注:本記事は新型コロナウイルス感染拡大後の情報を元にしています
【概要】
東京スタジアム(味の素スタジアム)は、2001年開場、東京都調布市にあるFC東京のホームスタジアム。
もう一つの東京ダービーの記事はこちら。
FC東京の前身は1935年創部の「東京ガスサッカー部」。
現Jリーグクラブとして、東京最古の歴史を持つ。
その間太平洋戦争が勃発して選手が徴兵されたり、東京ヴェルディの前身である読売サッカークラブが出来たりした。
ちなみに読売サッカークラブとは1970年に一度だけ直接対決があり、5-3で東京ガスが勝利を収めている。
事態が動いたのは1993年、Jリーグ開幕の年。
調布市において「プロサッカーチーム誘致に関する決議」が可決され、東京ガスは当時建設計画のあった東京スタジアム(味の素スタジアム)をホームとしたJリーグクラブ創設を打診された。
これを東京ガスサッカー部が好意的に受け入れたため、東京ガスと調布市がタッグを組んで本格的にJリーグ加盟を目指すことになった。
ところが当時、地元青年会議所などの「つくる会」と地元ロータリークラブなどの「誘致する会」というよく似た団体が活動していた。
「つくる会」は東京ガスとともに地道にJリーグ加盟を目指していたのに対し、「誘致する会」はすでにJリーグに所属していたヴェルディ川崎の調布移転も打診していた。
当然両者は対立、結果的に東京ガスは公益企業としてプロ化は見送ることになった。
一方でヴェルディ川崎の調布移転も断念することになり、誰も得しないばかりか今に至る大きな遺恨を残してしまったのである。
しかし東京ガスサッカー部は1997年に改めてJリーグ参入を目指すことを表明、クラブ名も「FC東京」に一新。
JFL最後のシーズンとなった1998年には、後にJリーグでのライバルとなる川崎フロンターレを交わして初の優勝を飾った。
そして1999年、いよいよ開幕したJ2リーグの初代10クラブの一つとして、そしてJリーグ初の東京を本拠地とするクラブとしてJリーグに参入。
この年2位となりJ1昇格を決め、いよいよJ1の舞台に首都東京のクラブが立つことになった。
その後は1シーズンだけ降格を喫するが、それ以外はJ1の舞台で安定した戦いを続けている。
16年ぶりとなるJ1での東京ダービー、元祖東京のクラブとしてのアイデンティティを、J1で長年戦ってきたプライドを、易々と傷つけられるわけにはいかない。
【アクセス】
最寄まで★★★☆☆
最寄は京王線飛田給駅。
基本的には各駅停車と快速しか止まらないが、Jリーグの試合時には臨時で全列車が停車する。
というのも最寄り駅が基本的に飛田給駅しかなく、特に帰りは駅が大変混雑してしまうためだ。
試合後は整列乗車が解除され、ホームにぎゅうぎゅうになり、電車にもぎゅうぎゅうに詰め込まれる。
混雑を避けるため隣の西調布まで歩く人もいるようだが、どのみちぎゅうぎゅう詰めの電車に乗らなければならないことには変わりない。
しかも西調布には特急等も停まらない。
最寄から★★★★★
飛田給駅からはまっすぐ伸びる道を進むだけ。
しかし帰りは非常に混みあう。住宅街の抜け道を使う人もいるが、あまり大騒ぎすると禁止されるかも。
階段を上ると味の素スタジアムへ。
ちなみにゲートがあるが、Jリーグの試合では機能していない。
この日のスタジアムはもちろんFC東京一色に。
【観戦環境】★★★★☆
何度も通い慣れた味の素スタジアム、この記事では詳細は割愛する。
今やまともに陸上競技場として機能していないし、等々力のように球技専用スタジアムに改修して欲しいが…。
(しかし機能を減らすという決断は人間よほどのことがないとできないのだ)
メインスタンドはFC東京仕様になっている。
先日の東京ダービーとはまた違った装いだ。
バックスタンドとメインスタンドで大きな違いはないが、バックスタンドの一番の問題は夕方の西日。
こればっかりは曇ってくれることを祈るしかない。
ホームFC東京側のゴール裏。
アウェイ東京ヴェルディ側のゴール裏。
先日の東京ダービーに比べ、アウェイ側のエリアが絞られている。FC東京と東京ヴェルディの勢力図がこんなところに反映されている。
バックスタンドの装飾はほぼそのままだ。
続いてコンコースを散歩。
もちろんFC東京のグッズショップなどが並び、青と赤に染まっている。
なお前回の東京ダービーとは違い、ゴール裏にもサポーターのメッセージなどは張られていなかった。
もしかしたら無用なトラブルを避けるため、運営が相当力を入れたのかもしれない。
調布警察署も警備を強化していたようだ。
【雰囲気】★★★★★
試合前には観戦マナーについてのご案内。
いつも行っているアナウンスかもしれないが、こと東京ダービーとなると意味合いが違って聞こえる。
アツいダービーを100%楽しむためには、冷静な判断力も必要だ。
それは選手もサポーターも同じこと。
スタジアムの一角を緑に染める東京ヴェルディサポーター。
