Jリーグの大きな見どころ、もちろん優勝争いはその一つです。
しかしその裏にある「残留争い・昇格争い」もまた、大きな見どころの一つです。
というか、もはや優勝争いよりもそちらの方が面白いという人もいるほどです。
今回はそんな降格・昇格にスポットを当て、Jリーグ発足時から存在しているオリジナル10の降格・昇格回数ランキングを作りました。
ランキングの性質上上位だから優れているとかいう性質のものではないのですが、上位ほど激動の時代を駆け抜けたクラブということで…。
どちらかというと、その裏のドラマみたいなところにスポットを当てていきたいと思っております。
- 8位タイ・鹿島アントラーズ、横浜F・マリノス、横浜フリューゲルス(降格0回、昇格0回)
- 7位・ジェフユナイテッド千葉・市原(降格1回、昇格0回)
- 3位タイ・浦和レッズ、ガンバ大阪、清水エスパルス、名古屋グランパス(降格1回、昇格1回)
- 2位・東京ヴェルディ(降格2回、昇格1回)
- 1位・サンフレッチェ広島(降格2回、昇格2回)
- まとめ
8位タイ・鹿島アントラーズ、横浜F・マリノス、横浜フリューゲルス(降格0回、昇格0回)
オリジナル10と呼ばれる10クラブのうち、降格経験がないのは3クラブ。
横浜フリューゲルスは現存していないので、実質2クラブということになります。
鹿島アントラーズはこれまで二けた順位となったのが2012年に11位となった一度だけという安定ぶり。
ジーコが植え付けたスピリットは鹿島アントラーズの中で生き続けているのですね。しばらく降格とは無縁でしょう。
横浜F・マリノスは二けた順位となったのが4度。そのうち一番危なかったのは2018年で、降格となった柏レイソルとは勝ち点2の差。
どこかで一つ負けが多かったら降格となっていたのでした。J1リーグというのは恐ろしい…。
しかも、この年は勝ち点41でマリノスを含む5クラブが並ぶという稀に見る大混戦でした。
最終節では名古屋グランパスとジュビロ磐田の順位が目まぐるしく入れ替わり、ジュビロが試合終了直前にオウンゴールを喫したことで得失点差で下回りヴェルディとの入れ替え戦に挑みました(結果残留)。
最下位の長崎でも勝ち点30を上げ、これはJ1リーグが18クラブになってからは最下位の勝ち点としては最多のものでした。Jリーグ史上最大の残留争いだったと言えます。
ちなみに横浜フリューゲルスは、1995年に14クラブ中13位となっていますから、もしこの年にJ2リーグがあれば降格していました。
ただ二けた順位となったのはその年だけなので、割と安定した成績を残していたクラブではありました。
7位・ジェフユナイテッド千葉・市原(降格1回、昇格0回)
オリジナル10で唯一、J2に落ちっぱなしなのがジェフ千葉。どっぷりJ2沼にはまっております…。
ただJ2に降格する3年ほど前までは、Jリーグカップ2連覇、そしてリーグ戦でも3位から4位に安定して入るなどリーグでも上位の強さを誇っていました。
そんなジェフにとって誤算だったのは、監督だったイビチャ・オシムが日本代表監督に引き抜かれてしまったことでしょう…。
選手・サポーターからも批判が相次ぎましたが聞き入れられず。この2006年には一気に順位を二けたまで落としてしまいます。
その後も毎年じりじりと順位を落とし続け、気付けば2009年、3試合を残しJ2降格が決定。順位も最下位となってしまいました。
その後J2でもしばらく3位~6位をさまよい続けましたが、昇格にはあと一歩届かない、というシーズンが続き、そうこうしているうちにどんどんJ1昇格が遠のいていきました。
2019年にはとうとうJ2で17位となってしまい、いよいよJ3降格を気にしなければならない順位となってしまいました。実際、この年得失点差の差はあったもののJ3降格した鹿児島とは勝ち点の差はたったの3。
J2沼にはまり続けるジェフユナイテッド、果たして抜け出すことはできるのでしょうか…?
