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プロレスはやらせなのか?~プロレスの楽しみ方を考える~【コラムその107】

プロレス界の最大にして永遠の議題…

それが、「プロレスには台本があるのか?」という問題。

 

確かに、プロレスは他のスポーツと比べても極めて異質な存在です。

普通のスポーツであれば、勝敗や試合展開はプレーしている選手ですらコントロールできません。それがスポーツというものです。

 

しかしプロレスでは、どんな選手同士のマッチングでも、おおよそ接戦になります。

芸人アイドル、はたまた狂言師…全く体を鍛えていなさそうな人でも、プロレスラーと試合をするとなぜかいい試合になります。

プロレスラー同士の試合では、時間無制限の試合であってもなぜかちょうどいい時間に決着がつきます。あれだけ鍛えていたら何時間やっていてもおかしくないのに…。

 

そういった光景を見て、「もしかしてプロレスってやらせなんじゃないの?」と思う人がいてもおかしくありません。

そこで今回は、プロレスの楽しみ方を考えてみたいと思います。

 

1.プロレスはやらせなのか

結論から言います。「プロレスはやらせ」です。

いかがでしたか?プロレスがやらせだなんてビックリですね!

でもプロレスはとても人気があります!今後も目が離せませんね!

 

 

 

…やっぱりいかがでしたか系の文章って中身スッカスカやなぁ…。

そんなおふざけは置いといて、プロレスにはブックと言われる用語があります。

これは公にされている言葉ではありませんが「試合の段取り、勝敗」の台本のことを指す隠語です。

すなわち、プロレスには台本があります

 

実際にアメリカのプロレス団体WWEは、プロレスには台本があることを公言しています。

これにはスポーツでなくショービジネスとして登録した方が税制上有利という経営的判断もあるようですが、それにしても台本の存在を明らかにしたことはプロレス界としても大きなターニングポイントと言えましょう。

 

また日本においても、裁判でブックの存在が明らかになった事例もあります。2003年の大仁田厚と渡辺幸正の試合で、大仁田の秘書が取り決めにない蹴りで渡辺を負傷させました。

この裁判で、「プロレスでは、打ち合わせなしに相手を攻撃するのは許されないこと」と裁判官は指摘しました。つまり、プロレスには台本があることが公に認められたわけです。

しかしこの裁判官、プロレスをよく知ってるなあ…。

 

証拠を挙げればきりがありませんが、プロレスには台本がある、というのは暗黙の了解、選手もファンもみんな分かっています。団体として公に認めていない、ただそれだけです。

 

「じゃあなんでプロレスなんか見るんだよ!?勝敗が最初から決まってるなんてつまんねーじゃん!」

 

2.台本の有無は面白さに寄与しない

では冷静に考えてみましょう。勝敗が最初から決まっていようがいまいが、見る側からしたら特に関係ないのではないのでしょうか?

 

どっちが勝つか負けるかは、結局試合を見ないと分からないわけです。そのドキドキ感、ワクワク感は、台本があろうがなかろうが関係ないはずなのです。

 

そりゃ、試合前に「今日は○○が勝つ予定です!」なんて発表されていたら興ざめでしょう。

でもそれは、推理小説のタイトルが「犯人は○○」になっているようなもんで、そんなことしたら冷めるに決まっているのです。

極端に言えば、見る側の目が届かない限り裏で何をやっていようとどうでもいいのです。

 

よく考えてみると、世の中にあふれているエンタメは大体誰かが考えた筋書きをなぞっているのです。

映画やドラマ、小説、音楽、なんだってそうです。映画を見ていて「映画なんて台本があるからつまんないじゃん」とか言っても白い目で見られるだけです。

どちらかというと、筋書きが決まっていないスポーツこそ異質なエンタメと言えるくらいです。

 

「そんなの開き直りじゃん!プロレスはスポーツなんだからやっぱり筋書きがあったら面白くないだろ!」

 

3.プロレスは客をも巻き込んだスポーツである

ここで、改めてプロレスの構造を考えてみることにしましょう。

まず、選手がいます。そして試合を仕切るレフェリーがいます。これらについては、主催者側がコントロールすることができます。

すなわち、前もって動きを決めておくことができます。

 

しかし、一つだけどうしてもコントロールできないものがあります。

それは、観客です。

 

もしかしたら、ある程度は観客の反応を予想することはできるかもしれません。

しかし、そのすべてを前もって完璧に把握しておくなんてことは、できっこないのです。

 

そして観客は、冷酷なほどに正直です。面白ければ盛り上がるし、つまらなければ静まり返ってしまいます。

だから、面白い試合が出来なければ、勝つことができません。言い換えれば、客を納得させられなければ、勝つことを許されません。

そういう意味では、これは立派なスポーツと言えるのではないでしょうか。観客を盛り上げる実力がなければ、試合に勝つことはできないのです。

 

更に観客の存在は、試合にもう一つ大きな要素を持たせることになります。

それは、リアル感です。

 

観客のリアクションを前もって決めておけない以上、そこには必ずアドリブが生まれることになります。

アドリブには、人間の感情をくっきり浮かび上がらせる効果があります。焦り、葛藤、悲しみ、そして喜びなど…。

とっさの時こそ人間の感情があふれ出てしまうのです。

 

だからこそ、選手、レフェリー、そして観客が阿吽の呼吸で一体となった時、その盛り上がりは爆発的になります。その様は、さながらジャズのセッションのよう。

作り物であるプロレスの中にリアルが見えるからこそ、人の感情が揺さぶられるのです。

 

このようにプロレスにはエンタメを楽しむための要素がぎっしり詰まっています。プロレスを全力で楽しめる人は、きっと豊かな人生を送れるでしょう。

今の世の中、ちょっとしたことに本気になりすぎる人が多いなあと思います。そんなに青筋立てないで、気楽にプロレスしようぜ!って言いたいんですけどね。

 

4.まとめ

以上、プロレスの楽しみ方を考えてみました。

プロレス独特のノリがあるのは間違いありませんが、それは例えばお笑いにも通ずるところがあります。バラエティを見ていると、芸人が暗黙の了解にのっとって笑いを作り出していることが多々あります。

芸人にプロレス好きが多いのも納得できます。

 

プロレスは、言ってみれば「大人の本気のごっこ遊び」、そして「肉体を使った究極のエンターテインメントショー」です。

プロレスのノリでみんなが生きていけば、そんなにギスギスした世の中にはならないと思うんですがねえ。

 

 

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