のドラマがありました…。
昇降格があるおかげで競技に対するモチベーションも上がりますし、ギリギリの成績で戦うチームも最後まで手を抜けないなどリーグ全体に大きな影響を及ぼします。
・B1ライセンス、B2ライセンスを満たさないと昇格できない
BリーグにはJリーグと同様ライセンス制度があり、財務上問題はないか、アリーナが十分なキャパシティがあるか、などで審査されます。
まだ歴史の浅いBリーグでは、競技成績は十分なのにライセンスがないために昇格ができない、あるいは強制降格してしまうという事例が多数発生しています。
かなり厳しい制度ではありますが、過去には選手の強化にお金をつぎ込みまくって成績は上がったにもかかわらず、財務が赤字で一気に破綻の危機に陥る、なんてチームもありました。
健全な経営はチームやリーグを長続きさせるためにも必要なので、ライセンスで縛っているというわけです。
またアリーナのキャパシティの項目については、もちろんより多くのお客さんを収容できるためという目的が一番ですが、自治体に大きなアリーナを作ってもらう口実を作るという目的もあるように思います。
実際Bリーグの力だけで大きなアリーナを作るのは難しいですし、ライセンスの項目に入れることで自治体に作ってもらう理由を作ることができるのでは、とにらんでいます。
アリーナは音楽ライブなどでも活用できますし、実用性が高いので無駄にはならないはずです。
というわけで、ライセンス規定は大きく「リーグを長続きさせる」「リーグを拡大する」の二つの目的があるということになります。
とまあ、こんな感じで現状ではJリーグとかなり似通ったシステムになっています。
現状でも特に問題が無いように思えますが、それでもBリーグは改革を断行しようとしています。
2.2026年Bリーグ改革
2026年から始まるNEW Bリーグでは、大きく分けて二つの改革が行われます。それが以下の通り。
・昇降格制度の廃止
・B1~B3までの運営一本化
特に、昇降格廃止については全Bリーグファンが衝撃を受けたのではないでしょうか。
昇格がなくなったらB2以下のチームはどうなるの?どんなに成績が悪くても降格しないの?など様々な疑問がわいてくることと思います。
では具体的にどんな制度になるのか見てみましょう。
まず、正確に言うと昇格がなくなったわけではありません。「競技成績による昇格」がなくなる、ということです。
どういうことかというと、下記の基準を満たしたチームから上のリーグに参入できる仕組みになるということです。
・新B1ライセンス
・収容人員5000人以上の体育館を保有し、年間109日以上の日程を確保すること
・1試合平均入場者数4000人以上であること
・売上高基準12億円以上であること
・新B2ライセンス
・収容人員3000人以上の体育館を保有すること
・1試合平均入場者2400人以上であること
・売上高基準4億円以上であること
・新B3ライセンス
・収容人員3000人以上の体育館を保有すること
・売上高基準2億円以上であること
これをクリアできていれば、成績に関係なくB1、B2に所属することができます。B1~B3リーグの運営一本化はこれに伴うものと考えられます。
一方で、各チームはこの基準によって毎年審査され、これをクリアしないと降格もあり得るようです。
ただし、この基準は現在ではかなり厳しめに設定されていて、例えば売り上げ12億円を達成しているのは千葉や琉球など人気トップクラスの6チームのみ。
5000人以上のアリーナを確保できているチームもそれほど多くはありません(ただし多くのチームは2026年に向けて準備しています)。
コロナの影響も不透明なので多少緩和される可能性もありますが、今のままで行くと2026年以降のB1リーグは10チームにも満たないまま開幕することになります。
なぜ、Bリーグはこんな改革をするのでしょうか…?
3.なぜこんな改革をするのか?
なぜこんなことをするのか、それはBリーグを「世界2位のプロバスケリーグにするため」です(1位のNBAはさすがに覆しようがありません…)。
目標として「毎試合満員」「毎日Bリーグ開催」「真のアリーナエンタメ」を掲げ、
「国内外の有望な選手がプレーする高いレベルの環境」「世界基準の競技力を誇り、国際大会でも活躍するクラブの誕生」の実現を目指しています。
早い話が、今回の改革は「Bリーグの成長を加速させるため」に行うというわけです。ものすごく資本主義的です。
考えてみれば、プロスポーツにおいて競技の結果というのはチームの持つ特性の一つにすぎず、それよりも前にエンタメとしてまずお客さんを楽しませることができなければ始まりません。
今回の改革はそれをできないチームはどんなに強くても置いていきますよ、という宣言なのです。
残酷なようでもあり、しかし納得してしまう部分もあります。
更にB1リーグからB3リーグまでそれぞれの持つべきビジョンも発表されています。
・新B1リーグ
地域・日本を代表し、世界と伍する輝くリーグ
・新B2リーグ
地域に根差し、世界と戦う準備をするリーグ
・新B3リーグ
プロ水準のリーグ
以上のビジョンを見ると、明確に「日本バスケを世界基準まで押し上げる」ことを念頭に置いていることが分かります。
そのためにも、まずは利益を拡大して環境を整えていくことをチームに求めているわけですね。
競技結果によって昇格・降格を決めない大きなメリットとしては、「投資がしやすい」ことが挙げられます。
例えばJリーグにおいては、ギラヴァンツ北九州が素晴らしい新スタジアムを作ったのにもかかわらず、成績がふるわないためにJ3での戦いを余儀なくされている、という事例があります。
すなわち、せっかくいい施設を作っても成績が良くなければそれが十分に生かされないというリスクがあるわけです。
成績によってカテゴリーが変わらないことで、自治体やスポンサーも中長期的な目線で投資をすることができるのです。
ただし大きなデメリットとしては、「成績が良い地方のチームが上位カテゴリに上がれない」という危険性があります。
そもそも経済規模が大きくない地方では、どんなにバスケを頑張っても上に上がれないということが起こりえます。
チーム全体のモチベーションを保つのも大変ですし、この改革によってかえって地方チームの夢がなくなるリスクもあります。
地方のチームはこれから厳しい戦いを強いられることになりそうです。
4.まとめ
以上、Bリーグ改革の中身を見てみました。
内容としては非常に筋が通っていますし、私のような客側としては一気にエンタメとして成長していく可能性を秘めていてとてもワクワクしています。
一方で地方のチームにとっては厳しい時代が待ち受けているように思えてなりません。
そもそもBリーグは体育館さえあればどこでもできるので、地方にもチームが作りやすいという大きなメリットがあります。
そのメリットがつぶされてしまうとしたら大きなリスクになりますし、プロスポーツの大きな役割の一つである「地方活性化」が達成できないことになります。
改革自体はとても面白いものですが、ぜひとも地方のチームをうまく拾い上げる仕組みを作ってほしいなと思います。
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