注:本記事は新型コロナウイルス感染拡大後の情報を元にしています
【概要】
渋谷公会堂(LINE CUBE SHIBUYA)は、2019年開場、東京都渋谷区にある公会堂。
初代渋谷公会堂は1964年、在日米軍施設の跡地に代々木体育館、NHKなどとともに作られた。こんな渋谷のど真ん中に米軍施設があったんだなあ…。
さらにその前は大日本帝国陸軍の練兵場があったという、筋金入りの軍事拠点だったらしい。
そんな渋谷公会堂のデビュー戦は、なんと1964年東京オリンピックであった。ウエイトリフティング競技が行われ、三宅義信が金メダルを獲得した。
実はスポーツともとても縁が深い施設なのだ。
↓これが渋谷公会堂なんですなあ。
その後は「8時だョ!全員集合」「歌のベストテン」などの生放送番組のホールとして使われていたが、渋谷公会堂と言えば何より「ロックの殿堂」としての知名度が高い。
浜田省吾、BOØWY、レベッカなど、80年代を代表するようなバンドのライブが行われてきた。
しかし、老朽化のため2015年をもって初代渋谷公会堂は閉館、解体工事が行われた。
すなわち、今の渋谷公会堂は2代目。2019年に完成、Perfumeの公演がこけら落としとなった。
そんな渋谷公会堂をこのブログで紹介するのは、もちろんスポーツ観戦のため。
開場した2019年より、フェンシング日本選手権が行われているのだ。
フェンシングと言えば、日本においてはどう下駄をはかせてもマイナーの域を出ないスポーツであろう。
しかし2008年には、太田雄貴が北京オリンピックで銀メダルを獲得し日本でも大きな話題となった。
そんな太田雄貴が引退し日本フェンシング協会会長となると改革を断行。その目玉が日本選手権の刷新であった。
この大会では最新技術を取り入れた演出も行われ、チケットも二日で完売するなど大きな話題となった。
最近では、タレントの武井壮氏が日本フェンシング協会の会長に就任し大きな話題ともなった。
今回はそんなフェンシング日本選手権を観戦した。
【アクセス】
最寄まで★★★★★
最寄は渋谷駅。東京の副都心の一つで、JR、東急など4社が乗り入れている。
現在でも活発に再開発が進んでいて、流行の最先端の街というイメージは今なお色あせない。
フェンシングの新時代をアピールするには絶好の場所だ。
最寄から★★★★★
渋谷駅からは徒歩5分程度。
渋「谷」という名前の通り、谷にある街のためどこに行くにも坂がある。よくこんなところに街を作ったなあ…。
【観戦環境】★★★★★
コンサートホールであるため、観客が舞台での出来事を見るのに最適化された設計がされている。
一般的なスポーツの試合が行われるスタジアムやアリーナとはやっぱり設計思想が違うのかな、と感じる。
建築の専門知識があればいろいろと違いを読み取れるんだろうな。
また音響もとにかく音が響いて心地よい。剣どうしがぶつかり合う音がこんなに大きく聞こえるのは音響設備のおかげ。
一方で静寂の緊張感が味わえるのも音響設備のおかげ。
スタジアムやアリーナとの分かりやすい違いとしては、通路が少ないこと。
基本的に開演したら終演するまでは誰も席を立たないため、通路の数はそれほど必要ないのだろう。
また席にドリンクホルダーがないのも違いの一つ。
渋谷公会堂の収容人数は2000人を超える。迫力がすごいし、劇場全体が木で作られているのも温かみがあって良い。
もちろんコンコースもとてもキレイだ。
ただ意外とスペースがないので、物販とかは結構狭そう。
【雰囲気】★★★★★
年に一度の日本一決定戦ということもあって、選手皆が感情をあらわにする。
それは雄たけびであったり、泣き崩れるであったり、苦笑いであったりさまざま。
人間がここまで感情をむき出しにするなんて日常ではなかなかないことだし、それを引き出すスポーツはやはり面白い。
そして何より素晴らしいと思ったのが、試合後のインタビューで選手がみな口をそろえて「フェンシングの魅力を広めたい」と答えていたことだった。
日本のスポーツ(特に実業団)でよくありがちなのが、内向きのコメントに終始してしまう(関係者や応援している人に感謝を述べて終わり)という場面だ。
しかしフェンシングにおいては選手、そして協会が「フェンシングを広めたい」という思いで一体となっている。
これは簡単なようでなかなかできることではない。日本フェンシング協会の改革の一端が垣間見える良いシーンであった。
そんなフェンシングの魅力を伝える上で大変面白い試みだと感じたのは、テコンドーの選手とアメフトの選手によるスペシャルマッチ。
正直ただのお遊びだろう…となめていたのだが、そんなことはなかった。
テコンドー選手の長い手足を生かした防御に、アメフト選手のフットワークで挑むという展開は、素人が見ても十分に楽しめる試合だった。
横でフェンシング選手の解説もついて、フェンシングの奥深さも伝わった。
これは広い人脈を持つであろう武井壮会長だからこそできること。この試みは大成功だったと感じた。
もちろん、試合演出も手抜かりなくカッコいい。なかなかスポーツでこんなライティングありませんよ。
ただやっぱり、フェンシングに付きまとう「ルールの分かりにくさ」は課題かなと感じた。
エペ、フルーレ、サーブルと3種類も競技があるうえ、特にサーブルは見ているだけではとても分かりにくいのは正直なところ。
場内で同時に実況と解説をつけられたらベストだが、それでは選手がやりにくいだろうし…。
ただ、せめて試合前に何ポイントで勝利なのか、試合時間は何分かなのかくらいの説明はあってもいいかも。
初めて見る人はそこすら分からないし、それで盛り上がり方も変わってきてしまうので。
最後は記念撮影タイムもあり。勝者も敗者も、この大会を通してフェンシングを広めたいという思いが共通していることはよく伝わった。
おまけ:LINEのキャラクター。
【グルメ】
劇場なので飲食は禁止です。
でも渋谷には飲食店が山ほどあるので大丈夫です。
【満足度】★★★★★
細かい部分での課題こそあるものの、それを補って余りあるほどの「熱意」が伝わる大会だった。
武井会長が「スポーツにメジャーもマイナーもない」と言っていたが、まさしくその通り、どんなスポーツでもその競技なりの面白さ、魅力があるんだなと痛感した。
私自身いろんなスポーツ観戦をしてきて「改革」の旗を揚げたスポーツも数多く見てきたが、そのほとんどが言葉だけだな…と感じるものだった。
しかし少なくともこの大会においては、フェンシング界の改革は根っこの部分からしっかり始まっているなと感じた。
後の問題は、みんながフェンシングに触れる機会をどう作るか、どうやって興味を持ってもらうか、というところになってくるだろう。
フェンシング界の試みは全スポーツ界にとっても興味深いものだと思うし、ぜひとも成功して欲しい。むしろ、これだけいい大会を作って成功しなかったら私が絶望するレベルだ。
このブログがほんの少しでもその一助になればこれほど喜ばしいことはないのだが…。
索引を作りました!
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