注:本記事は新型コロナウイルス感染拡大後の情報を元にしています
【概要】
長崎県立総合運動公園陸上競技場(トランスコスモススタジアム長崎)は、1969年開場、長崎県諫早市にあるV・ファーレン長崎のホームスタジアム。
御多分に漏れず、ここも1969年長崎国体のために作られたスタジアム。日本のスタジアムと国体は切っても切れない関係にある。
1991年には日本vs韓国の国際Aマッチが開催されたこともあるらしい。別に当時から国立競技場とかあったと思うのだが、なぜ長崎でやったのかは不明。
またJリーグに所属していた横浜フリューゲルスは九州を第二のホームタウンと位置付けており、長崎でも試合を行っていたようだ。
ただフリューゲルスは無くなってしまったし、Jリーグも原則ホームタウンでしか試合ができなくなったので、おそらく今後はないだろう。
2013年には2度目の国体開催、そしてJ2リーグにV・ファーレン長崎が参加するのに合わせて大規模な改修が行われた。
そのため歴史の長い競技場ではあるが、改修されてだいぶ新しい施設へと生まれ変わっている。
そんなV・ファーレン長崎に大きな転機が訪れたのは2017年のことだった。
この年資金不足が発覚し、経営危機に陥ってしまったのだ。入場者数を上乗せするなど不適切な報告もいろいろ見つかってしまったらしい。
ここで助け舟を出したのが、地元長崎の企業ジャパネットたかたであった。
ジャパネットはV・ファーレン長崎を完全子会社化し、創業者である高田氏が自ら社長に就任したのである。
さらにこの年2位となりJ1昇格を果たすと、勢いに乗ったV・ファーレン長崎とジャパネットは長崎市内に新スタジアムを作る計画を立ち上げた。
このスタジアムは2024年9月の開業を目指しており、スタジアム以外にもBリーグ長崎ヴェルカのホームアリーナ、そして商業施設も含めた複合型のスタジアムシティとなる予定。
日本でも類を見ない、長崎がリードする新しい形のスタジアムとなりそうだ。
一方、始まりもあれば終わりもある。
新スタジアムに移行するということは、こちらのスタジアムは使用頻度がガクッと減ることになる。というかほぼなくなるだろう。
ということで、ホームスタジアム移転前に一度諫早のトランスコスモススタジアム長崎を訪れることにした。
【アクセス】
最寄まで★★★☆☆
最寄はJR、および島原鉄道の諫早駅。
島原鉄道で遠征してくる人はほとんどいないと思うが、JRでは長崎県内で2番目に利用者が多いターミナル駅の一つ。
とはいえ長崎空港には駅が無いので空港からの足はバスしかないし、2022年に開業した西九州新幹線も現状武雄温泉と長崎駅にしか行けないのであまり意味がない。
一応新幹線を使えば長崎から10分で来れるので、地元の人は少し来やすくなったのかもしれないが…(でも高い)。
そんな諫早を観光した旅行記はこちら。
最寄から★★★☆☆
諫早駅からは徒歩30分弱。まずは駅を出たら大通りを右にまっすぐ。
V・ファーレン長崎ののぼりに沿って行けばよい。
セブンイレブンの前にまでのぼりが立っている。なかなかスゴイ。
途中ではV・ファーレン長崎のおもてなしコーナーがあったりして、ちょっとした食べ物を配ってもらえたりもする。
道中は急坂というほどではないが地味な起伏があって、歩くのは行きも帰りもちょっと大変ではある。
長崎は坂の街…というが、諫早も若干はそうらしい。
横には時折西九州新幹線が走っていく。お客さんはまだあんまり乗ってないかな…。
東京まで行けるようになったら一度は新幹線で来てみたいかも。
地味に途中の道が分かりにくいが、基本的にはのぼりとこの青とオレンジの目印を信じて歩いて行けばいいらしい。
スタジアムの目の前には内村記念アリーナがある。
諫早市出身の体操選手、内村航平を記念した体育館である。
中にはちょっとした展示コーナーもあるが、肝心のオリンピックメダルは置いていなかった。
一番見たかったのに…。
【観戦環境】★★★★☆
