注:本記事は新型コロナウイルス感染拡大後の情報を元にしています
【概要】
徳島県鳴門総合運動公園陸上競技場(鳴門・大塚スポーツパークポカリスエットスタジアム)は、1971年開場、徳島県鳴門市にある徳島ヴォルティスのホームスタジアム。名前が長い…。
徳島と言えば大塚製薬のおひざ元であり、ポカリスエットスタジアムのあるこの公園自体は徳島県の所有物であるが、大塚製薬が命名権を取得しており鳴門・大塚スポーツパークの名前がついている。
公園内にはほかにも体育館である「アミノバリューホール」や、「オロナミンC球場」、「ソイジョイ武道館」など、いかにも体によさそうな名前の施設が点在している。
元々この徳島県鳴門市というのは大塚製薬創業の地であり、その75周年事業で市内に作られた大塚国際美術館は世界中の名作のレプリカを集めた美術館として国内でも屈指の人気を誇っている。
そんなポカリスエットスタジアムをホームとする徳島ヴォルティスもまた大塚製薬サッカー部を源流とするクラブである。
ヴォルティスとはイタリア語で渦を意味する「Vortice」から来ており、もちろん鳴門の渦潮をイメージしたものだ。
徳島ヴォルティスは2005年にJ2に参入すると、上下動を繰り返しながら少しずつ力をつけていき、2013年にはシーズン成績4位ながらもプレーオフを勝ち上がりクラブ初、そして四国勢初のJ1昇格を決める。
しかし初のJ1での戦いとなった2014年は、1年での勝利数3、ホーム勝利無し、史上最低の勝ち点14を記録してしまうなど、辛酸をなめるシーズンとなってしまった。
それでもJ2に落ちてから再度少しずつ力をつけ、ついに2020年クラブ初のタイトルとなるJ2優勝をつかみ、堂々とJ1への挑戦権を手に入れた(前回は半分ラッキーパンチでしたので…)。
迎えた2021シーズン、前回のJ1昇格時から大きく成績を伸ばし二桁となる10勝を挙げることに成功。しかしコロナによる異例の4クラブ降格というレギュレーションに阻まれ、惜しくも残留はならなかった。
今後もJ1定着へ向けた徳島ヴォルティスの挑戦は続いていく。
そんな徳島ヴォルティスのファンとして有名なのが、かの大俳優、大杉漣氏である。
氏は高校時代サッカー部に所属し、国内外問わずサッカーに精通しており「サッカー観戦なら1日中していられる」と豪語するほどのサッカーファンであった。
特に氏の出身地である徳島への思いは強く、徳島ヴォルティス前身の徳島FC時代からのファンであったそうだ。
有名人となってからは招待券や特別席を用意されることもあったが、プライベートで応援しているとして固辞し、あくまでファンが集うゴール裏に交じって応援していた。
そんな氏も、2018年にドラマの撮影で訪れていたホテルで腹痛を起こし、急性心不全のために66歳の若さで急逝してしまった。
ヴォルティスはサイトを通じて追悼メッセージを出し、直後に行われたJリーグ開幕戦ではスタジアムに記帳台を設け喪章をつけて試合に臨んだ。
2回目となるJ1昇格を決めた2020年シーズンを見届けることはできなかったものの、選手は大杉漣氏の名前の入ったユニフォームを掲げて天に向け報告した。
J1で徳島が戦う姿を見て、きっと氏も天国で喜んだことだろう。合掌。
【アクセス】
最寄まで★★★☆☆
最寄はJR鳴門駅。鳴門線の終点で、ここで線路が途切れている。
なお鳴門線には特急がないので、他県から来る場合は別の手段で来る方が一般的である。
(関西方面からは車で淡路島を渡って、それ以外からは飛行機で徳島空港から行くのが普通)
なお、鳴門駅にはSuicaどころか自動改札すらない。普段自動改札が当たり前にある環境で暮らしている人にとってはかるくカルチャーショックである。
ちなみに徳島県最大の駅である徳島駅にも自動改札はない。
更に徳島は全国で唯一電車が走っていない県である。
こうやって観光する分には楽しいのだが、徳島で暮らすとなると公共交通機関だけでは動きにくいだろうなあ、と思う。
今回の徳島旅行記はこちら。
最寄から★★★☆☆
鳴門駅からは徒歩20分少々。
無料のシャトルバスも出ているが、道中はヴォルティスロードと名前がついており案内も出ているのでせっかくだから歩いてみるのも楽しいだろう。
2015年からは成績が道路上に貼り出されている。最初はほぼ五分の成績で順位も中位であるが…
徐々に順位を上げ、ついに2020年25勝9分け8敗の成績でJ2優勝のタイトルを手にした。この道を歩いているだけでも成績の変化を追うことができ感慨深くなる。
もちろん、そのずっと先にもヴォルティスロードは続いている。徳島の未来はこれから。
そして2021年には、ついにホーム初勝利を手にした。前回のJ1昇格時にはホームで一つも勝てなかったからね…。
スタジアムの真横には、鳴門を牛耳る大塚製薬の工場もある。
【観戦環境】★★★★☆
陸上競技場ではあるものの、ピッチまでの遠さはそれほど感じない。トラックがシートで隠されているのも、心理的な距離を軽減させてくれる。
目の前にボールが来るとそれなりの臨場感がある。
そりゃサッカー専用スタジアムには及ばないが、陸上競技場としてはかなり良くできていると思う。
ビジョンもかなり大きく、迫力もあり見やすい。いいスタジアムだ。
なお、こちらのバックスタンドはほぼ全面に屋根がついており座席も個別に分かれているが…(背もたれはほとんどないが)
