注:本記事は新型コロナウイルス感染拡大後の情報を元にしています
【概要】
平塚競技場(レモンガススタジアム平塚)は、1987年開場、神奈川県平塚市にある湘南ベルマーレのホームスタジアム。
以前訪れた時の記事はこちら。
前回からの変化と言えば、ネーミングライツ企業が変わったことにより名前がレモンガススタジアム平塚となったことである。
以前のShonan BMWスタジアム平塚はカッコよかったのに対し、レモンガススタジアムはだいぶカワイイ感じになった。企業名とはいえ、あまりにネーミングの方向性が変わりすぎである。
さて、今回の記事では湘南ベルマーレについて改めて紹介しておきたい。
クラブの歴史は1968年創部された藤和不動産サッカー部にさかのぼる。この時点でプロ化を見据えてサッカー部を作ったというから驚き。
当時としては異例の合宿所を建設したり、栄養士が食事管理をしたり、全国でもずば抜けて恵まれた練習環境だったようだ。
更には日本で初めて「元プロ」選手をブラジルから獲得。
当時プロに対するアレルギーが強かった日本サッカー界からは反発を受けるものの、日本になかったブラジル式サッカーを取り入れ成長していく。
この選手が今なおコメンテーターとして活躍するセルジオ越後である、というのはまた別のおはなし。
1975年にはフジタ工業に転籍しフジタ工業サッカー部と改名、これがのちの湘南ベルマーレの前身である。
この時にはブラジルサッカーが花開き、リーグを3度、天皇杯を2度制覇するなど黄金期を築いた。
まさに日本サッカーの風雲児、だったのである。
1993年のJリーグ開幕時の10クラブ、いわゆるオリジナル10にこそ入れなかったものの、Jリーグに次ぐJFL1部では16勝2敗の圧倒的な成績で優勝。
翌1994年には「ベルマーレ平塚」の名前でJリーグに加入(当時ホームタウンは一つの市区町村しか許可されていなかったため)。
Jリーグでもいかんなく実力を発揮し、2ndシリーズでは2位、そして天皇杯では優勝を飾るなど大暴れ。「湘南の暴れん坊」の異名をとった。
そんなベルマーレで今なお語り継がれる伝説の選手と言えば、1995年に加入したあの選手であろう。
そう、日本が世界に誇る、ヒデこと中田英寿である。
ヒデがベルマーレで過ごしたのは4年であったが、この間の経験は彼にとってもクラブにとっても濃密なものであったようで、ヒデがヨーロッパに行った後も資金難にあえいだベルマーレをスポンサーとなって支えるなどその関係性は今なお続いているようだ。
しかし1999年には親会社であるフジタが撤退。その影響は大きく、リーグで最下位に沈み浦和レッズとともにJ2へ降格してしまう。
2000年には湘南ベルマーレと名前を変え心機一転を図ったものの、その後は2009年までJ2から抜け出せず、かつての名門も苦しむシーズンが続いた。
それでも、2009年にJ1に昇格を果たすと、それからは毎年のようにJ1とJ2を行ったり来たり。
2018年には念願の天皇杯以来となるタイトル、ルヴァンカップを獲得。
以降、かつてのブラジルサッカーとは違うものの、とにかく走って走って走りまくる新たな湘南スタイルを確立しJ1で踏みとどまっている。
リニューアルした湘南の暴れん坊として、これからもJリーグを引っ掻き回していきたいところ。
【アクセス】
最寄まで★★★★☆
最寄はJR平塚駅。人口25万人の平塚市における中心駅。
ネットによる情報によれば、葉山町、逗子市、鎌倉市、藤沢市、茅ヶ崎市、寒川町、平塚市、大磯町、二宮町を湘南と定義すると、その人口は128万人に達する。
これは神奈川県において横浜市、川崎市に次ぐ規模感。湘南は観光都市としてだけでなく、街としても十分に大きいのだ。
最寄から★★★☆☆
平塚駅からは徒歩で25分。
特に起伏はないが、道が狭かったり交差点があったりと意外と時間がかかる。
シャトルバスも運行されているが、特に帰りは道が混むのでそんなに時短にはならないかも。
【観戦環境】★★☆☆☆