3位タイ・浦和レッズ、ガンバ大阪、清水エスパルス、名古屋グランパス(降格1回、昇格1回)
浦和レッズ、ガンバ大阪、清水エスパルス、名古屋グランパスはそれぞれ降格と昇格を1度ずつ経験しています。ここからは時系列順にみていきましょう。
1999年J2降格、2000年J1昇格・浦和レッズ
1999年に始まったJ2リーグ。その降格の最初の餌食となったのが、今では超人気クラブに成長した浦和レッズでした。といっても、Jリーグの初代最下位も実は浦和だったりするのですが…。
この前年、なまじいい成績を残してしまっただけに補強を怠った浦和は、主力の相次ぐけがや、小野や永井がワールドユース日本代表に引き抜かれたこともあり低迷。
最終節を残して、浦和は降格圏のジェフ市原を勝ち点1の差で上回るだけ。Jリーグ初の降格クラブの行方は最終節まで分からない状況となりました。
当時はVゴールと言って90分で決着がつかない場合は延長戦を行い、そこでゴールを決めた場合は勝ち点2を獲得できるというルールになっていました。
得失点差でジェフ市原に対して不利に立つ浦和は、Vゴールによる勝利では市原を下回る可能性が高く、なんとしても90分以内での勝利が欲しい試合でした。
最終節、浦和は広島と対戦。広島の堅守を崩すことができず、点を取ることができません。
しかし一方の市原もG大阪を崩すことができず、どちらも0‐0で前半を終えます。
迎えた後半、15分に市原がついに先制。いよいよ浦和は90分以内での勝利がJ1残留に向けて絶対条件となります。
フォワードの盛田を投入するなど攻撃的な布陣を取り、なんとしても一点を取りに行きますがゴールは遠く…。
無情にも後半終了のホイッスルが鳴ってしまい、この時点で浦和のJ2降格が決定。
延長後半で1点をもぎ取った浦和は試合には勝利しますが時すでに遅し。試合に勝ったにもかかわらず崩れ落ちる選手たちに対し、「世界で一番悲しいVゴール」という表現がされました。
翌2000年、悔しさをバネに浦和は連勝を続け余裕でJ1復帰…。
かと思われましたが、J2特有の過酷な日程、不十分な競技環境、そして守備重視の戦術をとるクラブが多いことなどから予想に反して苦戦を強いられます。
札幌が早々に優勝を決めJ1昇格を果たす一方、昇格のもう一クラブの行方は浦和と大分で最終節までもつれ込みます。
浦和は鳥栖と、大分は大宮と対戦しますが、前半は0‐0のスコアレス。後半の結果で昇格が左右される緊迫の展開となります。
後半開始早々、浦和は福永からアジエルへつなぎいきなりゴール。昇格を手繰り寄せたかに見えましたが、DF西野のミスもありすぐさま追いつかれます。
一方の大分、62分に待望の先制点。これにより、このまま浦和が引き分け、大分が勝利となれば大分が逆転で昇格を決めることになります。
更に悪いことに、このタイミングで浦和のDF室井がペナルティーエリア内で相手を倒してしまい一発退場、そして鳥栖にPKが与えられます。
ところがこれを鳥栖のルシアノが外してしまい、浦和は九死に一生を得ることになります。昇格の行方はいよいよ延長戦へ。
一人少ない浦和でしたが、引き分けでは昇格を逃してしまうため、なんとしても1点が欲しい浦和。
延長開始5分、浦和はフリーキックを得ると、こぼれ球に土橋が反応し25mのミドルシュート。これが決まり、なんとかJ1昇格を手繰り寄せました。
前年と対照的に、「世界で一番嬉しいVゴール」…とは別に呼ばれていませんが、2年でこれだけ激動の最終節を送ることになった浦和。お疲れ様です。
2012年J2降格、2013年J1昇格・ガンバ大阪
2012年のガンバ大阪の降格劇はまさにJリーグ史上に残ると言っていいでしょう。
リーグ最多の65失点を喫したのはもちろんですが、なんと挙げた得点もリーグ最多の67得点、そして得失点差プラス2!!!
数々のタイトルを獲得してきたJリーグ屈指の名門クラブであり、この年天皇杯準優勝にも輝いたガンバ大阪の降格劇は、「まさか」という言葉でしか表せないでしょう。
なんせ翌2013年にはあっさりとJ2優勝、そして2014年にはJリーグ、Jリーグカップ、そして天皇杯の三冠を達成してしまうのですから。Jリーグではまだ鹿島とガンバ大阪しか達成しておりません。
こういった飛躍っぷりを見ると、2012のJ2降格は珍事と言ってもいいのではないでしょうか。試合運びが下手だと言ってしまえばそれまでですが…。
2015年J2降格、2016年J1昇格・清水エスパルス
オリジナル10のうち唯一実業団を母体としない、市民に愛される名門クラブ・清水エスパルス。
そんなエスパルスの悲劇は2015年に訪れました。
1stステージでわずか3勝しかあげられずクラブワーストの成績で折り返すと、大榎監督の解任、チョンテセの加入などテコ入れを図るも及ばず。
2ndステージ14節で仙台に敗れ、クラブ史上初のJ2降格が決定してしまいます。
2016年、クラブ初の経験となるJ2特有の戦い方にてこずり、一時はプレーオフ圏外にまで落ちてしまいます。それでも地力に勝るエスパルスは途中からコツをつかみ安定した成績を挙げはじめます。
33節で松本に敗れ5位に後退するも、再度ジリジリと順位を上げ最後は9連勝で札幌に次ぐ2位となり1年でのJ1昇格を決めました。
やっぱり、こういうとこでスパッと1年で昇格を決めないとズルズル沼にはまってしまうんだろうなあ…と思わされます。
