つい30年前まではプロ野球しかなかった日本のプロスポーツ。
しかし90年代になってJリーグが開幕、さらに2010年代になってBリーグが開幕するなど、プロスポーツはほぼ各都道府県に一つ以上はあるほどの広がりを見せるようになりました。
日本においてスポーツは新しい産業として可能性を見せています。
しかし、なぜプロスポーツは存在するのか?存続していくにはどうすればよいか?
今後のためにも、プロスポーツの存在意義を改めて考えてみたいと思います。
1.利益を生み出せるから
まずはなんといっても、利益を生み出せるからでしょう。
よっぽど社会に対して害悪な存在でない限り、利益を生み出せれば存続できます。
プロ野球は企業の広告塔の役割を担っていたため赤字でもなんとか存続できていましたが、コロナ禍まではしっかり利益を生み出せるほどにビジネスとして成長していました。
親会社のない広島以外はしっかりとした企業の後ろ盾があるのでコロナの赤字もそれほど打撃にはなっていないですし(痛いけど)、広島も3連覇で儲けてお金をためていたのでとりあえず大丈夫みたいです。
もちろん、ずっと続いたらまずいでしょうけどね…。
また利益を出せるスポーツ、で忘れてはならないのが公営ギャンブルですね。いわゆる競馬、競輪、競艇、オートレースの類です。
これらはコロナで利益が減るどころか増えるほど好調なので、おそらくは安泰そうです。ネットで買えるようになったのが大きいでしょうね。
一方で、戦後すぐくらいは反社会的勢力が取り仕切っていたりして治安が悪化し、つぶれたところもあります。
また純粋に利益を出せずにつぶれたところもありますし、ここ最近でもつぶれています。
公営ギャンブルはそのビジネスモデルゆえ市民に愛される存在にはなりづらく、利益を出せないと存続理由がなくなってしまうのがつらいところですね。
2.市民に心身の豊かさをもたらすから
では利益を出せなければすべてつぶしていいかというと、それはそれで困るのです。
例えば道路、学校、公園、図書館、警察、消防などは、利益は生み出さないものの必要なものばかりです。
もしこれを誰もやらなかったら、道路はガタガタで放置され、勉強はすべて自分でやり、物を盗まれても自力で盗み返すしかなく、火が出たら自分で消すしかありません。
ですから税金を使ってこれらの「市場の失敗」というのを埋め合わせているわけですね。
すなわち、市民に支持され、必要とされていれば、例え赤字を出していても税金を投入してもらえます(限度はあるけど)。
チームを応援することで生活が楽しくなったり、あるいはチームの地域貢献活動でスポーツに対する愛着が芽生えたり形は様々ですが、いずれにせよスポーツに税金投入してもいいよってみんなが思えばいいのです。
言い換えれば、日本は民主主義国家なので、スポーツの存続、あるいは税金の投入に賛同を表明している市長や議員が当選すればよいのですね。
ただし上のお金のプラスマイナスと違って市民の支持は数字で見えづらいうえ、それがちゃんと政治の世界に反映されるかどうかは極めて難しい問題でしょうけどね。
3.そのどちらも出来ない場合はどうするの?
では、利益も生み出せず、かといって市民の支持も得られていないチームがあるとしたら…?
