このブログでは、これまでさも当たり前のようにプロ野球、Jリーグ、そしてBリーグを取り上げてきました。
しかし、よく考えてみるとそれぞれのリーグの仕組みの解説をしてきませんでした。
そりゃまあ、勝てば優勝なのですが、順位の決め方やリーグの仕組みなど、よくよく思い返してみると完璧に把握できている人は少ないのでしょうか。
というわけで今回は、復習の意味を込めてそれぞれのリーグの仕組みを改めて調べてみることにしました。
これを見れば、野球、サッカー、バスケにおいて何をもって「強い」としているのか、少し理解できるかもしれません。
1.日本プロ野球(NPB)
日本で一般的にプロ野球として知られているのは、日本野球機構(NPB)が統括しているセントラルリーグ、パシフィックリーグのことです。
セリーグ、パリーグ各6球団あり、リーグ内で各チームと25試合ずつの125試合、セパ交流戦が18試合の計143試合です。
各リーグの上位3チームがクライマックスシリーズに出場し、2位と3位は3戦2勝、勝ち上がったチームが1位と6戦4勝方式(1位チームに1勝のアドバンテージ)で、最後に各リーグの代表が7戦4勝方式の日本シリーズを行い日本一を決定します。
かつては交流戦が24試合あったので1シーズン144試合だったのですが、それが減った影響で現在は奇数となり、毎年各リーグの6チーム中3チームがホームゲームが1試合多くなっています。
若干不公平と言えば不公平ですが、ホームの勝率はそれほど高くないのでスルーされています。
ホームアドバンテージの効果について検証した記事はこちらです。
プロ野球においては、順位は勝率により決定しています。ただし、日本のプロ野球においては引き分けがあるため、これについては無視して計算します。
例えば2021年に日本一になった東京ヤクルトスワローズのシーズン勝率は、
73(勝ち数)÷(73(勝ち数)+52(負け数))=.584
で計算し、引き分けは計算に含みません。
勝率で順位を決定する場合、例えば1勝142分と142勝1敗のチームだと前者のチームの方が順位が上、という状況が生じる可能性があります。
さすがにこれは極端な例ですが、引き分けが多いチームほど1試合の比重が大きくなっていくわけですね。よく引き分けに持ち込んだ、などと表現されますが、その分1試合あたりの重みが大きくなるのでより引き締めていかなければいけません。
ただ、順位を勝率で表現するとぱっと見で分かりにくいですよね。
例えばAチームの勝率が.540、Bチームの勝率が.530だとして、じゃあこのふたチームの間にどのくらいの差があるのか?というのは直感的にわかりにくいわけです。
そこで導入されているのが「ゲーム差」という指標です。
これは片方のチームの1勝を0.5ゲーム、という数で表しているもので、例えばAチームとBチームのゲーム差が1.5ゲームであるとき、
「Aチームが2連敗、かつBチームが2連勝」「Aチームが4連敗」「Bチームが4連勝」
などといった状況が起きるとBチームが逆転し0.5ゲーム差で上の順位になる、というものです。
これなら直感的にわかりやすいので報道などでもよく使われているのですが、上記の通りゲーム差というのは別に順位とは関係ない指標です。
実際、引き分けが多かったり、雨天順延などで消化試合数に違いがあると、時々マイナスゲーム差という事例が発生します(2017年7月2日には楽天がソフトバンクに対して-0.5ゲーム差で首位に立ちました)。
そういう事例もあるので、一応ゲーム差だけでなく勝率も見ておいた方がいいでしょう。ちなみにゲーム差はメジャーリーグで導入されたものですが、メジャーでは引き分けがないので特に問題はありません。
ところで、勝率が同じ場合、セリーグとパリーグで順位の決め方が異なることをご存じでしょうか。
セリーグでは勝率以下の順位の決め方の優先順位は、
1.勝利数の多いチーム
2.当該チーム間の対戦で勝率が高いチーム
3.前年度順位の高いチーム
となっています。あくまで勝った方が偉いという考え方で、実際2001年にはセリーグだけ勝利数で順位を決めるということもありました。ベイスターズがカープより勝率が低かったのに勝利数で上回ったためAクラス入りするということも起きました。
一方のパリーグでは
1.当該チーム間の対戦で勝率が高いチーム
2.交流戦を除いたリーグ戦の勝率が高いチーム
3.前年度順位の高いチーム
となっています。