2016年J2降格、2017年J1昇格・名古屋グランパス
ストイコビッチ監督のもとJリーグ制覇を果たすなどクラブ黄金期を築いた名古屋グランパスでしたが、2016年にGMと兼任の小倉監督が就任すると流れが悪い方へ傾いていきます。
ただでさえGMと監督の兼任というかなり無茶な状態なのに加え、赤字解消のため主力が次々に退団。
なんとか序盤は持ちこたえるものの、シーズン途中にはクラブワーストとなる18試合連続勝利なしを記録。
田中マルクス闘莉王の復帰で少し持ち直しますが及ばずJ2降格が決定。現状、オリジナル10最後のJ2降格となっています。
この年は、とにかくフロント内での派閥の対立などクラブ内でのゴタゴタが目立つシーズンでした。いつぞやの名古屋の野球チームに似ているような…
翌2017年風間監督を新たに迎え入れますが、どうも波に乗り切れません。一時期13位にまで落ち、4連勝で首位に立つも勝利が続かず、前半を6位で折り返します。
更に後半も勝利はするものの長くは続かず、順位を上げきれず年間順位3位で昇格プレーオフに回ることになります。
プレーオフ準決勝の千葉戦では先制を許すも逆転で4‐2で勝利。続く決勝では福岡相手に0‐0のスコアレスドロー。規定により順位で上回る名古屋が昇格を決め、やはり1年でのJ1復帰となりました。
色々ありましたが、やっぱり1年で昇格を決めるというのは大事なんでしょうね。
2位・東京ヴェルディ(降格2回、昇格1回)
ジェフと同じくJ2沼にはまっているのが東京ヴェルディ。Jリーグ初代王者がこんなことになるなんて…。
最初にJ2へ降格したのは、ホームを東京へ移した4年後の2005年のこと。前年天皇杯を制し期待されたシーズンでしたが、予想に反して大敗が続きます。
監督交代などの対応も実らず、あえなくJ2降格。
翌2006年は7位に終わりますが、2007年には開幕から4勝1分の好成績をあげます。その後7連敗を喫するものの、そこから持ち直し気付けば2位へ浮上。なんとかJ1復帰を果たします。
ところが2008年、J2で得点王に輝いたフッキが退団すると流れが一変。深刻な得点力不足に陥り、33節終了時点で16位へ。
迎えた最終節、川崎フロンターレに敗れると、ジェフ千葉に勝ち点で逆転され17位、J2降格。
さらに翌年、頼みの綱の日本テレビが経営から撤退。以降、J2の沼にはまり続けています。
なんとかスポンサーをかき集めながらもがき続けていますが、果たして報われる日は来るのでしょうか…?
1位・サンフレッチェ広島(降格2回、昇格2回)
オリジナル10のうち、唯一J2から2度昇格してきた経験があるのはサンフレッチェ広島。
最初のJ2降格は2002年のこと。新監督のガジエフが就任するも、「自分の戦術に合わない」との理由で主力を次々に放出。
その割に戦術もはっきりせず、負けが続き結局シーズン途中で解任。やっとチームとしての形ができてきたのはシーズン終盤のことでした。
もちろん巻き返すことも出来ず、あえなくJ2降格。ガジエフ監督に振り回されたシーズンでした…。
J2では開幕11戦無敗を決め抜け出すかに見えましたが、浦和と同じくJ2独特の難しさに手を焼き失速。39節の時点では勝ち点78の首位新潟、77の川崎に続く76で3位でした。
ここから2勝1分けの成績を挙げ、42節終了時点で勝ち点差2で2位に浮上。
43節では鳥栖相手に2‐1と勝利をおさめ、3位の川崎に勝ち点4の差をつけJ1昇格。苦労しながらもなんとか1年でJ1の切符をつかんだのでした。
…と一安心していた広島でしたが、4年後の2007年に再び危機が訪れます。クラブの財政が悪化し補強ができないままシーズンに突入したのです。
その後もまともに戦力を補強できず、リーグワーストの71失点を喫するなど守備が崩壊。16位で入れ替え戦に回ります。
J2を3位で終えた京都との入れ替え戦。第1戦で2-1で京都に敗れると、第2戦で京都の守りを崩せず0‐0のスコアレスドロー。あえなく2度目のJ2降格を喫します。
それでもこの年、天皇杯では準優勝するなど底力は見せていた広島。
翌2008年にはJ2降格となりながらも異例の留任となったペドロヴィッチ監督のもと、久保竜彦の復帰などもあり圧倒的な力を見せつけJ2優勝。「9月中の優勝」「勝ち点100」など、記録づくめのシーズンとなりました。
その後は引き続きペドロヴィッチが監督を務め、それを引き継いだ森保監督のもとJリーグを3度制覇するなどクラブの黄金期を築きました。
この黄金期の根底にはJ2降格の悔しい経験があることは間違いありません。
まとめ
以上、Jリーグオリジナル10の昇格・降格の歴史をまとめました。
こうしてみると、復帰を果たしているクラブでも圧倒的に抜け出して復帰を決めるクラブはそう多くはなく、J2というリーグ特有の難しさがあるんだなということを実感させられます。
そして、 1年で復帰を決められなかったジェフとヴェルディは結局どっぷりとJ2の沼にはまっていることがよく分かります。
J2での最初の一年が今後の全てを決めてしまう、と考えると、J2というのは本当に恐ろしい場所なんだなと思わされます。
果たして今シーズン、異例の4クラブが降格となる中で、最終節どのようなドラマが起きるのでしょうか…?その答えは神のみぞ知る。
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