メインスタンドは屋根も小さく、座席もベンチ式になっている。
バックスタンドの方が後から完成したため、メインスタンドよりもバックスタンドの方が快適に試合を観戦できる、という逆転現象が起こっている。
どちらを取るか迷ったらバックスタンドをオススメします。
バックスタンドのコンコース。売店などもありスペースも広く充実している。
【雰囲気】★★★★★
スタジアムの徳島ヴォルティスサポーター側の後ろには山がそびえ、雄大な自然を眺めながらサッカーを楽しむことができる。
私の大好きな夕暮れ時のスタジアム。こればっかりはドームやアリーナでは味わえない、屋外ならではの楽しみである。
試合前の演出では誰もがよく知る「zombie nation」の楽曲などを使い、みんなが盛り上がれる選曲で手拍子を煽っていく。この辺はBGMを選んでいる人のセンスが光っているな、と感じた。
コロナ禍においてはBGMによって一体感を醸成していくことが非常に重要である。
もちろん試合中も画像のように演出として全体の手拍子を煽っていくが、サポーター側も阿波踊りの鳴り物である「鉦(かね)」を使って「チャンカチャンカチャンカチャンカ」とリズムを刻んでいく。
阿波踊り自体ちょっとしたお祭りでも踊られる非常に徳島全体に浸透したものなので、Jリーグの応援にはぴったりというわけだ。
そういや阿波踊りの出だしである「踊る阿呆に見る阿呆 同じ阿保なら踊らにゃ損損」という精神は、まんま応援の精神に通ずるところがあるなあ。どうせやるならみんなで盛り上がろうぜ、っていう。
これほどまでにJリーグの応援に活用できる素晴らしい文化があるので、是非とも徳島ヴォルティスのアイデンティティとして受け継いでいってほしいものである。
まあ、戦時中でも途切れなかった文化なので、コロナにおいても途切れることはないだろう。それほどまでに徳島人の魂に刻まれているのが阿波踊りなのだ。
ちなみに選手も阿波踊りに参加するのが伝統である。
もちろん、ゴールを奪った時の盛り上がりはどこに行っても格別だ。
【グルメ】★★★★☆
ぱっと見、徳島名物を押し出しているようではなかったので、とりあえず行列の長そうな2店舗を回ることにした。ちゃんと下調べしておけばよかったな…。
こちらはネギだこ。ネギがたっぷりで、中身もとろとろふわふわ、確かに行列ができるのもうなずけるおいしさだ。
こちらは焼き鳥丼。中身が偏ってしまったが味は本物。炭火の香ばしさが鶏肉とベストマッチ。値段も500円と非常にリーズナブルだ。
徳島は生産量全国1位の阿波尾鶏(阿波踊りから名前をとっている)があり鶏の生産も盛ん。そんな場所柄を反映している商品だろうか。
もし阿波尾鶏を使っているなら、もったいないので大々的にのぼりなどで宣伝した方がいいと思ったが、そうでなくても行列だからいいのかな。
徳島の食品を使っているのかどうかは不明だが、純粋においしいものがいっぱいあって楽しい屋台村でした。
【街との一体感】★★★★★
最寄の鳴門駅には、駅名標に徳島ヴォルティスのチームロゴが描かれている。
公共の施設である駅にここまで入り込んだJリーグのクラブはかなり珍しいのではないだろうか。
ヴォルティスロード上にあるなると物産館では、もちろん鳴門市が徳島ヴォルティスを全面的に応援している様子がうかがえる。
徳島ヴォルティス仕様の自販機もある。売っているのはもちろんポカリスエットをはじめとした大塚製薬の製品だ(徳島では特に大塚製薬の自販機が多くみられる)。
鳴門駅からスタジアムの道中にはヴォルティスのご当地マンホールがある。マンホールマニア垂涎の一品だ。
そして徳島県の玄関口、徳島空港(正確には徳島飛行場)では徳島ヴォルティスの大きな垂れ幕が下がっている。
空港にあるということはヴォルティスが徳島を代表するコンテンツである、ということの表れだろう。
空港内にはヴォルティスの歴史を紹介するコーナーがあったり、
ヴォルティスのグッズコーナーもある。
徳島空港は徳島阿波踊り空港という名前がついているが、阿波踊りと同じくらい徳島ヴォルティスが目立っている印象だった。
徳島で一番のターミナル駅である徳島駅にも、ヴォルティスのロゴが描かれている。
更に徳島の商店街では、徳島ヴォルティスを全面的に応援するムードができていた。
J1昇格の新聞記事なども集められており、商店街の人がウキウキでこれを作ったんだろうなあ、と想像するとヴォルティスの果たした役目は大きいんだなあ、と感じた。
若干シャッター街になっていたのは気になるところだが…。
ともかく、スタジアムから鉄道で40分離れた徳島市内でもこれだけ愛されているヴォルティスは、きっと徳島県全体で大事にされている存在なのだろう。
【満足度】★★★★★
とにかく全体的に楽しく、また鉦を使った応援で徳島らしさを存分に感じることができた。
なにより、鳴門はおろか少し離れた徳島や徳島空港でもヴォルティスのロゴが至る所に目につき、徳島県全体で愛されているクラブなんだろうなあ、というのを感じることができた。
これからもどんどん徳島らしさを生かしたスタジアムづくりを続けてほしい。心からまた見に行きたいと思える楽しいスタジアムでした。
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