注:本記事は新型コロナウイルス感染拡大後の情報を元にしています
【概要】
日立柏サッカー場(三協フロンテア柏スタジアム)は、1985年開場、千葉県柏市にある柏レイソルのホームスタジアム。
レイソルサポーターの間では「日立台」と言えば通じる。
もともとは1986年、日立製作所サッカー部が東京都小平市から千葉県柏市に移転するのに合わせて作られたスタジアム。当初は収容人数5000人の小さなスタジアムだったようだ(今も大きくはないが)。
1993年Jリーグが開幕すると、クラブは日立FC柏レイソルと名前を変えJリーグ参加を目指すことになった。
それに合わせてこの柏サッカー場も改修されて大きくなったのだが、それも当初は暫定的な措置に過ぎなかった。
というのも、もともとは柏の葉公園総合競技場にホームスタジアムを移す予定だったためである。
が、現在もなお柏レイソルのホームはこの日立柏サッカー場のままである。それにはいろいろ複雑な事情があるようでして…。
①アクセスの便が悪い
日立柏サッカー場は柏駅から徒歩20分であるのに対し(こちらも別に便がいいわけではないが)、柏の葉競技場はつくばエクスプレスの柏の葉キャンパス駅から徒歩25分かかる。
しかも柏駅から柏の葉キャンパス駅は乗り換えを含んで15分ほどかかるため、柏市民にとってはまあまあの距離なのだ。
②観戦環境が悪い
日立柏サッカー場はその名の通りサッカー専用スタジアムであり、ピッチと座席の距離がJリーグでもトップクラスに近い。
またコンパクトなスタジアムでもあり観客全体の一体感も生まれやすくなっている。こういった独特なスタジアム形状が柏レイソルというクラブの雰囲気の醸成に一役買っているのだ。
一方の柏の葉競技場は屋根があるのはいいものの、陸上トラックがあるためにピッチとの距離が遠かったり、座席に角度がないため後ろの席から見にくかったり、決してサッカー観戦に快適な環境ではないのである。
せっかくの日立柏サッカー場というJリーグ屈指の名スタジアムがあるのに、わざわざ柏の葉競技場を使う理由はない、というわけだ。
③経営上のメリットが薄い
実は日立柏サッカー場は、Jリーグで唯一クラブ本体が所有しているスタジアムだ(ガンバやジュビロなどは正確にはクラブの所有物ではない)。個人的にはこういうスタジアムがもっと増えるといいと思うのだが…。
なので、スタジアムの利益はすべて柏レイソルのものになる。一方の柏の葉競技場は千葉県が所有物であり、使用の際にはいくばくかの使用料を支払う必要がある。
こういった理由が重なり、さらにサポーターからのホームスタジアム移転に対する大きな反対もあって、結局現在もなお柏レイソルのホームはこの日立柏サッカー場となっている。
それでも、柏の葉競技場も開場した1999年からしばらくは大きな観客動員が見込める試合に限定して使用されていた。
しかし日立柏サッカー場が増築・改修を完成させたこともあり、2009年からは一切の試合を日立柏サッカー場で開催している。
というわけで、つぎはぎしながら作られたこの日立柏サッカー場は、紆余曲折ののち現在もなお柏レイソルの聖地として君臨し続けているのである。
【アクセス】
最寄まで★★★★☆
最寄はJR、東武野田線の柏駅。かつては千葉県でナンバーワンの乗降客数を誇る駅であった(現在は4位)。
ちなみに写真のようなペデストリアンデッキは現在では一般的だが、日本で初めて導入したのがこの柏駅である。
最寄から★★★☆☆
柏駅からは徒歩20分ほど。シャトルバスなどは運航していないので、基本的にはみな歩くことになる。
写真は駅からスタジアムへ伸びるレイソルロード。ここまで辿り着ければ迷わないが、駅からレイソルロードが微妙にわかりにくいので注意。
レイソルロードの終点には柏レイソルのマスコット「レイくん」の銅像と交番。
この交番に勤務している人?かは分からないが、警察の方が交差点の交通整理をされており大きな混乱は見られなかった。
写真の通りレイソルロードはただの狭い住宅街の道なので、交通整理をしないと色々大変なことになってしまうのだ。
公園の入り口には大きく目立つ「WELCOME TO KASHIWA」の看板。
ホーム柏サポーターはこのまままっすぐ、アウェイサポーターは左の道を進む(図の通り)。
日立柏サッカー場は非常に狭いため、柏サポーターとアウェイサポーターがしょっちゅうもめ事を起こしていた歴史があった。
そのため現在ではゲートからスタンドまで別々の導線を作って、サポーター同士が交わらないようにしている。
公園内は道もまともに整備されておらず、地味にスタジアムがどこにあるのか分かりにくかったりする点は注意。
ちなみに公園内にある体育館は、Bリーグのサンロッカーズ渋谷の練習拠点である。柏レイソルもサンロッカーズ渋谷も日立製作所が源流となっているためだ。
実際Bリーグが発足する時、サンロッカーズ渋谷も柏に移転する話もあったほどである(Bリーグ開催に見合う体育館が確保できず渋谷になったが)。
なんだかんだでサンロッカーズ渋谷のホームになった青山学院記念館はこちら。
【観戦環境】★★★★★
このスタジアムの一番の特徴と言えばピッチまでの近さ。とにかく臨場感がすごい!
