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球界の大転換・セパ交流戦を振り返る~「プロ野球が死んだ日」から20年~【コラムその135】

セパ交流戦が始まってから、今年で20年目を迎えます。

そのきっかけは、2004年の球界再編でした。

 

オリックスブルーウェーブと大阪近鉄バファローズの突然の球団合併、ナベツネの「たかが選手が」発言、古田選手会長の、運命のストライキ…。

球界が揺れ続けたあの一年のことは、今でも忘れられません。

 

そんな球界再編ももう20年も前。私にとっては昨日のような出来事ですが、多くの野球ファンにとってはもはや歴史上の出来事です。

 

とはいえ球界再編は悪いことばかりでもなく、これをきっかけに生まれたのが東北楽天ゴールデンイーグルス、そしてセパ交流戦です。

今回はそんなセパ交流戦の歴史を振り返っていきましょう。

 

ここにいたるまでのセパ分裂についてはこちらへ。

sportskansen.hatenablog.jp

1.球界再編~セパ交流戦開幕

かつての球界は大きく二分されていました。

それが「巨人戦があるか、ないか」でした。

 

なにせ1960年~70年代ごろには子どもの好きなものに「巨人、大鵬、玉子焼き」が挙げられるほど、巨人は全国的に人気がありました。

今では信じられないことですが、巨人戦は地上波のドル箱コンテンツであり毎試合中継があったほどです。

いつ頃なくなったのかは私も記憶が定かではありませんが…。

 

それほどまでに人気のある巨人でしたから、こと莫大な放映権が得られる巨人戦は相手球団にとっても喉から手が出るほど欲しい試合でした。

つまりここに「絶対に巨人戦を渡したくないセリーグ」vs「絶対に巨人戦がしたいパリーグ」の構図が生まれたのです。

 

その構図が変わったのが、2004年球界再編でした。

6月13日突如スクープされたオリックスブルーウェーブと大阪近鉄バファローズ合併のニュースは、結果的にプロ野球界を大きく動かすことになったのです。

 

この再編問題では、特にオーナーと選手の対立が浮き彫りになりました。

その問題の核となっていたのが「1リーグ制への移行」でした。

 

球団オーナー側は、「1リーグ8~10球団にし巨人戦を分け合うことで、全球団の存続を図る」という理屈で1リーグ制への移行を強引に押し進めたのです。

そのため、主にパリーグを中心にもう一球団の合併が模索されていました。これが実現していたらプロ野球はどうなっていたことか…。

 

もちろんそれに反対したのは球団合併によって雇用が減る選手たち、そして応援文化が失われるプロ野球ファンでした。

元々選手とファンは利害が一致し共闘していましたが、ナベツネがうっかり「たかが選手が」と言ってしまったことでその団結は強固なものとなりました。

 

結局選手とオーナーの話し合いはもつれ、プロ野球初のストライキに突入。

週末の楽しみが減るファンも選手を非難するどころか応援し、みなで球界を守ろうという一体感が高まりました。

(普通選手の都合でストライキに突入したらファンからは嫌がられるはずなのですが…)


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戦後には球団の合併も頻繁に行われていましたが、それから50年も経ってプロ野球はすっかり日本の文化として定着していました。

それを今さら経営側の勝手な都合で揺るがすことはできない、ということがはっきり証明された象徴的な事件だったのです。

 

そんなこんなで選手とファンは1リーグ制を阻止、こうして新たに生まれたのが東北楽天ゴールデンイーグルス、そしてセパ交流戦でした。

 

元々オーナーの意志で1リーグ制を押していたわけですから、セリーグとしても交流戦をやらないわけにはいかなかった、という裏事情が考えられます。

これで今さら巨人戦をセリーグだけでやるというのは、あまりに道理が通らないですからね。

こうして2005年5月6日、初めてのセパ交流戦が開幕しました。

 

2.セパ交流戦歴代成績

さて、ここではセパ交流戦の歴代成績を見ていきましょう。

 

まず通算成績では、セリーグが1122勝、パリーグ1253勝でパリーグが優勢。

勝ち越し回数もパリーグが15回なのに対しセリーグが3回パリーグが圧倒しています。

 