見やすさとしては標準的な陸上競技場くらい。構造は川崎フロンターレのホーム等々力に若干似ているような気がする。
長崎の教会をイメージしたという屋根がついていて、雨の心配はほぼいらない。日差しは場合によっては不可避だが…。
またドリンクホルダーがない、座席がちょっと狭い、通路が少なめといった不便さもなくはない。
とはいえ改修されているおかげで、全体的にはキレイで快適なスタジアムになっている。
コンコースも広くて歩きやすい。
コンコースはグッズによる規制はあるものの一周ぐるっと歩くことができ、私のようにスタジアムをうろうろしたいヘンな人にもとてもやさしい。
バックスタンドのあたりは木が近く、自然を身近に感じることができる。
ただなぜかコンコースにグッズやグルメの売店がないのはちょっと寂しい。外に行けばいいだけなんだけど。
こちらのメインスタンドは長崎の出島を意識した構造となっているらしい。
この角度から見ればその形状がちょっとは分かるかな…?(逆にここ以外だと全然分からない)
大型ビジョンはアウェイゴール裏に一枚。適度なサイズ感。
スタジアム周りは自然もあって憩いの場となっている。
ランニングしている人も多数。
【雰囲気】★★★★☆
客入りは5000~6000人ほどで、J2リーグとしては平均かそれよりやや多いくらいか。
諫早が長崎からはそこそこ離れていることを考えれば、だいぶ頑張っている方だろう。
コーナーキック時には「入・れ・ろ!」のコールとともにタオルを回す。
チャンスの時はこれくらいわかりやすい方がいいね。
多くの人がユニフォームやタオルなどのグッズを身に着けていて、選手入場時にタオルを掲げたりゴール時にはどわっと盛り上がったり。
こういったスタジアムの一体感はなかなかのものだ。場所柄ご年配の方が多そうだが、かなりおらが町のチーム感が強い。
見事勝利し、カンターレに合わせてタオルを回し喜びを分かち合った。
試合が終わるとすぐさまタオル販売のアナウンスもあり、商魂のたくましさも垣間見えた(褒めてる)。
またV・ファーレン長崎の応援で忘れてはいけないのが「V-ROAD」である。
V-ROADは、もともとFUNKISTというバンドが2013年に長崎に呼ばれたとき、試合前に勝手に作った曲が始まりである。
2017年に経営問題が浮上したときにサポーターがこの曲をチャントとして取り入れ、それを知ったFUNKISTが「V-ROAD」として曲を完成させた。
更に翌年高校野球の長崎代表となった創成館高校がこれを応援歌として使用し、その対戦相手だった下関国際高校も応援歌に…という形で、高校野球の応援歌としてもすっかり定着した。
そんな感じで全国的に知名度が高まったV-ROADだが、その発祥はV・ファーレン長崎なのである。
このあたりの話はバンドの人がそのままブログに書いているので間違いない。
時間ごとに移り行くさまを見るのもスタジアムでの観戦の楽しみ。
夕陽が見られればベストだったな。
帰り際のスタジアムも好き。
【グルメ】★★★★★
主にメインスタンド前にキッチンカーがずらっと並ぶ。
もちろん長崎ちゃんぽんリンガーハットもお店を出している。
この日一番の行列になっていたのが、松浦市のブースで販売されていたアジフライ。
なんでもアジの水揚げ量日本一を誇るとのことで、最近は市を挙げてアジフライの聖地松浦を掲げているらしい。
そんなアジフライがこちら。
揚げたてではなかったのがちょっと残念ではあったが、アジフライによくある変な臭みもないし、骨とかも無くてとても食べやすいし、なるほどこれはおいしい。
もし見つけたら絶対に買いですね。
こちらはたこ野郎さんのミックスセット。たこ焼きとはちょっと違って天ぷら風にしているっぽい。
他にも島原特産のジャガイモを使ったじゃが天(実はジャガイモの生産量で長崎県は全国2位、そして長崎はジャガイモ伝来の地と言われている)、
そして海岸線が日本で2番目に長い長崎県において盛んな水産を生かしたかまぼこ天など、割と長崎の食材がこのひとパックに詰まっている。
こりゃ食べ得だ。
