注:本記事は新型コロナウイルス感染拡大後の情報を元にしています
【概要】

長野県松本平広域公園総合球技場(サンプロ アルウィン)は、2001年開場、長野県松本市にある松本山雅FCのホームスタジアム。
前回訪れた時の記事はこちら。
以前訪れた段階では、堂々のJ1の舞台で戦っていた松本山雅FC。
しかしいつの間にか、J3にまで転がり落ちてしまっていた。
その間一体何があったのか?
2度目のJ1挑戦となった2019年シーズンは堅守こそ発揮したものの、得点力不足が浮き彫りとなり得点数はリーグ最下位。
順位こそ辛うじてジュビロ磐田を上回ったものの、2度目のJ1挑戦も1年で終わってしまった。
それと同時に、8年続いた反町監督体制も終焉。
以降監督もコロコロ変わるようになり、快進撃を続けた松本山雅の迷走が始まってしまう。
J2降格から2年後の2021年シーズンには、リーグ最下位に終わりまさかのJ3降格。
J1からJ3へ転がり落ちたクラブは、この時点で大分トリニータに続いて2クラブ目となってしまった。
内部で何があったかはなかなか読み取れないが、以下の動画が本当ならかなりの混乱に陥っていたことが分かる…。
果たして雷鳥は再び頂を目指せるのか。
松本山雅の現状を、現地で観戦することにした。
【アクセス】
最寄まで★★★☆☆

最寄はJR&アルピコ交通松本駅。長野県で2番目の乗降客数を誇る松本市の中心駅。
ただ長野駅と違い新幹線が通っていないので、新宿から特急あずさで2時間半以上かかってしまう。
とはいえ他に特急しなので名古屋に行くことも可能で、時間はともかくアクセスが特別悪いわけではない。
もちろん高速バスも充実しているので、遠征時にはぜひ活用したい。
帰りにあずさを使った旅の記録はこちら。
最寄から★☆☆☆☆

松本駅から徒歩3分の松本バスターミナル9番乗り場から、スタジアムまでの無料シャトルバスが出ている。
頻度は20分に1本くらいあるので、時間を気にする必要はない。

無料とはいえ路線バスに詰め込まれるようなこともなく、スタッフさんも丁寧でバス乗り場の案内も試合情報など充実。
なぜ無料でこんなにサービスがいいのか、どこからお金が出ているのかと不思議だったが、会社の宣伝と地域貢献も兼ねているのかな、とふと思った。
松本での移動は便利なアルピコ交通、アルピコ交通をぜひご利用ください。

バスターミナルからはおよそ30分の長旅。アルウィン最大のネックか…。
そもそもJリーグを想定していなかったのだろうし、この立地は仕方がないところ。

道中は田園風景が続き、途中では何やら発掘作業が進んでいた。
そのうち有名な遺跡になる…かもしれない。

到着してからアルウィンまでは若干歩く。
山の空気を吸いながらちょっとしたハイキング気分でこれもまた良き。

隣に空港がある影響で、それ用の設備もある。
空港が置けるくらいの場所だからこそスタジアムがあるのかもしれない。
ちなみに信州まつもと空港は日本で最も標高が高く、かつ内陸県では唯一の空港とのこと。
実は非常に珍しい空港である。

この辺はパークゴルフ?ができるらしい。
まったくもって緑豊かなスタジアムである。

左に見えるのがスタジアム。ゲートによって道順が微妙に違う。

帰りももちろん大量のバスが並んでいる。
J3になって観客が減った影響で、幸か不幸かバスには乗りやすくなった。
【観戦環境】★★★★★

なにせワールドカップのキャンプでチラベルトが絶賛したほどのスタジアムだ。
見やすいことこの上ない。

臨場感もばっちり。
スタジアムの最前列でも少し高さがあるようには感じるが、その分試合は見やすいかもしれない。
あまりに近すぎてグラウンドレベルになると、かえってサッカーの試合全体は見にくくなったりする。
スポーツ観戦は近ければいいってものでもないのだ。

オフサイドラインってこうやって見えるのか…。

スタジアム全体が見られる角度から。
空港が隣接する影響でフィールドは掘りごたつ式に低くなっており、照明も低く設置されている。
バックスタンドの照明の上に屋根をかぶせたらそれなりに雨や日差しも防げそうだが、そういう単純な話ではないのだろうか。

よく見ると、バックスタンドの前にグラウンドレベルの座席が設置されていることが分かる。
運営側もスタンドに高さがあることはちょっと気にしているらしい。マネタイズできるところはしないとね。

唯一屋根がついているメインスタンド。
雨を考慮するとなるべくここの席を取っておきたい。

よく見ると照明がランダムな方向を向いていて面白かった。
ち密な計算の元配置されているのだろうか?