理由としては一般的にDH制の有無が挙げられていますが、2021年、2022年と続けてセリーグが勝ち越したことからそればかりではなさそうです。

 

続いて球団ごとの通算成績を見ていきましょう。

1位 福岡ソフトバンクホークス   239勝151敗18分 勝率.613

2位 千葉ロッテマリーンズ     209勝182敗17分 勝率.535

3位 北海道日本ハムファイターズ  211勝186敗11分 勝率.531

4位 読売ジャイアンツ       207勝189敗12分 勝率.523

5位 オリックスバファローズ    204勝193敗11分 勝率.514

6位 埼玉西武ライオンズ      199勝198敗11分 勝率.501

7位 阪神タイガース        195勝199敗14分 勝率.495

8位 中日ドラゴンズ        194勝201敗13分 勝率.491

9位 東京ヤクルトスワローズ    192勝208敗8分  勝率.480

10位  東北楽天ゴールデンイーグルス 191勝212敗5分  勝率.474

11位 横浜DeNAベイスターズ      168勝229敗11分 勝率.423 

12位 広島東洋カープ        166勝227敗15分 勝率.422

 

やはりパリーグ勢が圧倒しています。

特にソフトバンクは唯一勝率6割を超えており、シーズン成績として考えても十分優勝ラインを超えている圧倒的な成績です。

通算でこれだけの数字をたたき出せるのは異次元です…。

 

一方セリーグ3連覇も果たしたカープは交流戦ではめっぽう弱く、2023年にベイスターズから最下位の座を譲り受けてしまいました。

実際日本シリーズでも勝てなかったですし、何かしらパリーグとの相性の悪さを感じます…。

 

続いて、通算の個人成績を見てみます。

安打数

1位 鳥谷敬 333安打

2位 栗山巧 328安打

3位 青木宣親 323安打

 

本塁打数

1位 中村剛也 79本

2位 阿部慎之助 60本

3位 村田修一 55本

 

勝利数

1位 石川雅規 28勝

2位 和田毅 27勝

3位 杉内俊哉、涌井秀章 26勝

 

…などなど。

個人記録はまだまだこれから変動が大きそうですね。

 

3.セパ交流戦大会方式の変遷

最後に、大会方式の変遷を見てみましょう。

2005年、2006年は、それぞれのホームとビジターで各チーム3試合ずつ、計36試合が行われる日程でした。

今のプロ野球は1カード3試合を原則とし、火曜日から木曜日、金曜日から日曜日で週2カードを行っていますから、この方式が一番自然です。

 

ところが、2007年から方式が変わります

ホームとビジターで各チーム2試合ずつ、計24試合に削減されてしまったのです。

ファンも選手も週に2カード6試合で慣れていましたから、この変更にはかなりの違和感を覚えました。

 

更に2015年以降は、ホームまたはビジターで各チーム3試合ずつ、計18試合にまで削減されてしまいました。

つまり今の交流戦は、厳密に言えば公平性を欠いている形になってしまっています。

 

なぜこんな形になっているのでしょうか?

理由は表にはなかなか出てきませんが、裏にはやはり先述の「セリーグとパリーグのせめぎ合い」がある可能性は十分考えられます。

 

今やパリーグも十分集客力をつけてはいますが、一方で巨人戦の地上波中継は消滅したものの、なんだかんだ言ってもセリーグの動員力はパリーグに勝っています。

そういった中で、セリーグが交流戦においてパリーグにじわじわと圧をかけている…という可能性は否定できません。

 

もちろん上記はただの空想ではありますが、2004年の事件が忘れられたころにまたもファンを無視した球界再編へ…などということにならないことを祈るばかりです。

 

4.まとめ

以上、セパ交流戦の歴史でした。

今では球界のイベントの一つといった形ですっかり定着したセパ交流戦ですが、改めて歴史を紐解くとプロ野球界においてかなり重要な意味を持つ大会であると言えます。

 

そんな歴史も忘れ去られ、そのまま風化していくとよいのですが…。

悲しい歴史を繰り返さぬよう、ファンも今一度注視していかなければなりません。

 

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