スタジアムのほぼすべてを青と赤に染めるFC東京サポーター。
4万人近くのお客さんが集まった東京ダービーは、まさに日本で一番暑い夏だ。
ちなみにどちらもメッセージが書かれた横断幕はやはり出していなかった。
運営が禁止にしていたのかもしれない。
試合前には光と音を存分に使った演出で、花火も打ちあがる。
その一方で場内アナウンスは一歩引いている感じで落ち着いており、試合演出の派手さとのコントラストが心地よい。
そしてFC東京の試合前の恒例行事、「You'll Never Walk Alone」の合唱へ。
これは1945年のミュージカル「回転木馬」のために書き下ろされた楽曲であるが、1963年にイギリスでヒットして以来リバプールFCのアンセムとして歌われるようになった。
以降世界中のサッカークラブで歌われるようになり、日本ではFC東京の試合で採用されている。
ただしこの試合では、それをかき消すように東京ヴェルディ側がコールを重ねていた。
まさしくダービーといった雰囲気で、サポーターもバチバチにやり合っている。
それが終わると演出も最高潮へ。
時間帯の違いもあるが、試合演出の派手さについてはFC東京に軍配が上がる。
さすがに長年J1で積み重ねてきた歴史が違う。
ちなみに試合運営の面でもFC東京の方が分かりやすかった。
東京ヴェルディの時はよく分からない場所に並ばされてゲートまでさんざん歩かされたが、FC東京ではゲートまですぐだったり。
これに関しても普段から観客の多い試合を捌いているかどうかの経験値の違いだろう。
東京ヴェルディがJ2でもがいてきた16年という月日は、あまりにも長かったのだ…。
しかし、試合が始まってもしばらく花火の煙がもくもくしていた。
選手入場も煙で見えないし…。
これに関してはFC東京の気合が空回り。
ボールが大きいサッカーでよかったね…(野球だったら試合できない)。
試合は一進一退の攻防。お互いにチャンスの作れない時間が続く。
(そしてまだ煙い…)
そんなバチバチの味の素スタジアムが唯一一つになった時間があった。
それはFC東京の森重選手がシュートを受け、脳震とうで倒れた時だ。
お互いのサポーターもすぐさまチャントをやめ、選手やスタッフも敵味方関係なく駆け寄ってきた。
どんな事情があろうと、人命は最優先事項だ。
幸い大事には至らなかったが、ここに集った全員の気持ちが一つになった瞬間でもあった。
そしてことが収まると、すぐさまバチバチの空気に戻った。
そんなこんなで、試合は終了。
前回に引き続き、今回も引き分けに終わった。前回は2-2、今回は0-0だ。
ダービーマッチというのは、たとえ力量差があっても何故か五分の戦績に落ち着くことが多い。
それだけダービーというのはお互いの力が最大限引き出される試合なのだろう。
やっぱりライバルというのは良いもんだな。
さて肝心のスタジアムの雰囲気であるが、今回はFC東京側の「川崎帰れ」「ヴェルディ川崎」などの煽りはなかった。
あれに関してはヴェルディどころか川崎にもケンカを売ってる言葉だから本当に良かった。二度と使わないでくれよな。
とはいえ相変わらず「ヴェルディには負けられない」「緑が大嫌い」「ヴェルディ〇ソッタレ」などの熱いメッセージは続いていた。
一番目の言葉から順に幼稚さが増している様相だ。せめて最初の言葉で止めておけばいいのに…。
ただ応援の勢いで言えば圧倒的な数で勝るFC東京に対し、東京ヴェルディは一体感でやりあっていた。
フラットな目で見て、声量は互角に思えた。
それだけヴェルディにはまだまだブランド力があることの証明になっているし、潜在的なファンが多いということの表れでもある。
ヴェルディにはまだまだ成長の余地が残されている。FC東京もうかうかしている場合ではない。
そんなわけで試合後には大きなトラブルもなく、ただただみな黙って家路についた。
さすがに2試合連続の引き分けで、FC東京としても東京ヴェルディの実力、存在を認めないわけにはいかないだろう。
対等なライバル関係を築き熱い東京ダービーの歴史を紡いでいくうえで、16年ぶりの2試合は非常に大きなものとなったのではないだろうか。
決着は今後に持ち越しだ。
飛田給駅まで両サポーターが仲良く列をなしていた。
試合よりも帰りの熱気の方がムンムンな東京ダービーなのであった…。
【グルメ】★★★★☆
主なグルメエリアはバックスタンド前の青赤パーク。
以前は町田ゼルビアの試合で出店し、現在はFC東京の名物スタグルへと成長したYASSカレーをいただく。
ホロホロの角煮にドロドロのカレー。この味は以前町田で食べた味と変わっていない。
店主さんはロック、カレーはホット、そんな一杯。
2台もキッチンカーを出している肉山のローストビーフ丼もいただく。
肉山は吉祥寺の有名店で、その名の通り肉のうまさと安さを両立した人気のお店。
そんな肉山の肉がキッチンカーでいただける。
もちろんお肉は美味しいし、オニオンソースも最高な一品。
現役時代FC東京の選手として長年活躍し、日本代表としてもプレー経験のある石川直宏氏。