そして長崎名物の一つ、岩崎本舗の角煮まんじゅうも食べられる。
角煮まんじゅう発祥のお店だけあって外れのない、安定したおいしさ。
暑かったのでレモネードも飲んだ。さっぱりしたおいしさ。
全体的に長崎の食材や名物がとても充実していて、ここだけで長崎の食をかなり抑えることができる。コンパクトで選びやすいのもまた良い。
遠征しに来た人にはとってもありがたいね。
【街との一体感】★★★★★
諫早駅のコンコースには早速横断幕やのぼりがある。これらは本当に街中いろんなところにある。
この街に来てこののぼりが目に入らないということはおそらくない。
駅の商業施設ではマスコットのヴィヴィくんがスタジアムまでの案内をしている。
諫早駅にかかっている垂れ幕にも、名物の一つとしてV・ファーレン長崎の選手らしきイラストが描かれている。
権利の関係か、若干文字はごまかされているが…。
諫早駅の2階には、一番目立つところにV・ファーレン長崎とめでたくB1昇格を果たしたBリーグの長崎ヴェルカのグッズショップがある。
V・ファーレン長崎と長崎ヴェルカのは一蓮托生の関係だ。
なんと長崎空港にも同様のお店がある。
空港にこういうグッズショップがあるのは非常に珍しいことだ。普通はお土産屋さんでいっぱいいっぱいだから……。
もちろん街中にのぼりが立っている。
マンホールも並べて置かれている。
諫早の有名店竹野鮮魚店にも両チームのポスターが貼ってあった。
街中のどのお店を見てもポスターが貼ってある。すごい。
スタジアムに向かう途中の諫早神社には、なんとV・ファーレン長崎の絵馬も置かれている。
ジャパネットたかたの高田社長のメッセージが一番中央に書かれている。
諫早市役所の前にも「悲願達成行くぞJ1!」の熱いメッセージが。
市役所前の駐車場にはこれでもかというほどののぼりが立っている。
誤発注しちゃったんじゃないかっていうくらいの数である。
アーケード街にももちろんV・ファーレン長崎。
スタジアムまでの道中には対戦相手のフラッグまで掲げてあった。
これ毎回変えてるんだったら大変だな…。
スタジアムまでの道中はV・ファーレンロードとなっており、新幹線とスタジアムの写真がデカデカと貼りだされている。
スタジアム前には来場100万人記念のモニュメントなんかもある。
本当に諫早全体でV・ファーレン長崎を応援している雰囲気が伝わってきた。
でも、長崎の新スタジアムに移行したらこの光景はどうなるんだろう?という不安もちょっとあったりして…。
【満足度】★★★★☆
全体的にすごく頑張っているのが良く分かるし、1シーズンとはいえJ1にまで昇格した理由もわかるような気がした。
一方で、スローガンとして「すべてをJ1レベルに!」を掲げている通り、J1でバリバリやっているクラブと比べるとまだ足りない部分があるというのも分からないでもない。
やっぱり諫早は長崎から遠いし、スタジアムの立地も街中とはいいがたいのもその一因ではあると思う。
そうなると新スタジアムによって本当の意味でのJ1レベルに引き上げることができる、新スタジアムがその最後のピースになる可能性は十分にあるだろう。
いずれにせよ長崎スタジアムシティ構想はJリーグのモデルケースの一つとして、日本中から大きな注目を集めている。
ぜひとも成功させて、日本中に同様の施設を作る道筋をつけてほしいところだ。
一方で去ることになった諫早市も市を挙げて応援しているだけにちょっと寂しいところではあるので、年に何試合か諫早でやるのもありかも…とは思う。カップ戦とかね。
あと蛇足だけど、個人的にはジャパネットにもっと出しゃばって欲しいと思っていたり…。
試合前にジャパネット風のグッズ紹介したりとか、対戦相手の紹介したりとか(VTR作るの大変そうだけど)、いろいろやったら面白そう。
そういう方向での出しゃばり方ならスタジアムも盛り上がってよさそうだと思うけど、いかがでしょうかね?
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