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スポーツは広告でできている【コラムその127】

突然ですが、プロスポーツにおける一番の収入源は何でしょうか?

 

ファン目線で言えば、まず思い浮かぶのが入場料収入、そしてグッズなどの物販収入、そしてテレビやネットなどで試合を放送する放映権料といったところでしょう。

 

しかし、日本のプロスポーツにおいて最も大きな収入源はそのどれでもありません

日本のプロスポーツで最も大きな収入源はスポンサー収入、すなわち広告塔としての収入なのです。

比率こそ違えど、プロ野球においても、Jリーグにおいても、Bリーグにおいても同様の傾向にあります。

 

そこで今回は、スポーツにおける広告について考えてみたいと思います。

1.スポンサー収入の割合は?

まず、各リーグにおける収入の内訳をみてみましょう。

年度によっても変わるはずなので、あくまでも目安としてご覧ください。

・プロ野球

スポンサー収入 33%

入場料収入 33%

物販収入 15%

放映権収入 15%

その他 4%

 

・Jリーグ

スポンサー収入 44%

入場料収入 20%

放映権収入 10%

その他 27%

 

・Bリーグ

スポンサー収入 56%

入場料収入 17%

物販収入 7%

配分金 5%

ユース・スクール収入 4%

その他 11%

 

と、どのリーグにおいてもスポンサー収入が最大になっていることが分かります。

とりわけアリーナのキャパシティの少ないBリーグでは、スポンサー収入が大半を占めていることが分かりますね。

 

ちなみに完全なプロリーグではありませんが、ラグビーのリーグワンでも収入の55%がスポンサー収入となっています。

アマチュアであればあるほど基本的にはスポンサーの影響が大きくなっていくはずなので(社会人野球など)、日本のスポーツはスポンサーによって支えられていると言ってよいでしょう。

 

2.プロスポーツにおける広告の種類とは

続いて、プロスポーツにおいて具体的にどういった種類の広告があるかを考えてみましょう。

 

ちなみに少しGoogleで調べてみましたが、そういった広告の種類をまとめているようなサイトは見当たりませんでした。

そこで、私が実際にスポーツ観戦をしていて気付いた広告を挙げてみたいと思います。

 

・チーム名

最も分かりやすい広告がチーム名です。

読売ジャイアンツ、福岡ソフトバンクホークス、北海道日本ハムファイターズなどなど…。

プロ野球チームで企業名が公式に入っていないのは広島東洋カープだけです(もっとも、東洋はマツダの前身である東洋工業の名残ですが…)。

 

プロ野球のチーム名は試合中継でも名前が連呼され、スポーツニュースでも毎日映しだされ、新聞にも毎日載ります。

これほどの効果が得られる広告媒体は他にないと言っていいでしょう。

 

おまけに社会的な信用も自然と勝ち取ることができます。

野球チームが無ければ、ヤクルトも楽天もDeNAもこれほど広く認知される企業にはならなかったでしょう。

 

一方で、JリーグやBリーグは原則としてチーム名に企業名を入れないことになっています。

これは地域密着を推し進めたリーグの意向ですが、結局この方法が正解なのかどうかについては未だに議論が分かれるところです。

 

とりあえず現状ではこのチーム名に企業名を入れない原則は守られていますが、これを違った角度からとらえると、地名でチームを呼ぶことで「自治体」をスポンサーにしている、という見方もあるようです。

 

個人的にはある程度チームが地域に定着したら、ネーミングライツ的にチーム名に企業名を入れるのはアリではないかと感じます。

その前提のクリアがなかなか難しいんですけどね。

 

でも浦和レッドダイヤモンズとか、名古屋ダイヤモンドドルフィンズとか、そもそも若干グレーな感じはあるよなあ…(笑)

 

・ユニフォーム

チーム名の次に目立つのがユニフォーム

胸にNISSANとか、TOYOTAみたいな大企業のロゴが出ているユニフォームは純粋にカッコいいなと感じます。

 

Jリーグ、Bリーグではユニフォームが広告塔代わりになっている一方、プロ野球では基本的にチーム名ロゴのみのシンプルなデザインです。

そもそもチーム名がそのまま広告になっているのだから、あえて広告を入れる意味はあまりないのかもしれません(袖とかにはあるけど)。

 

ただし独立リーグのユニフォームはそんなことも言っていられないので、小口のスポンサーを集めてユニフォーム中にペタペタ張る感じになっています。

若干見栄えが悪いのが正直なところではあります。背に腹は代えられないのですが…。

 

・チームのスポンサー

直球にチームのスポンサーをしています、ということ自体が広告になる場合もあります。

というかスポーツチームの主な広告はこれかもしれません。

 