今回はバックスタンドからの観戦。実はメインスタンドよりバックスタンドの方がピッチに近いのではないか?と今回思った(メインスタンドからの眺めは前回の記事参照)。
とはいえ、どちらにせよピッチから遠いし高さもないしサッカー観戦には向いていない。
そういや、陸上トラックがいつの間にか青に塗られてて少し雰囲気が変わったなあ。ちょっと湘南の海ぽくていいね。
臨場感は、ぼちぼちといったところ。ピッチの角あたりの席の方が案外ピッチを近く感じられていいかも。
ピッチレベルにずらっと席が並べられているが、あそこから見るとなかなか楽しめそう。
しかしトイレには行きにくそうだ。
サッカーの応援で最もキモとなるゴール裏は、ピッチから遠い、角度がない、座席がないの三重苦。
このスタジアムのゴール裏はかなり過酷な戦いを強いられることになる。
その過酷さはもちろんアウェイも同じ。スタジアムの熱気を生み出す中心であるはずのゴール裏が、このスタジアムにおいては最も疎外されているという悲しい状況。
ビジョンはかなり解像度が高いうえ薄くてコンパクト。かなりいいビジョンを採用しているようだ。
こちらは5年間のリース期間を経て、平塚市に無償譲渡された。ありがとう三菱電機。
バックスタンドにはサッカー用のスコアボードがあるが、角度的にバックスタンドからは見ることができない。
その代わりビジョンに経過時間がデジタルで表示されるので心配ご無用。
バックスタンド入り口の7ゲートは、その背番号にちなんで「HIDEゲート」の名称がつけられている。
中田英寿の魂は今なお平塚で生き続けている。
コンコースには売店もありちょっとした飲食物を購入できる。
おまけ:ビジョンの裏側。こういうの私的には結構好きなんですけど、読者さん的に要りますかね?
おまけのおまけ:しおれたキングベルI世。
おまけのおまけのおまけ:公園にある謎の像。ルフィかよ。
【雰囲気】★★★★★
夕暮れのスタジアムがやっぱり一番好き。試合が終わりに向かってゆく切なさも少し感じてみたりして。
本日もスタジアムMCは地上波でのナレーターも務めている三村ロンド氏。
試合前にグッズ紹介やスタジアムの盛り上げなどをやってくれるのだが、やっぱり話がとてもうまくずっと聞いていられる。
試合前の時間はどうしても暇を持て余しがちだが、それをしゃべりだけで埋められるのはさすがの技術。
私の知る限りJリーグでは唯一?太鼓の達人のようにリズムに合わせて手拍子を煽る演出がある。
これ手軽にスタジアムの一体感を作れてとてもいいと思うんだけどなあ。Jリーグみんなやろうよ。
ちなみにビジョンに映っている後ろのシルエットはわが神奈川県。犬のような形をしているのでわかりやすいのです。
ゴールが決まるとビジョンに楽しい演出映像が映し出される。こういう細かいところまで手を抜かない姿勢がほんと素晴らしい。
Jリーグの全クラブはこのスタジアムを参考にすべきと本気で思っている。
ゴール裏は観戦環境としては過酷なものの、コレオを作るなど一体感がある。
また、他のスタンドから距離的に一歩引いているおかげか、メガホンでそれぞれのスタンドに向かって手拍子での応援をするよう呼び掛けてくれる。
このおかげでどのスタンドにいても躊躇なく手拍子ができる雰囲気作りができているのだ。
悪環境を逆手に取ったポジティブさ、さすが湘南スタイル。
この日はフラッグも配られ、みんなで旗をフリフリ。
タオルマフラーを回したり掲げたりするタイミングも多いので、せいぜい2000円程度だしスタジアム外の仮設グッズショップで購入しておくのがオススメ。
ホーム最終戦ということもあってセレモニーも行われた。
選手入場時の名曲「ビッグウェーブ」~名応援「ラピュタ」~得点時の「We love Shonan」の一連の流れが楽しすぎる。
湘南ベルマーレの応援はどれも名曲ぞろいだ。
スタジアム外には広大な公園が広がっており、サッカーをしたりピクニックをしたり昼寝をしたりみんな思い思いに過ごしている。
サッカーの試合があると知らずに来てソフトクリームを食べながら「今日何かお祭りあるの?」とか会話してるおばあちゃんと孫とかもいてほのぼの。