パリーグではあくまでリーグ内での勝利を重視しており、パリーグの存在価値を少しでも高めようという意識が何となく見て取れる気がします。2004年には消えかけたからね…。
普段この辺を意識することはありませんが、シーズン終盤戦ではこのあたりも念頭に入れた戦い方が必要でしょう。
ところで、一瞬これらも全部同じだったらどうするんだろう?と思ったんですけど、3の前年度順位の高いチームっていうのがあるおかげでそれは回避できるんですね。
すでに現時点で前年順位に差があるので、たとえ未来永劫同じ成績が続いたとしても前年順位が違い続けるので永遠に同じ順位が継続されることになります。
そんなことはあり得ないんですけど、よくできてるなあと思いました。
2.Jリーグ
Jリーグは正式名称を日本プロサッカーリーグといい、1部から3部で構成されています。
1部のJ1リーグは18クラブ、2部のJ2リーグは22クラブ、3部のJ3リーグは18クラブが所属しており、プロ野球に比べて5倍くらい多いです(独立リーグも含めたら野球ももうちょっと多いですけど)。
ホーム&アウェー方式で、それぞれ2試合ずつの総当たり方式のため、有利不利は基本的にありません(もちろんチームの調子や補強のタイミングによる影響はありますが)。
Jリーグの最大の特徴は昇降格制度でしょう。原則としてJ1、J2の下位2クラブがそれぞれ降格、J2、J3の上位2クラブが昇格します。
降格するとスポンサーが離れたり、入場者数が減少したり、移動が大変になったりとデメリットが大きいので、なるべくなら降格したくないのですね。昇格はその逆です。
プロ野球なら今年成績が悪くても「また来年に向けて若手の育成でもすればいいか~」など今後に向けた方針が取れますが、Jリーグでは降格してしまうのでそんな悠長なことは言っていられません。
そのためシーズン終盤に向けて下位のクラブは生き残りに必死になります。消化試合も少なくなり、リーグ全体に緊張感が生まれるのが昇降格制度の大きなメリットです。
実際、降格をめぐるドラマってめちゃくちゃ面白いんですよね…。
逆に言えば中長期的な視点で取り組めない、というのが大きなデメリットです。特に降格ラインに入ってくるクラブは、どうしても毎年その場しのぎをする羽目になり、いつまでたっても上位に食い込めない、ということが起きます。
そういうシーズンが続くと、「いっそのこと降格して基礎から作り直したらいいのでは?」というサポーターまで出てきます。
本末転倒ではありますが、大分トリニータのようにJ3に降格してからJ1に上り詰めるようなクラブもあるのでなんとも…。
さて、そんなJリーグの順位決定法ですが、基本的には勝ち点と呼ばれる指標を使っています。
プロスポーツとしては先にアメリカのプロ野球があり、それを見てイングランドで最初のプロサッカーリーグが生まれたのですが、野球では引き分けがないのに対してサッカーでは引き分けがあるので、順位をどのように決めるか苦心していました。
そこで導入されたのが勝ち点という仕組みでした。勝てば勝ち点2、引き分けで1、負けで0とすることで、引き分けにも意味を持たせることにしました。
1981年にはより面白い試合が多くなるよう勝利での勝ち点が3となり、今に至っています。
さて、Jリーグはプロ野球よりも試合数が少ないので、勝ち点が同じという状況はよくあることです。
その場合どのように順位をつけているかは、優先順位順に以下の通りです。
1.得失点差の大きいクラブ
2.総得点数の多いクラブ
3.当該クラブ間の成績(勝ち点、得失点、総得点)
4.反則ポイント
5.抽選
特に1の得失点差は最後の最後に効いてくることがあるので、例え勝っていても負けていても1点でも多く取る、ということがJリーグにおいては大事になってきます。
4の反則ポイントというのはあまり耳慣れない言葉ですが、裏でひっそりカウントされている数字です。
詳細は省きますが、基本的にイエローカードで1点、レッドカードで3点が課され、それらがなかった場合1試合につきー3点となります。そのためマイナスとなっているのが普通です。
ちなみに出場停止でも3点となるので、誰かがやらかしてしまうとモリモリ点数が増えていきます。ポイントが大きくなると順位だけでなく反則金にもつながるので、各クラブは選手の教育をちゃんとしましょう…。
これら細かくルールが決まっているので現状では抽選で順位を決めるということはありませんが、もし抽選で昇格、降格を決めるとなったらどうなるんでしょう…?
