一般的にスポーツ選手と言えば、単一競技の選手であることが当たり前です。世界的にもそれが普通のことでしょう。
日本では特に武士道的な精神があるからか分かりませんが、スポーツ選手=職人のような求道者、というイメージが持たれがち。例えばイチローのように。
ところがアメリカにおいては、二つ以上の競技をこなすマルチスポーツ文化があります。
もちろん全員が全員というわけではありませんが、それでも場合によっては季節ごとに異なるスポーツをこなす選手もいるほど。
そこで今回は、アメリカのマルチスポーツアスリートをご紹介します。
ボー・ジャクソン(野球&アメフト)
まずは野球とアメフトの二刀流、ボー・ジャクソン選手。現時点で唯一MLBとNFLの両方のオールスターに出場した唯一の選手です。
高校時代から野球とアメフトの両方で頭角を現していた彼は、ニューヨークヤンキースの指名を蹴りアメフトの奨学生として大学に進学。
野球では打率4割越えの記録を残す一方で、アメフトでも大学の最優秀選手を獲得、さらには短距離走の選手としてオリンピック候補になるなど、あまりにマルチすぎるスポーツの才能が開花します。
その後野球とアメフトの両方でプロ入りした彼は、前述の通り両方のオールスターに出場するほどの選手になるまでに成長。
特に野球のオールスターではMVPを獲得する活躍を見せています。
ちなみに彼の中では野球こそが自分の夢であり、アメフトの方は趣味のようなものだったようです。普通趣味ではオールスターに出られないですけどね…。
しかしその趣味のアメフトででん部に大けがを負ってしまい、その活躍は長くは続きませんでした。
とはいえ野球選手としては通算141本塁打を放っていますし、アメフトの選手としても持ち前の身体能力で主力として活躍しました。
そのド派手な現役生活とは逆に引退後はのんびり過ごしているらしく、スポーツとはきっぱり縁を断ち本当の趣味であるハンティングを楽しんでいます。
非凡な身体能力とは裏腹に派手な生活はあまり好まないようです。
ディオン・サンダース(野球&アメフト)
続いても野球とアメフトの二刀流、ディオンサンダース選手。
こちらは野球のワールドシリーズとアメフトのスーパーボウルの両方に出場した唯一の選手です。これまたとんでもない記録ですね…。
高校時代はアメフト、野球の他バスケで活躍し、この時はMLBのカンザスシティロイヤルズから指名を受けるも大学へ進学。
サンダースも大学でアメフト、野球、そして短距離走の選手として活躍。サンダースもジャクソンもあまりに身体能力が高すぎて陸上界からも誘いを受けたのでしょうか…。
サンダースの方は「フットボールは私の妻であり、野球は私の愛人である」とし、アメフトの方を優先する選手生命を送りました。ジャクソンとは真逆の思考で面白いですね。
それゆえアメフトでは一流の選手として結果を残したものの、野球では悪くはないが良くもない、ぼちぼちな感じで終わりました。
それでも大けがもなく長年活躍し、俊足を生かしてジャクソンをはるかに上回る通算186盗塁を記録しています。
また性格もジャクソンと正反対で派手なスーツに宝石じゃらじゃら、チームメイトともしょっちゅうもめていたようです。
引退後もラッパーとして活動するなど派手な言動は相変わらずとのこと。同じような成績を残していてもこうも正反対なことがあるんですねえ…。
エディ・アルバレス(野球&スピードスケート)
続いてはちょっと変わった二刀流、野球とスピードスケートの両方でオリンピックメダルを獲得したエディ・アルバレス選手。
彼は7歳からローラースケートをはじめ、一度はケガの影響で野球をプレーしたものの再びスケートに戻り、アメリカ代表に選ばれると2014年のソチオリンピック男子5000mリレーで銀メダルを獲得しました。
そのままスケート選手としてのキャリアを送ると思いきや、ソチオリンピック後再び野球に転向、そのまま野球に専念します。
ホワイトソックスとマイナー契約を結ぶもなかなかメジャーへの昇格はできませんでしたが、マーリンズへトレードされた後コロナの影響で大幅に枠の空きができたところで晴れてメジャー昇格。
中々に運のよさも持ち合わせています。
2021年の東京オリンピックにはアメリカ代表として出場、二塁手として大会のベストナインにも選ばれ、決勝では日本に敗れるも見事銀メダルを獲得します。
史上初めて野球選手が夏と冬のオリンピックメダルを獲得するという快挙でした。
現状野球の方では目立った成績を遺せていませんが、二種類のオリンピックメダルを持っているだけでもすごいことです。
おまけ:マイケルジョーダンやウサイン・ボルト
二刀流と呼ぶかどうかは微妙なところですが、誰もが知るバスケットボールのスーパースターであるマイケルジョーダンは選手引退後野球への挑戦をしたことがあります。
これはアスリートとしての限界を試すためというより、強盗事件で殺害された父親の夢を果たすための挑戦だったと言われているようです。
実際、突如バスケを引退したのも父親の死が大きく影響しているようです。
結局メジャーには昇格できなかったものの、マイナーで打率2割、ホームラン2本を記録し、一応野球選手としての証は残せたようです。
長距離移動用に4000万円の大型バスを購入して球団に寄付するなど、スーパースターとしてのふるまいも見せていました(もっとも、移動が苦痛で耐えられなかったのが大きな要因のようですが…)。
また、アメリカでもありませんが100m走の世界記録保持者ウサイン・ボルトのサッカーへの挑戦にも触れておきましょう。
彼は言わずと知れた世界最高のスプリンターですが、陸上を始めるまではサッカー少年で子供の頃はマンチェスターユナイテッドにあこがれていました。
現役引退後にはオーストラリアのクラブに練習生として参加し、先発出場した試合で2得点を挙げるなど活躍を見せました。
プロ契約の話も持ち上がるほどには評価されましたが、結局オファーを断りサッカー選手になることはありませんでした。本気でやっていたらどうなっていたのか、興味深いところではあります。
まとめ
以上、アメリカの二刀流アスリートを紹介しました。
マルチスポーツがそれなりに定着しているアメリカでも二刀流で活躍できる選手はほんの一握りなことを考えると、やっぱり本当に才能があり努力した人だけが二刀流になれるんだなと感じます。
とはいえ大谷選手のように日本人でも二刀流できる人もいるわけですし(骨格は日本人離れしてるけど…)、少なくとも子供のうちにいろいろ挑戦してみるのは悪いことではないでしょう。
日本人アスリートの可能性がもっと広がるといいなあと思います。
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