個人的にちょっと怖かったのがこちらの階段。
よく見ると微妙に段差の高さが違う。
転びまではしなかったが、油断してたり足腰の悪い人だと十分転倒の恐れがある。ご老人の多い松本だとなおさら…。
一応つかまれる手すりがあるとはいえ、要改善。

こちらが熱気を生み出す松本山雅サポーター側スタンド。ホーム側にビジョンがついているのは珍しい。
前の方が座席、後ろの方が立見席という設計になっている。
前が立見席なのは日立台などがあるが、逆になっているのははこれまた珍しい構造。

ビジョンは解像度が高くキレイ。
緑色のSUNPRO ALWINの文字がカッコいい。

反対側もビジョンがない以外はほぼ同様の構造。
松本山雅はサポーターが多いため、アウェイサポーターは隅っこに追いやられがち。

こちらがメインスタンドのコンコース。若干狭いので人が多いと少し混雑する。

外はのどかな風景…。

ビジョンの裏側、すなわちゴール裏はこちら。
このスタジアムで一番見栄えがする場所…かな?でもなんでビジョン側をホームにしているのかは不明。
とはいえスタジアムの正面だしこっちを松本側にするのが自然か。


スタジアムの角のスペースは、グッズやグルメ、イベントブースがそれぞれ設置されている。
ついでにトイレもある。

反対側のゴール裏はこちら。ビジョンがない分シンプルな見た目。

メインスタンドの入り口はこちら。
スタンドの真下が関係者用の駐車場になっているので横にゲートがある。

スタジアム自体の入り口はこちら。
やっぱりSUNPRO ALWINの文字がカッコいい。

バックスタンドの手前側。選手の顔がずらっと並んでいる。

奥に進むと階段になっている。
このスタジアムの特殊な地形が垣間見える場所。

ここからもやっぱりのどかな良い景色。
いかにも松本らしい風景だ。

ゴール裏のゲート。一番松本山雅色が強い。

やっぱりここが一番見栄えが良い。

この公園には信州スカイパークの愛称が付けられている。

文字通り、飛行機もたびたび飛び立っていく。
山に囲まれた立地でありながら、空の玄関口でもある。

もちろん試合などお構いなしに飛んでいく。

ここでただのんびり過ごすだけでもいい一日を過ごせるだろう。
もうちょっと晴れていたらなあ…(山に囲まれているせいかアルウィンで太陽をまだ見たことがない)。

一方、こちらでは何やら育てているらしい。
噂によれば、時折牛のにおいもするのだとか…(いい匂いではないだろう…)。
【雰囲気】★★★★★

スタジアムに展示されているのは、2018年芝生を張り替えた際のストーリー。
どれだけアルウィンが愛されているかがよく分かる。

試合前から気合十分の松本山雅サポーター。

そしてとにかく選手との距離が近い!
それは物理的な距離はもちろん、心理的な距離も近いのだ。
スタンドから選手に声援が飛ぶし、選手もそれにこたえる。近所のサッカーのうまい兄ちゃんをみんなで応援しているくらいのノリである。
これぞ市民クラブの完成形だ。

どうやらスタッフの中に相当なエヴァンゲリオン好きがいるらしい…。

全員で手を挙げたり…

全員で「ONE SOUL」と声を合わせたり…

立ち上がってタオルを掲げたり…

タオルを回したり…。
座席の位置に関係なく、年齢、性別も全く関係なく、観客全員が全力で闘うという姿勢を全身で表現する。
たとえ降格しようとも、観客が半分ほどに減ってしまっても、この一体感はJリーグの中でも未だずば抜けている。
その執念たるや、もはや畏怖の念すら抱くほどだ。一体何が彼らをそこまで駆り立てるのか。
もちろん信州ダービーなどの特別な試合では観客が1万人を超えることもあるし、減ったと言えどJ3の中では今なお圧倒的な観客動員を誇っている。
もはや松本と山雅はイコールの存在であると言っても過言ではない。松本に住むということは、山雅を応援するということなのだ。
ただ言い方を変えれば、「閉塞感」はなくもない。
山に囲まれ、都会から遠く離れた松本だからこそ敵を跳ね返すパワーが生まれたとも言えるし、一方でよそ者が入りにくい空気もやっぱり少しだけある。
もしかしたらそれこそ松本山雅がJ1に昇格した理由であり、J3に降格した理由なのかもしれない。
松本山雅が変化を恐れず外部からの風を受け入れられるようになった時、きっとまた爆発的な力を発揮するだろう。