サポーターは気が気じゃないかもしれませんが、一回くらい見てみたいです…。
ところで、サッカー界にはJリーグとは別に大きく二つのカップ戦が設けられています。
一つはJリーグカップ(ルヴァンカップ)、もう一つは天皇杯で、3つを合わせて3冠とも呼ばれます。ただ価値としてはJリーグが最も高いと言われています。
ではこれら二つのカップ戦はなぜ行われているかというと、
1.若手の試合出場機会を確保する
2.一発勝負のトーナメントなのでリーグ戦では上位に入れないクラブでもタイトルの可能性がある
などといった意味合いがあります。
また天皇杯はアマチュアでも参戦できるので、アマチュアの実力試しの場や日本サッカー界全体の活性化といった目的もあります。
天皇杯について解説した記事はこちらです。
Jリーグが開幕してからこの3冠を達成しているのは、2000年の鹿島アントラーズ、2014年のガンバ大阪のみです。いかに3冠達成が難しいかお分かりになるでしょう。
3.Bリーグ
正式名称をジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグといい、Jリーグと同じく3部構成になっています。
B1は22チーム、B2は14チーム、B3は14チームの計50チームで、現在進行形でどんどんチーム数が増えています。
ただチーム数がどんどん変わってはいますが、基本的にはB1とB2は年間60試合で固定されています。
Jリーグと異なるのはプレーオフによってチャンピオンを決めるという点で、これによりいくらシーズン成績が良くても優勝できるとは限らないのが面白いところです。
プレーオフには地区成績の上位6チームととワイルドカードの上位2チーム計8チームが参加します。
実際コロナで中断となった2019-20シーズンを除き、シーズン成績1位のチームは今までにリーグ優勝を果たしたことはありません。ある意味ジンクスというか。
Jリーグと同じように、B1とB2は2チームずつ、B2とB3は1チームずつ昇降格するのですが、面白いのが昇格や降格もプレーオフで決定するということです。そのため、シーズン成績とは関係なしにプレーオフに照準を合わせてくるチームもあります。
特に降格プレーオフはシーズンを捨ててでも勝ちに行く価値があるので、上位チームだからといって油断していると一発入れられて降格する、という危険があります。ただ、近年はコロナの影響で降格が実質なくなっています。
さてBリーグでの順位の決め方ですが、Bリーグでは基本的に引き分けがないので、基本的に勝ち数の多いチームが上位と考えれば問題ありません。
ちなみにレギュレーションでは「勝率」で順位を決めることになっています(コロナの影響で試合を消化できないこともあり得るので)。そのため、野球と同様ゲーム差で各チームとの差を把握するのが一般的です。
さて、Bリーグも勝ち負けの数が同じということはよくあり得るシチュエーションです。その場合にどのように順位をつけているかは、以下の通りです。
1.当該チーム間での対戦における勝率
2.当該チーム間での対戦における得失点差
3.当該チーム間での対戦における得点数
4.リーグ全体での得失点差
5.リーグ全体での得点数
6.抽選
基本的には、当該チーム間での対戦成績によってきめられています。
Jリーグのように得失点差があまり重視されないので、とにかくライバルチームとの対戦でいい成績を残せるかがキモになってきます。
バスケットボールにおいては試合最終盤で点差がついていると試合を途中であきらめることがあるので、なるべく得失点を重視しないルールにしているのかもしれません。
ファンもその辺りは分かっているので、似たような成績のチームと対戦するときは星勘定を計算しながら試合を見ていることがあります(もちろん選手やコーチはなおさら)。
ライバルとの試合に勝利することは2勝分くらいの価値があるといっても過言ではありません。
またバスケットにおいても、サッカーと同じように天皇杯があります。ただ、1チーム当たりの選手数が多くないので、特に若手の試合出場の場となっているわけではありません。
そのためリーグ戦と並ぶ…とまではいいませんが、サッカーよりも天皇杯の重要度は大きいような気はします(あくまで私の感じ方です)。
ただ不思議なことに、歴史が浅いとはいえこれまでリーグと天皇杯の2冠を達成したチームはありません。
天皇杯もBリーグプレーオフも一発勝負的なところがあるので、どちらも勝ち上がっていくのは想像以上に難しいことなのかもしれません(シーズン成績1位と天皇杯ならいるので)。
ところで現在では昇降格制度などJリーグと似たところも多いBリーグですが、実は2026年に向けてより盛り上がるリーグにするための改革を行っています。
これについてはまた機会があれば改めて記事を書きたいと思っていますが、チームを中長期的に育てていくために昇降格制度を廃止するなど既存のフォーマットとは全く異なるリーグとなっていくようです。
元々Jリーグと同じ川渕キャプテンが作った今のフォーマットですが、そこから一歩進んだ仕組みとなる模様です。バスケットボールが令和のスポーツとなれるか、今後も注目ですね。
これまでのBリーグについて書いた記事はこちら。
4.まとめ
以上、プロ野球、Jリーグ、Bリーグの仕組みや順位の決め方についてでした。
ただ勝った負けただけでなく、順位の決め方を意識することで試合の見え方も違ってくるかもしれませんし、それぞれの競技やリーグでの考え方が見えてきて面白いものです。
とはいえ、いずれにせよ勝ったチームが優勝するようになっているので、まずは好きなチームを一生懸命応援しましょう(笑)
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