夜は夜でまたよき。
ただし足元がすごい暗い。転びそう。
【グルメ】★★★★★
湘南と言えば、Jリーグトップクラスのグルメ天国。
別に取り立てた名物グルメのない湘南エリアで、これだけのグルメがそろうのは企業努力のたまもの。
アボカドチーズバーガー。肉汁があふれてきて食べ応えバツグン。
茅ヶ崎メンチ、アジフライ、そして世にも珍しいサメフライ。
このなんどき牧場では各種フライを取り揃えていてそのどれもがおいしい。全種制覇するには一年通い詰めるくらいしないと…。
湘南の数少ない名物グルメのしらす、そして生海苔をのせたピザ。磯の香りが漂ってくるいかにも湘南らしいピザだ。
もう一つ、しらすが入ったホットサンド。チーズも入っていて意外と中身がしっかりしている。おまけのソーセージもうれしい。
このスタジアムではローストビーフやロコモコなどアメリカンなグルメが豊富なのだが、今回はその中から武骨ハンバーグをチョイス。
荒々しいハンバーグはまさに武骨そのもの。
このスタジアム屈指の名物といっていい湘南こっこからあげ。
かなりジューシーでほんのり甘みも感じられおいしいからあげ。とりあえず買っておいて損はない。
スイーツも充実。小田原牧場アイス工房にて足柄茶と足柄いちじくのアイスを購入。
おまけで一口違う味をのせてくれるサービスっぷり。一つで3種類の味が楽しめるとか贅沢すぎ。
小田原周辺地域ではミカンの栽培も有名。このみかんぱんもさっぱり食べられておいしい。
ここまで読んでくださった方にオトク情報。
ベルマーレグルメはとても人気なのでいつも大行列なのだが、実はそれを回避するためにオンラインで予約をすることができる。ディズニーで言うファストパスみたいなもの。
しかも早めに来場すると10%割引になるオトクっぷり。3000円買ったら300円も返ってくるのだ。これは大きい。
やり方も簡単で、簡単な会員登録をしたらメニューを選んでクレジット決済するだけ。これは使わない手はない!
このシステムを生み出した関係者の皆さんには頭が上がらない。いろいろ苦労もあっただろうに…ありがとうございます。
…ただこのシステム唯一の欠点は、並んでいる人からの視線がとても痛いこと。ごめんよ、先にお金払ってるんだよ…。
(なお残念ながらこのシステムは現在終了してしまったとのこと)
【街との一体感】★★★★☆
平塚駅に着くと早速ボードでお出迎え。逆光で見えないけど…。
シャトルバスの運行案内。私は乗ったことがない。
平塚のスポーツ情報が集まった掲示板にももちろんベルマーレ。
ベイスターズのファームもわざわざ出してるんだなあ。平塚でも試合やるからね。
レモンガススタジアムの隣にある、ベイスターズファームの準本拠地の一つ平塚球場はこちら。
マンホールにもベルマーレのロゴ。
ベルマーレ自販機。
試合前にはショーケース展示もされる。
公民館にもベルマーレのフラッグが並ぶ。公的機関にも受け入れられている証拠。
スタジアム周りは工場地帯となっているが、こちらの横浜ゴムの工場には選手ののぼりが並んでいて、
パイロットの工場はサポーターをお出迎え、工場も協力体制だ。
どちらも会社のロゴや文言が入ってるあたりちゃっかりしている。
他にも不二家の工場もあって、甘くいい匂いが漂ってくる。
ネーミングライツを取得したレモンガスもベルマーレとのコラボラッピングバスを走らせていた。
官民全体でベルマーレをプッシュしている姿勢がよくわかる。みんな協力して良い専用スタジアム作れないかな…。
【満足度】★★★★★
スタジアムの環境としてはなかなかに厳しいものがあるが、それを補って余りある「ワクワク感」がこのスタジアムにはある。
実際、私自身行く前日からワクワクして落ち着かないほどだった。そのワクワク感こそスタジアムの楽しさのすべてだ。
ベルマーレのスローガンとして「たのしめてるか。」というのがあるが、私は声を大にして言いたい。
「たのしめてるよ!」と。
索引を作りました!
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