そんな石川氏が現在取り組んでいるのが、なんと農業。
長野県にあるNAO’sFARMではとうもろこしならぬ「なおもろこし」を育てており、FC東京の試合で本人自ら販売している。
スタジアムでとうもろこしなんか買ってもどうやって食べるの?と思うかもしれないが、なおもろこしはフルーツ並みに糖度が高くなんと生でも食べることができる。
実際食べてみるとプチプチとした食感はとうもろこしだが、普通のトウモロコシに比べて格段に甘く食べられるどころかちゃんとおいしい。
これはワンハンドで食べられる、間違いない「スタグル」だ。
でも焼きもろこしでも食べてみたいから、今度は持ち帰って焼いてみたいところ。
せっかくだから焼いてるのも売ってみて欲しい気もする。
今回初出店という伊良コーラを購入。
ずいぶん手の込んだ作り方をしていて、仕上げになんとブラックペッパーを振りかけるこだわりの一杯。
これはコカ・コーラとは比較することができない全く別の飲み物だ。
おいしいかどうかというより、あまりに触れたことのない味だったので頭がコーラと認識できなかった。
(暑い夏に渇きをいやすのには向いていないかも…)
ただせめてコーラの種類と値段くらいは見えるところに書いておいてほしいところはある。
初出店だからこれから改善すると思うけど…。
もう一つの駐車場でもグルメやふわふわなどが置いてあったりした。
謎に恐竜とかもいるし…。
ただ、スタグルのワクワク感はなんとなくヴェルディの試合の方があったような気もする。
FC東京は有名店が多いんだけど、それ以外であんまりピンとくるお店が見当たらないかなあという感じ。
それでもイナ活の頃に比べたら格段に良くなったのは間違いない。
【街との一体感】★★★★★
今回は東京の副都心を巡る旅。
まずは若者文化の発信地、渋谷。ここにあるディスプレイ型広告にはFC東京の選手が映っている。
続いて渋谷のスポーツショップ。
ここにはガッツリFC東京コーナーが設けられている。かなりの存在感。
続いてサッカーショップへ。
こちらにもわずかながらFC東京グッズが飾られている。
その隣にあるバーらしきお店のシャッターには、FC東京のユニフォームを着た人物のイラストが描かれている。
もしかしたら試合中継を見たりできるのかもしれない。
続いてはファッションの街、原宿。
その竹下通りの入り口にサッカーショップがある。
狭い店舗ながら、FC東京のグッズが販売されている。
最後は世界最大の都市東京で最大の街、新宿。
こちらのスポーツショップは都内最大級を誇る。
そんな店舗の一角にFC東京のコーナーがある。
お店が大きいのでこれでもごくごく一部分だ。
続いてFC東京のスポンサーを務める京王線新宿駅。
こちらのリボンビジョンには東京ダービーの宣伝が流れていた。
「東京は、青赤」という強いメッセージも。
ただ京王電鉄としたら、FC東京だけでなく東京ヴェルディの観客動員も増やしたいところだ。
その分利用者も増えるので…。
ちなみに、ちゃっかり京王観光はヴェルディのスポンサーになっている。
新宿駅はFC東京の装飾だらけ。
続いてスタジアム最寄の飛田給駅。駅の外でも会社の宣伝を兼ねてFC東京を応援。
駅構内には両クラブのタペストリーが並んでいる。
しかし一歩改札を出るとFC東京一色に染まっている。
改札内は京王の領域、改札外は調布市の領域、といったところだろうか…?
駅の外にもFC東京のヒストリーが貼りだされている。
FC東京仕様のマクドナルドや、
すき家などもある。
歩道橋はそれぞれFC東京仕様になっている。
その横にあるスポーツショップにもFC東京の写真が飾られている。
世界最大の都市東京の副都心を中心に、これだけ存在感が出せるのはスゴイこと。
だから私個人の意見としては、
FC東京→「国立競技場」
東京ヴェルディ→「味の素スタジアム」
を本拠地にしておけば、すべてがまあるく収まるんじゃないか?と思っているのである。
もちろん、実際にはいろいろな事情があって難しいのだろうけど…。
とはいえ都内に新スタジアムを建てる方がよっぽど難しそうなので、既にあるスタジアムを使い分ける方がよっぽど現実味があると思うのだが。
【満足度】★★★★★
結果的にFC東京側が少しおとなしくなったおかげで、前回よりは気持ちのいい東京ダービーを楽しむことができた。
ただサッカーではFC東京がほとんどの時間で押し込まれており、結果はもちろん内容としてもとても満足のいくものではなかっただろう。
おかげでとてもではないがヴェルディのことをバカにできなくなってしまった。
バカにした瞬間に特大のブーメランが返ってきてしまうからだ。
果たしてJ1でのダービーは今後も開催されるのか、開催されたとしたらどのような歴史を歩むのか。
その第一歩としては、非常に興味深い2試合なのであった。
索引を作りました!
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