その圧倒的な一体感で選手を文字通り後押しする。
J3はおろかJ1にもこんなスタジアムはなかなかないし、普段J3で戦っている相手は絶対やりにくいだろう。
またJリーグでは正直似たり寄ったりなチャントも多いが、松本山雅のチャントはオリジナリティも高い。
それが90分途切れることなく、しかも迫力を維持しながら続く。これはJリーグの中でもほぼ唯一くらい。
わざわざ足を運んででも聞きにくる価値のある応援だ。

ゴールを奪った時の盛り上がりもまた格別なものだ。
スタジアム全体が沸騰する。

空が暗くなると松本山雅サポーター、そしてSUNPRO ALWINの文字がよりくっきり浮かび上がる。

暗い中緑に光るピッチがまたいいんだ…

エンドが変わると、今度は声援がボールを押し返す向きとなる。
これまた相手はやりにくい雰囲気だろう。


松本の空は漆黒の闇へ。

個人的に真っ暗なアルウィンが一番映えて好き。

そんなアルウィンで山雅は勝利を収めた。
このまま雷鳥のごとく、くじけずに頂を目指してほしい。


光の演出がこれまたすごい。
アルウィンは一体感だけでなく、スタジアム演出も一級品だ。

最後は選手と喜びを分かち合う。
選手のダンスが若干ダルそうだったのがちょっと気になったが、普通に考えて試合終わった後ダンスするのもキツイよな…という気持ちもある。

試合後のゴール裏。

試合後のスタンド。

バス乗り場から見たアルウィン。
空が闇に包まれてもなお、煌々と光り輝いていた。
【グルメ】★★★★★

スタジアム外には随所にキッチンカーが出ている。
こちらはバックスタンド前の芝生広場。

こちらは肉のあづみ野屋さんの信州牛串。対戦相手の地域に合わせた牛串も販売している徹底ぶりだ。
もちろん信州牛が安いので特にこだわりがなければ信州牛でよい。
肉汁がギュッと詰まっていて、味付けは塩コショウで十分。アルウィンに来たら必ず押さえておきたい定番グルメ。
余裕があれば対戦相手の牛串と食べ比べしてみるのも面白いだろう。

こちらのお店では山雅ビールを販売している。
スタジアムの随所で山雅ビールが販売されていて、アルウィンきっての名物と言える。

こちらが山雅ビール(泡は飲みました)。
ビールに緑のリキュールを入れたもので、キリンビールが開発したという結構ガチな商品だ。
ビール特有の苦みが軽減され、かなり飲みやすい一杯となっている。
スタジアム各地で売っているので、見かけたら試しに飲んでみよう。

バックスタンドの目の前にもキッチンカーがある。

こちらはロイヤルスウィートバニラ。
ジョンレノンをして「こんなにおいしいソフトクリームは食べたことがない」と言わしめた、軽井沢伝説の逸品。
色からしてとてもバニラとは思えないほど濃厚。
実際のところこれが世界レベルで美味しいのかどうかはよく分からんが、ジョンレノン伝説も含めて味わうのがきっと正しい楽しみ方。

すずらんハウスでは、駒ヶ根ソースカツ丼をイメージしたソースカツ棒を入手。
こういうB級グルメは名前だけだったりしてあんまり期待できないのだが、ちゃんと肉がしっかりしていてボリュームも十分、かなり満足できる一本だった。
しかしソースカツ丼って発想的にはすごくシンプルなせいか、日本全国に名物をうたっている場所がある。
一体果たしてどこが本家なんだろう…?

