注:本記事は新型コロナウイルス感染拡大後の情報を元にしています
【概要】
市立吹田サッカースタジアム(パナソニックスタジアム吹田)は、2016年開業、大阪府吹田市にあるガンバ大阪のホームスタジアム。
Jリーグオリジナル10の一つ、そして関西を代表するサッカークラブ、ガンバ大阪。
その名の由来はイタリア語の脚を意味する「GAMBA」であるが、もちろん日本語の「ガンバ!」にもかかっている、大変ユニークな名前である。
史上2クラブ目となる三冠を達成するなど、Jリーグをけん引してきたクラブの一つだ。
しかしそんなガンバ大阪が開幕当初から使用していた万博記念競技場は、設備の不足、老朽化、そして陸上トラックがあることによる見にくさが従来より問題視されていた。
同様の事象は日本中のJリーグクラブが抱えている問題でもあった。
そんな中、新スタジアム建設に向けてJリーグの先陣を切ったのがガンバ大阪であった。
2008年、地域行政に頼らない、ガンバ大阪が主導する新スタジアム計画を進めることを発表したのだ。
それまでにも各地で新スタジアム建設の話が出ることはあったが、その多くは自治体に頼るものであった。
そのため当事者ではない自治体がお金と労力を新スタジアム建設に割いてくれることはなかなかなく、計画ばかり先行して建設まで進まない事例が多発していた。
そんな中クラブが主導となって新スタジアムを作るガンバ大阪の事例は、Jリーグにおいて非常に画期的であった。
これに伴い、ガンバ大阪はさっそくスタジアム建設資金を募る団体を設立。企業や団体、そして個人単位でもスタジアム資金を集めることとなった。
しかし前例のない形での新スタジアム建設に際し、吹田市もいくつか厳しい条件を突きつけた。(以下要約)
1.座席数32000席以上、屋根2面付きの新スタジアムを吹田市に物納すること(お金だけ渡すとかはダメ)
2.吹田市は固定資産税以上のお金は負担しない
3.吹田市は将来にわたって修繕費を負担しない
これを見ると、最後まで責任をもってガンバ大阪にスタジアムの面倒を見てもらおうという吹田市の意図が見て取れる。
それだけ新スタジアムを作るというのは大変で負担の大きいことなのだ…。
スタジアム建設によって多少なりとも市の負担が増えることを考えれば、決して理不尽すぎる言い分とは言い切れない。
全国のJリーグクラブにとっては、良くも悪くも肝に銘じるべきモデルケースとなったであろう。
(とはいえスタジアム名称に入っている市立という単語には少々疑念の余地もあるが…)
この影響で建設予定地変更なども検討されたが、最終的には吹田市が受け入れを表明。
2013年起工、2015年竣工と、終わってみればスピード決着となった。
スタジアムを作るのに30年ほどかかったお隣とはえらい違いである。
資金も目標としていた140億円を超えたことからフルスペックでの建設が可能に。
結果的にパナスタはクラブワールドカップやワールドカップアジア予選の試合も行われるなど、日本を代表するスタジアムの一つとして輝きを放っている。
【アクセス】
最寄まで★★★☆☆
最寄は大阪モノレールの万博記念公園駅。
その名の通り1970年大阪万博の跡地に作られた万博記念公園の最寄り駅。
万博の跡地は再開発も検討されたが、当時の大阪市長の強い要望により森林公園として残された。
経済性では劣るかもしれないが、心の豊かさのため公園が市民にとって必需という判断だったらしい。人間にとっての豊かさって何なんだろうな。
そんないろんなことを考えた大阪旅行記はこちら。
最寄から★★★☆☆
改札を出てスロープを降りると階段が見える。これがパナスタへの第一歩。
振り返ると岡本太郎の代表作太陽の塔が早く上れよと言わんばかりに睨んでいる。すみません…。
長いなあ…。
頂上付近から見る太陽の塔とエキスポシティ。
階段を降り始めると左手にパナスタが見えてくる。
階段はきついし距離もあるし、とても気軽に行ける場所ではない。
また駅の真横にある商業施設エキスポシティであるが、
通り抜けてパナスタに行くことはできない。
理想を言えばエキスポシティと一体型のスタジアムだったら最高なのになあ…。
なお、帰りは万博記念公園駅ではなく公園東口駅からモノレールに乗るのがオススメ。
なぜなら万博記念公園駅が鬼のように混むからである。
どう考えてもモノレールの輸送力でこの人数をさばくのは無理がある。
おそらく試合関係なく万博記念公園やエキスポシティに遊びに来た人たちも帰れないだろう。この状況何とかなりませんかね…。
公園東口駅の駐車場を挟んで反対側にあるのが、ガンバ大阪の旧ホームである万博記念競技場。
観戦環境には難があったようだが、立地としては間違いなくこっちの方がいろいろな面で優れている。
まあ大差はないが…。
【観戦環境】★★★★★
とにかく見やすい、その一言に尽きる。
上の方の席だと少し屋根の圧迫感があるが、地球には重力がありボールは下にしか飛んでいかないので問題ない。
芝もめちゃくちゃきれいだし、俯瞰で見られるし、まるでゲーム画面を見ているかのよう。
最高のスタジアムだ。
コーナーキックもばっちり見える。
座席にも非常に角度があり、高所恐怖症の人だったらそれなりに怖いくらいだろう。
もちろんその分見やすいのも確か。
一部なぜか座席が取り外されてるっぽい部分がある。なんで?見えにくいから?
