スタジアムやアリーナの名刺、それが名前です。
名前を聞けばどこの施設かが分かるし、施設を思い浮かべれば自然と名前も思い出します。
昨今では、そんなスタジアムやアリーナの名前自体が広告として活用されるようになりました。
今回はあまりに当たり前になった、スポーツ施設の命名権について今一度考えてみたいと思います。
1.命名権とは何か?
そもそも命名権とは、その名の通り命名する権利のことです。
人間生活において最も身近、かつ最も大事な命名権と言えば人の命名権です。
私たちは基本的に、自分の名前を自分で決めることができません。
それは人の命名権はその人自身ではなく、親もしくはそれに準ずる人に与えられているからです。
(自分自身に命名権はあるが、それを行使できないため親に代理で与えられているという考え方もあります)
もし名前を変えたいと思っても裁判所に行って非常に煩雑な手続きを踏まなくてはならず、容易に変えることはできません。
もちろんちょっとした気分で変えることもできませんし、名前を変えるべき社会的に通用する正当な理由が必要です。
それほど人の命名権というのは重い権利なのです。
2.公共施設と命名権
一方、一般社会において最も重要視される命名権とは、主にスポーツ施設に代表される公共施設の命名権です。
命名権が商売として成り立つようになったのは、1990年代後半のアメリカです。
メジャーリーグの球場に企業名をつけるようになり高い費用対効果が得られたことから、世界的にも広まっていきました。
そんな中日本で初めて命名権を導入したのは、東京の味の素スタジアムです。
現在はFC東京や東京ヴェルディのホームとして稼働している味の素スタジアムですが、あまりに定着しすぎて本来の名称である「東京スタジアム」が忘れられているほどです。
今やプロ野球やJリーグのホームスタジアムの多くに命名権が導入されていますし、そうでない小さな地方球場などにも地元企業の名前がついていたりします。
最近ではスポーツと関係ない公共施設にも企業名がつくようになり、例えば渋谷公会堂はLINE CUBE SHIBUYAになったり、あるいは電車の車内アナウンスでは駅名の後に「〇〇〇〇最寄り駅です」といったアナウンスが入ったりします。
挙句の果てに公共トイレにまで命名権が導入されるようになり、和光市駅前のトイレはトイレ管理業者の名前がついています。
企業名を背負っているわけだから業者も一生懸命掃除していい宣伝になるし、役所としてもタダでトイレをきれいにしてもらえるわけなので、双方大助かりなのだそうです。
アイデア一つで命名権も社会の役に立つんですね。
3.名前変わりすぎ問題
企業の名前を施設につけること自体は社会的にすっかり定着しており、特に問題はありません。
しかし一つ問題があるとしたら、命名権を持つ企業の都合で施設の名前がコロコロ変わってしまうことです。
例えば現在のほっともっとフィールド神戸は、短期間のうちに「グリーンスタジアム神戸→Yahoo!BBスタジアム→スカイマークスタジアム→ほっともっとフィールド神戸」と変わっていきました。
より顕著なのが、福岡PayPayドームや楽天モバイルパーク宮城などのIT系企業の名前がついたスタジアムです。
「福岡ドーム→福岡Yahoo! JAPANドーム→福岡ヤフオク!ドーム→福岡PayPayドーム」
「フルキャストスタジアム宮城→クリネックススタジアム宮城→楽天Koboスタジアム宮城→Koboパーク宮城→楽天生命パーク宮城→楽天モバイルパーク宮城」
と、一体いくつ名前があるのかという感じです。
また西武ドームなんかも
「西武ドーム→インボイスSEIBUドーム→グッドウィルドーム→西武プリンスドーム→メットライフドーム→ベルーナドーム」
などなど…。
これでは一体どこの施設のことを指しているのか、そして今はなんと呼べばいいのかとても分かりにくくなってしまいます。
Jリーグのスタジアムももはやどこのスタジアムなのか分からない名前だらけだし、しょっちゅう名前が変わるのでかなり混乱します。
命名権自体は良いのですが、数年おきに名前がコロコロ変わるのは非常にわかりにくいので何とかして欲しいものです。
そんな一方、札幌ドームはあまりに名前が変わらな過ぎてそれはそれで問題の元になっているのですが…。
(勝手に命名権を導入しようとしてファイターズに怒られて新球場作られたり…)
4.まとめ
以上、スポーツ施設と命名権について考えてみました。
名前を変えるだけで経済が回るなら誰にとっても大助かりですしとてもいい仕組みなのですが、一方でどのスタジアムなのか名前で分かりにくくなるのはかなり致命的な問題です。
命名権を取得するなら、責任をもって最低10年くらいは同じ名前で通してほしいなあと思うのですが、その辺りは仕組みをどうにか整えてほしいですね…。
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