このスタジアムではメインスタンドもグルメが充実。
多くのJリーグスタジアムではキッチンカーがメインになりがちだから、スタジアム内でもおいしいものが食べられるのはありがたい。

信州ポークを使ったソーセージセット。
個人的にはもうちょっとパリッとしてる感じが欲しいが、肉汁もあるし山雅ビールのお供には最適。

そして最後は、信州名物山賊焼が入った山賊バーガー。
バンズが緑に染まっているが、何が練りこまれているのだろうか?食べにくい山賊焼をワンハンドで食べられるのはスタグルとしてうれしい工夫。

そしてこちらには、クラブ名の由来となった「喫茶山雅」がある。
山雅はアルピニストのオーナーが開業した喫茶店で、登山ができない時期の運動としてサッカーを始めたのが松本山雅の始まりである。
1965年に開店した同店は再開発に伴い1978年に惜しまれつつ閉店したが、2017年にクラブ事業の一環でめでたく復活となった。
そんな優雅な歴史を感じながら、喫茶山雅を味わうのもアルウィンの大きな楽しみ方の一つと言えよう。
【街との一体感】★★★★★

スタジアム近くにはもちろん松本山雅応援自販機がある。
このくらいは序の口だ。

駅を降りると早速お出迎えの横断幕。
これを見ると松本に着いたという実感がわく。しかし昔はJ1サポーターの皆様、だったのにな…。

駅の展示コーナーの最も目立つところには松本山雅のブース。
信州松本の誇り。

駅前のバス乗り場には、松本山雅の夏フェスを宣伝する幕がずらり。
単なるクラブの宣伝でなく、イベントの宣伝というのがいかに松本山雅がこの地に根付いた存在なのか分かる。

松本バスターミナルにはナゾの山雅だるまがあった。
何でも山雅って書いておけば売れるらしい。

松本駅前のホテルにはユニフォームが。
通常のユニフォームと違い胸にアルピコ交通と書かれている。





街中には松本山雅マンホールだらけ。
10個あるらしいが半分しか見つけられなかった。まだまだ未熟です…。


街中にはポスターがいっぱい。
こういうのはクラブがお願いするパターンと自発的に貼っているパターンがあると思うが、おそらく松本は後者が多いだろう。
知らんけど。

このお店なんかは1枚じゃ足りず2枚も貼っている。

こちらは信州ダービーのポスター。
何があっても松本は長野だけには負けられない、負けてはいけない。





行けども行けども「私たちの街には松本山雅FCがある」の文字だらけ。
「この街には横浜F・マリノスがある」に似ている。

こちらがクラブの名前の元になった喫茶山雅。
もちろん喫茶店として営業しているほか、グッズショップも兼ねている。

こちらの焼き鳥屋さんには熱いメッセージ。

試合後来たらメッセージが書き換えられていた。
松本流のSNSなのだろうか…。

こちらのお店では山雅ビールが飲めるらしい。
街中でこういうの飲めるのうらやましいな…。

こちらのパントリーマルナカは信州名物牛乳パンも売っているパン屋さんだが、松本山雅もサポート中。
牛乳パンはタイミング悪く売っていなかったのでくるみパンとみそパンを購入。おいしかったです。

何気ない写真館にも松本山雅のタペストリー。
毛細血管のごとく、松本の街中に行きわたっている。

こちらは明治安田生命の松本支社。
JリーグのタイトルパートナーだけあってJリーグを全推し中。ここはビジネスも絡んでいる。

こちらはイオンモール松本。
テレビ松本のコーナーでは松本山雅情報を無限ループで放映中。
テレビ松本ではなんと番組どころか松本山雅専門チャンネルまであるらしい。一体何を放映しているのか気になる。

個人的にはこういう地域の掲示板にポスターが混じっている光景が好き。

もちろん街中にも自販機がある。

スーパーの中でも、松本山雅牛乳が販売されている。
前来た時も見たから、みんながよく買う定番商品なのだろう。

そんなスーパーにも熱いメッセージが貼られていた。
普通こんなの貼っても誰も読まないが、読まれるからこそここにあるのだ。

なんと長野駅で松本山雅商品が販売されていた。
信州の企業はAC長野パルセイロにつくか、松本山雅FCにつくか運命の選択を迫られている…。
【満足度】★★★★★
カテゴリーこそJ3に落ちてしまった松本山雅だが、スタジアムや街の一体感は未だに健在であった。
とはいえ観客は減ったし、街の勢いもJ1の頃よりは落ち着いていることは事実である。
松本山雅が消えてなくなる…ということはさすがにないだろうが、どこかで回復しなければこの先に待っているのは緩やかな衰退でしかない。
松本山雅復活のカギは「変化を受け入れる勇気」を持てるか否か…ひとえにそこにかかっている。
「雷鳥は頂を目指す」―不屈のスローガンを胸に秘めて。
索引を作りました!
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