アウェイ側のゴール裏。こっち側の屋根は芝生の養生のため太陽光を透過できるようになっている。
つまりこっちが南ってわけ。
ホーム側のゴール裏。ホーム側だけVIPエリアを無くし上層と下層の一体感を生み出す工夫がされている。
そもそもアウェイは上層に追いやられているが。
メインスタンド。上部にVIP席っぽい部分がある。
バックスタンド。こちらはシンプル。
スタジアム全景。屋根は十分な大きさがあり、この写真の時点では座席全体がきれいに日陰になっている。
また屋根にはソーラーパネルがついており、災害時には発電した電力が活用できるようだ。さすがパナソニックだね。
ビジョンは対角線上に2枚あるが、時計があるのは一つだけ。
なにせパナソニックがついてるもんだから立派なビジョンだ。
サンガスタジアムと同様コーナーには斜めの席があるのが特徴。サンガスタジアムよりは席数が少ないかな。
階段が非常に多かったりして、特に3階以上はかなり複雑な構造となっている。
結局スタジアムの全貌をちゃんと理解することはできなかった。
スタジアムに入ったところのコンコース。
ここにグルメやグッズはほとんど集約されていて、ここをぐるぐる回ることでほとんどの用を済ますことができる。
これはラクチンでありがたい。埼スタとかもこういう風にしてほしいな…。
コンコースからはピッチが見えるのも良い。なんなら試合中にグルメを買いに行ってもいい場面は見逃さない。
でも立ち見はできないようにするためか柵が張り巡らされている。ケチ…。
ゴール裏は省スペースのためか階段がむき出しとなっている。これはこれで面白い。
パナスタはピッチまでの距離が国際Aマッチ開催可能スタジアムでは最短の7mである。
柏の日立台と同レベルで近い。
ここにはガンバが築き上げた栄光の歴史が飾られている。
2014年の3冠は現状Jリーグで最後の達成となっている。
上層部のコンコースは広いがお店は少ない。どこのスタジアムも大体そうだが。
一番上のコンコースはかなり狭い。とはいえ人もそんなに通らない。
上の方に行くと本当に複雑な構造をしていて、自分がどこにいるのかよく分からなくなるほどだ。
コンコースには何やら熱いメッセージが貼られている。勝たなきゃダメらしい。
コンコースから見る外の景色もなかなか良い。隣にはアメフトのピッチなんかもあるようだ。
スタジアム前には子供が遊べそうな遊具がいろいろある。私もたまには童心に帰って遊びたいよ。
スタジアムの裏にはなかなかとってつけたようなVIP GATEがある。VIPの人はこれ喜ぶの…?