チームのホームページを見てみると、大体一番下あたりにチームスポンサー企業の一覧があります。

ロゴの位置、大きさから見て目立つ方から大口のスポンサーになっているようです。

 

もちろんスタジアムでもスポンサー企業のアナウンスが行われ、大体試合前にバーッと企業名が読み上げられます。

Bリーグとかに行くとチアのお姉さんが企業名の書かれたボードを掲げてくるくる回ってたりします。

 

個人的にはこれで広告効果はあるんだろうか?と思ったりするのですが、そもそも「チームのスポンサーをしている」という事実自体が社会的信用を得る材料になったりするみたいです。

企業イメージって一般人が思うよりもずっと重要な要素なんでしょうね…。

 

・施設のネーミングライツ

最近すっかり定着した施設のネーミングライツ。エスコンフィールド北海道とか、バンテリンドームナゴヤとかです。

施設の名前はニュースでも日常会話でもよく使いますし、広告効果は非常に高いと言えます。

 

ちなみにネーミングライツを最初に導入したのは、やっぱり世界一の大国アメリカ

1990年代にメジャーリーグで取り入れられるとその効果が世界的に認められ、日本では味の素スタジアムが最初にネーミングライツを導入しました。

現在では地方の小さな球場やスタジアム、アリーナにも企業名がついているのが当たり前になりました。

 

また最近では、座席の名前に企業名をつけるのも流行っています。どの球場にもセブンイレブンシート、みたいのがあるような。

実際に座った人にとっては思い出に残りやすいでしょうし、認知度を高めるというよりは来場者に強い印象を与えるための広告という感じでしょうか。

もちろんチケットを買う時にも目立ちますね。

 

・スタジアムへの広告掲出

スタジアムに行って一番目立つのがやっぱり企業名の書かれた広告

試合を見ていれば自然に目に入ってきますし、試合中継、そしてスポーツニュースにも映り込む可能性があります。

 

一方で、目立つ場所(バックネットなどテレビに映りやすい場所)とそうでない場所のが激しいため、かなり細かく広告のお値段が決められているのではないかと邪推します。

多分。

 

・大会名スポンサー、マッチスポンサー

大会名、あるいは試合名そのものにもスポンサーがつきます。

大会名で言えば明治安田生命Jリーグ、日本生命セパ交流戦など。なんか保険会社が多いですね。

 

マッチスポンサーは、試合中継を見ているだけではなかなか意識することはありません。

でも実際に試合を見に行くといろいろな配布物があったり(金沢でカレーをもらったりしたことがあります)、スポンサーごとのイベントがあったりしてなかなか面白いです。

広告の大きさとしても意外と馬鹿にできないものがあるようですよ。

 

・球速表示、フリースロー成功時のアナウンスなど

かなりニッチなところですが、球速表示やフリースロー成功時のアナウンスなどに企業名が付随することがあります。

確かに一瞬ではあるものの意外と注目が集まるところなので、費用対効果は高いのかもしれません。

 

アナウンス時のメロディーなどがやたら頭に残る宣伝もあったりして、場合によってはちょっとした名物になっているところもあります。

そうなったら企業側からしたら勝ちでしょうね。

 

3.「広告」はどこまで許されるのか?

さて、このように日本スポーツを支えるスポンサー。

非常にありがたいものですが、果たしてどこまで広告にしていいのか、という問題は非常に難題です。

 

例えば前述のようにユニフォームにあまりに広告が多すぎると見栄えが悪くなってしまいますし、かつてのbjリーグのコートも広告だらけで試合自体の見やすさにも影響を与えていたように思います。

 

チームを助けてくれるはずのスポンサーが、かえってお客さん離れの一因になっては本末転倒です。

また、あまりにスポンサーが出しゃばりすぎてもファンが嫌悪感を抱いて離れてしまう恐れがあります。楽天とか…

 

以上のことを踏まえて、いかに悪印象を残さず広告効果の高い宣伝ができるかというのは、その企業のセンス、そしてチームの力量にも左右されるでしょう。

このあたりはなるべく広告のプロの目線を入れて、効果を最大限にする広告を提供して欲しいものですね。

 

4.まとめ

以上、プロスポーツにおける広告を考えてきました。

考えてみるといろいろ課題もなくはないものの、現状では広告が問題になるようなことはほとんどないですし、日本のプロスポーツにおける広告ビジネスはかなり順調なのではないでしょうか。

 

一方で、アイデアさえあればまだまだ広告の余地がありそうな気がします。

みんなで知恵を絞って、より効果の高い、かつお客さんも納得できる広告が増えてほしいものです。

 

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