スポーツ好きとしてあまりこんなことは言いたくありませんが、そんなチームは消えてしまうのだと思います。
思えば、野球でも、サッカーでも、バスケでも、それ以外でも、歴史の渦に巻き込まれ消えていくチームはいくつもありました。
その中にはチーム消滅自体が社会問題にもなったものがありますが、そういったチームは大体経営側の勝手な都合が絡んでいますから、自然消滅とは言えません。
一方で、話題にもならずひっそりと消えていったチームも数多あります。
実はそういったチームこそ、悲しいかな本当の意味で誰にも必要とされていなかったのかなと感じてしまいます。
ではどうすればチームの消滅を防げるのか?方法はいくつもあると思いますが、私の思うものを挙げていきたいと思います。
1.利益を生み出せるよう改革するor徹底的にコストカットする
一番わかりやすいのは、お金的にとりあえず問題のない状態にすることです。
黒字になっているか、あるいは多少の赤字でも自治体の財政を圧迫することがなければ、そんなに文句を言われることもありません。
しかしスポーツビジネスで黒字を出すというのは、並大抵の努力でできることではありません。
スポーツで成功しているどのチームを見ても、大体血のにじむような努力をしていますし、もちろん一朝一夕でできることではありません。
では徹底的にコストカットをしてとりあえず生きながらえるようにすればいいかというと、これも考え物です。
私も名前を挙げるのは控えますがそういった方向で運営しているチームの試合を見に行ったことがありますが、はっきり言って面白くはなかったです。
だって、プロスポーツなのに上を目指してないんですもの…。
夢を与えるはずのスポーツで、ひたすら現実を見せられたら寂しくなりますもん…。
地域貢献という意味ではそういうチームもないよりはマシと言えるのかもしれませんが、なくなったところでさほど悲しまれない、という一番悲しい状況になるでしょう。
そういうチームも過去にはありましたね。誰にも話題にされてないですけどね…。
2.市民の支持を得られるよう頑張る
そうでなければ、税金を使わせてください!と市民を説得するしかありません。
しかし、これこそ大変難しいことです。市民の評価はお金のように定量的に目に見えるものではないからです。
この点において、バスケに比べるとサッカーは格段に難易度が高いと思っています。
何せ、
・施設の公共性:バスケのアリーナ>サッカーのスタジアム(アリーナはなんにでも使えるがスタジアムは基本サッカーだけ)
・施設の建設費:サッカーのスタジアム>バスケのアリーナ(スタジアムはとにかくデカい)
・施設の維持費:サッカーのスタジアム>バスケのアリーナ(芝生の養生が大変)
・試合の頻度:バスケ>サッカー(バスケは週に2~3試合、サッカーは週に1試合)
・人件費:サッカー>バスケ(サッカーの方が選手やスタッフの人数が多い)
などなど、不利な要素が大変多いのです…。市民の理解を得るためのハードルは大変高いです。
それゆえ、バスケチームはなんとなーくでもそれなりに生き残っていけますが、サッカークラブはしっかりと必要とされるだけの魅力を打ち出さなければいけないのです。
こればっかりは競技の性質上どうしようもないので、その分努力していくしかありませんね。
3.行政に頼らないよう民間で運営する
最近のトレンドとして、行政に頼らない運営、というのがあります。
とはいえ全く頼らないというのはなかなか難しいのですが、例えばガンバ大阪のパナソニックスタジアムのように、クラブが主体となって資金を集めスタジアムを作り上げた、という事例があります。
またテゲバジャーロ宮崎も、その主要株主である株式会社エテモントが費用を捻出し小規模ながらもスタジアムを作っています。
身銭を切ってスタジアムを作ったという意味では、映画「フィールドオブドリームス」に近いものがありますね。
とはいえ、もし行政に頼らないとしても、やっぱり後ろ盾として強力な大企業はつけておきたいところです…。何かしらの資金源は必ず必要ですから。
4.いずれにせよ時代や環境に適応できなければ廃れていくのみ…
とまあいろいろ方法を挙げては見たものの、どれも本質的な解決法とは言えません。
結局は時代や環境に合わせてしっかりとやるべきことをやる、ということが一番大事だと考えています。
例えば、2015年に当時の大阪市長橋下徹が人形浄瑠璃を執り行う文楽協会への補助金をカットしたことで大きな話題となりました。
その是非についてはあえてここでは言及しませんが、文楽がなかなか新しいお客さんを獲得できなかったことがその口実となってしまったことは確かです。
その一方で、歌舞伎なんかはワンピースや鬼滅の刃を題材にして若い人たちにも来てもらおうと努力しています。
残すべきところは残す一方で、変えるべきところは勇気をもって変えていく努力も必要なのは、どの分野においても同じことですね。
4.まとめ
以上、プロスポーツの存在意義、そして生き残っていく術について考えてみました。
もちろん私自身はスポーツビジネスのプロでもなんでもないのでただの戯言と思って聞いていただいてもよいのですが、しかし現実として地方空洞化が進む今、プロスポーツチームが生き残っていくのはますます困難になっています。
スポーツも敏感に時代を読み取りながら、しぶとく、そして時には強かに生き残ってほしいと思います。でないとこのブログの意味がありませんから。
このブログではスタジアムやアリーナの楽しさという一面しか見ておりませんが、しかしそれは確かに地域の活力になるはずだと確信しております。
是非とも楽しいスタジアム・アリーナを作り上げ、地方活性化の一助にしてほしいですね。
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