ちなみに、この席でバックスタンドの最上段である。多分日産スタジアムあたりだったら最前列でもここより遠いぞ。
見比べてみたい方はどうぞ。
目の前にボールが来ると、ボールを蹴りだす音、選手同士がぶつかり合う音、そして掛け声など「サッカーの音」を心行くまで楽しむことができる。
コロナでチャントがなくなってからはよりそれが顕著になったように思う。
ただ一つ気になることがあるとすれば、あまり座席に角度がないので前の人の頭が気になってしまうくらいか。
この時は一席ごとに空けていたが、満席になったらちょっと苦労するかも。
正面がメインスタンド。
スタジアムができた経緯からその都度その都度拡張していくような状態だったため、メインスタンドが3つに分離しているのが特徴的だ。
中央がメインスタンド、向かって左がホーム柏サポーターのスタンド、右がアウェイサポーターのスタンド。
ここまで露骨にホームとアウェイで設備が違うスタジアムもなかなか無いだろう。
そしてこちらが柏サポーターのゴール裏、通称「柏熱地帯」。1階部分は立見席になっている。
ゴールまでの距離の近さもあり、選手にかかる圧力も相当なものだろう。
もちろんこの日は声を出しての応援は禁止だが、ボールが近づいてくると特に1階部分のサポーターはスタンドの作りが鉄筋であることを生かし、足踏みしてダンダカダンダカ威嚇してくる。足踏み禁止、というルールはないので全く問題はない。
実際、相手チームはディフェンスラインでのボール回しをミスって失点してしまった。足踏み効果もあったに違いない。
見てる私は床が抜け落ちないかヒヤヒヤしていたが(笑)
こちらがバックスタンド。飲み物ホルダーなどはないので気をつけよう。
黄色一色に染まったバックスタンドはなかなかに壮観である。
そして向こう側に見えるのがアウェイサポーターのゴール裏。ゴール裏の格差もなかなかにすごいものがある。
そのゴール裏もちゃっかり黄色にしちゃってるのが面白い。
続いてスタジアムの作りを見てみよう。まずはメインスタンド。
このスタジアム唯一のまともなメインスタンド。屋根の下で快適に試合を見たいなら、メインスタンドの上側を選ぶしかない。
そしてこちらが柏熱地帯。本当に席しかない、きわめてシンプルな構造になっていることが分かるだろう。
そしてそのシンプルさが極限にまで表現されているのがバックスタンド。本当に席しかない(笑)
元々暫定的に使う予定のスタジアムだったためか、とにかくシンプルで、一切の無駄をそぎ落とした構造となっている。
席のおかげで、その下は日陰になっている。スペースは広くないので、真夏は大変そうだ。
トイレや売店など一通りはそろっている。
なお、ビジョンは非常に小さい。
どうやら日立はこういった大型ビジョンを作っていないため、どうしても他社製品を使わざるを得ず、結果非常に小さいビジョンになっている、とのことだ。
日立台のためにも、ぜひ日立さんにはこの事業に参入していただきたいところである。んで競馬場ぐらいのでかいビジョンを作ってほしい。
ちなみにバックスタンドの真横にもピッチがある。普段レイソルの選手たちはここで練習している。
おまけ:テレビカメラはメインスタンドの上から撮影しているが、ただの屋根に見えるけど安全性とか大丈夫だろうか…。
【雰囲気】★★★★★
とにかく黄色一色。スタジアムも黄色なら、お客さんも黄色。その一体感だけでも楽しいというものだ。
またこの日はアウェイサポーターもなしで試合が行われたが、相手選手の挨拶にも拍手で答えたり、汚いヤジもなかったり、少なくとも私の見る限りでは大きなマナー違反もなく快適に試合を見ることができた。普段は知りませんが