【雰囲気】★★★★★
ホームのガンバ大阪はクラブの歴史と太陽の塔を自慢。
一方のセレッソ大阪はクラブカラーである桜ピンクで対抗。
試合前から煽り合い、お互いブーイングでバチバチの雰囲気。
大阪ダービーはこの試合で60回目を迎える伝統の一戦だ。
この試合ではセレッソ大阪が逆転勝利を挙げ、リーグ戦での戦績はガンバから見て23勝7分15敗となっている。
基本的にはガンバがリードしていたが、ここ最近の勢いからしてセレッソが近づいているような印象だ。近いうちの逆転もあるか。
コーナーにはいるんだかいないんだかよく分からないチアリーダーがいる。なかなか影が薄い…。
勝ったセレッソは大盛り上がりで、ガンバ大阪のチャントをもじった「ピンクが大阪~ピンクが大阪~」と歌うなど意気揚々。
一方のガンバは選手に対して抗議のブーイング。試合後もバチバチな大阪ダービーなのであった。
ただJリーグ全体で感じていることだが、やっぱりサポーターの雰囲気以外で楽しめる部分が少ないのがどのスタジアムでも変わらぬ課題だ。
以前コンサドーレ札幌の試合を見に札幌ドームに行った時も記事に書いたことなのだが…。
個人的には清水エスパルスの国立競技場開催試合がこれまで見た中で演出も含めて最高の試合だったと思う。
その肝心の清水がJ2に落ちてるのはまた別の問題。
【グルメ】★★★★★
グルメはスタジアム前の広場にもいろいろそろっていて目移りする。
大阪の池田市がチキンラーメン創業の地であることにちなんだ、チキンラーメンをまぶして揚げたからあげ。
こってり×こってりだが、チキンラーメンのカリカリの食感がなかなかおいしい。
おっちゃんのお客のさばき方にはいろいろ不安を感じたが…(後ろの人はおつり間違われてたし…)。
でもこのスタジアムの本領はやっぱりコンコース内のグルメ。ここにあるものを片っ端から食べていけば大体間違いない。
スタジアム内に2つ3つお店があるのにどこも並んでいる、道頓堀くくるのタコ焼き。
ふわふわとろとろでだしが効いている、ド直球の大阪のたこ焼きだ。安定して美味い。
合わせて焼きそばも購入。具沢山でこれもまた大満足の逸品。てか豚肉デカッ!
とりあえずパナスタに来たらくくるの行列に並んでおけば間違いない。そして全部買え!
その近くで売っていた高槻バーガー。高槻産の食材にこだわっており、バーガーグランプリでも1位になったほどらしい。
写真では伝わりづらいが、これもまた具沢山で大満足のバーガー。
こーりゃうまいわ。
大阪を代表する洋食店のひとつ、YOKOOのグルメがパナスタでも食べられる。
牛カツとたまごサンド、それに数量限定のオムライス!
もしこれらのグルメが売り切れていたりして食べられなかったとしてもあきらめてはいけない。
なぜなら、新大阪駅の新幹線改札口内にあるフードコートにくくるとYOKOOも出店しているからだ。
今回は人多すぎダービーのためか時間のかかりそうなオムライスはそもそも販売していなかったので、新大阪駅で食べた。
バターの香りがふわっと広がり、誰が食べても間違いのないおいしさ。
他にも大阪中のおいしそうなグルメが勢ぞろいで、今後パナスタに何度も行く楽しみができた。
【街との一体感】★★★☆☆
御堂筋線の終点千里中央駅を降りるとガンバ大阪のロゴが目に入ってきた。
更に乗り換えた大阪モノレールの駅にも大阪ダービーの大きなポスターが。
もちろん最寄の万博記念公園駅もガンバ一色。
エキスポシティとガンバはあんまり仲は良くなさそうだが、一応ガンバ仕様のポストなんかはある。
スタジアム内には常設の公式グッズショップがある。試合前後の時間にグッズを購入するには最適。
また帰り際以前のホームである万博記念競技場に向かって歩いていると、消えかかったガンバの絵が道に描かれているのを見つけた。
Jリーグはホームを移転することが最近増えてきているから、元のスタジアムの近くにこういう残骸みたいなものがあるのが散見されるようになってきた。
いいことなのかどうかは分からないが…。
もちろん、伝統の大阪ダービーはテレビでも大きく取り上げられた…。
と言いたいところだがコメンテーターもあんまり興味はなさそうで、それより阪神タイガースの試合の方が3倍くらい時間をかけてじっくり取り扱っていた。
そもそもガンバ大阪は大阪の北摂地域をホームにしていて、大阪市や堺市といった政令指定都市をホームとしているセレッソ大阪とは対照的だ。
もちろん北摂地域の方が田舎寄りであることは言うまでもない…。それでも165万人近くは住んでいるのだが。
そして何より、ファンでなければガンバが勝とうがセレッソが勝とうが興味がわかないという問題もあろう…。どっちも大阪を名乗ってるからね。
この2チームの因縁なんかをテレビで紹介したらもうちょっと注目度上がるんじゃないかな。そもそもテレビ見る人も減ってるだろうけど。
【満足度】★★★★★
スタジアムの試合の見やすさ、グルメなど満点の出来だったし、ダービーならではのバチバチの雰囲気もまた楽しいものであった。
ただ、結局それはJリーグをよく知る熱いファンばっかりが集まっているからなんじゃないかな、という危惧も少し感じた。
やっぱり関西の文化として十分すぎるほどなじんでいる阪神タイガースとはまだまだ雲泥の差があるかな…。
もちろん、熱いファンがいっぱいいるからこそこれだけスタジアムがいっぱいになって盛り上がってるのも間違いないんだけどね。
スタジアム内外の大阪ダービーに対する温度差が今後に向けてもちょっと気になるところではある。
索引を作りました!
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