そんなこのスタジアムで観戦をしながらふと思ったことがある。もしかしたら日立台は柏レイソルの存在理由そのものなのではないだろうか。
正直に言えば、千葉県柏市というのは人口も多くそれなりに商業圏としては発展しているものの、東京のベッドタウンという側面が大きく、とりたてて特徴のない街であることは事実である。
そんな中でなぜ日立台にレイソルサポーターが集うのかと言えば、この日立台が楽しすぎるからではないだろうか。
東京での仕事に疲れたサポーターが休日黄色いユニフォームを着て、この手作り感満載の日立台に集い、仲間とともに戦い、ともに笑い、ともに泣き、酸いも甘いも分かち合う、それこそが柏レイソルなのだろう。
だからきっと、柏の葉競技場に移転してしまったら柏レイソルに似た何かになってしまうのだと思う。これからも日立台は柏レイソルとともにあり続けるのだ。
老朽化だけはちょっと不安だけど。
ちなみに、この日は柏レイソルが5-1で快勝した。なお、筆者はフクアリで同じ千葉をホームとするジェフ千葉が1-5で敗戦する試合も観戦している。
同じ千葉県でレイソルとジェフの5-1の試合を生で観戦したのは日本でも私くらいのものだろう。多分。
【グルメ】★★★★☆
普段はどれほどのお店があるのか分からないが、この日は屋台が3つ、スタジアム内にもいくつかお店がある。
私は基本的に屋台でしか買わないけど。
柏にあるから揚げ専門店侍の、その名も「かしわのからあげ」。500円と安価ながらボリュームたっぷりで、非常に満足できる一品。
もちろん味もカリカリの衣にジューシーな肉汁で大変美味しい。
こちらは日立台名物、レイソルカリー。キーマカレーみたいな感じ。
味は…まあ普通くらいかな…。650円なので特に文句はない。
でもそんなニコニコで「ARIGATO」とか言われちゃったらなあ。食べた甲斐があったなあって思っちゃうよね。
【街との一体感】★★★★★
駅前にはレイソルの大きなポスターがあり、
街中には多くのレイソル自販機が設置され、
商店街にはレイソルのフラッグが垂らされ、
中華料理屋さんはレイソル一色となっている。
これ以外にもレイソルが勝利するとサービスしてくれるお店もあったり、道中のおじいちゃんおばあちゃんがレイソルの話をしていたり、柏という街に根付いているというのを強く感じる。
こういった活動が実り、とうとう柏駅のメロディーに柏レイソルのチャントが使われることになった。
このチャントは元々インディーズバンド、バックドロップシンデレラの「さらば青春のパンク」という曲なのだが、レイソルのチャントとして有名になったことがきっかけでとうとう「突き進め柏」バージョンとして歌詞を変更したバージョンも歌われた。
インディーズバンドの曲が駅のメロディーにまで出世したのは間違いなく柏レイソルの影響だ。
【満足度】★★★★★
とにかく、日立柏サッカー場は柏レイソルの、柏レイソルによる、柏レイソルのためのスタジアムということに尽きるだろう。
そりゃあ、日本代表戦のような大きな試合をやる立派なスタジアムではないかもしれない。
でもみんなで作り、みんなで育て、そして2011年にはJリーグ優勝まで成し遂げた、みんなの思い出がたくさん詰まったスタジアムなんだ。
だから、それでいいじゃないか。日立台のために柏レイソルがあり、柏レイソルのために日立台があるんだ。これまでも。そして、これからも。
そしてこの日立台を舞台に柏から世界へ!
索引を作りました!
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