注:本記事は新型コロナウイルス感染拡大後の情報を元にしています
【概要】
太田市運動公園市民体育館は、1981年開館、群馬県太田市にある群馬クレインサンダーズのホームアリーナ。
この体育館がある太田市運動公園は陸上競技場、野球場や武道場などを備えた公園で、太田市民にとってスポーツのメッカとなっている。
そんなこの体育館をホームとする群馬クレインサンダーズは、2011年にbjリーグに参入したプロバスケチーム。
bjリーグ時代は特に目立った実績を上げることはできなかったが、Bリーグが開幕するとB2リーグに参加。
すると初年度、いきなり東地区優勝を果たす。昇格には届かなかったものの、Bリーグ開幕初年度にして飛躍のシーズンとなる。
翌年は地区3位に終わったものの、Bリーグ3年目となる2018‐19シーズンには再び東地区優勝。さらに準優勝を飾り、ついに念願のB1リーグ昇格圏内に入る。
ところが、ここで障壁となったのが財務問題だった。2年連続で赤字を計上してしまい、B1ライセンスを取得することができなかったのである。
結果、優勝した信州ブレイブウォリアーズとともにB1ライセンスを取得できず、優勝・準優勝チームともに昇格できないという異例のシーズンとなった。
そんなわけで、このシーズンはこのせいで色々なチームの昇降格に影響を及ぼした。
ともに昇格できなかった信州ブレイブウォリアーズ。
おかげで繰り上がりで昇格となった島根スサノオマジック。
しれっと降格を免れた横浜ビー・コルセアーズ。
リベンジを果たしたい翌年、好成績を受けてか筆頭株主としてオープンハウスがつくことになる。このおかげもあってか財務関係も改善。
更に当時は前橋市の前橋市民体育館をホームとしていたのだが、これを改修する目途がついたことでB1ライセンスを取得することができた。
ところが今度はコロナの影響でシーズンが中断。その時点でチーム史上最高成績を上げていたものの、さらに上位に入っていた信州、そして広島が先に昇格してしまう。置いてけぼりを食らってしまったわけである…。
しかし翌年、敵がいなくなった群馬は年間たったの5敗、勝率9割越えという驚異的な成績を残し、圧倒的な強さでB1への挑戦権を手にした。
更にホームアリーナにも大きな変更があり、ホームタウンを前橋市から太田市へ変更したうえで太田市運動公園内にできる新アリーナ「OTA ARENA」へ移転することが決まった。
群馬クレインサンダーズを観光資源として活用したいということで、太田市も、そしてオープンハウスもかなり本気で取り組んでいるようである。オープンハウスの参入を機に群馬に大きな追い風が吹き始めた。
今回はその移転前となるこの体育館での試合を観戦し、移転前の様子を見てみることにした。もちろん移転後にもう一度訪れる予定である。
【アクセス】
最寄まで★☆☆☆☆
最寄は東武鉄道小泉線の竜舞駅。無人駅ではあるがちゃんとSuicaを使える。
ただ問題なのは、小泉線自体が1時間に1本程度しかない点だ。時間によっては、コンビニもないこの駅でただただ1時間待たされる可能性がある。
最寄から★★★☆☆
竜舞駅からは徒歩20分ほど。左に見えるSUBARUの工場沿いに歩いていけばたどり着く。
また特急も止まるターミナル駅の太田駅は体育館から歩いて40分ほどなので、場合によっては太田駅まで歩いていくのも一つの方法だ。
しかし群馬の車社会を改めて実感させられるアリーナである…。地元の人は車で行くからこれでいいかもしれないが、遠くから遠征してきた人にはもう少しアクセスの手段があった方が助かる。
太田駅から体育館までのシャトルバスは、太田アリーナ開業までには絶対に運行して欲しい。
【観戦環境】★★☆☆☆
古い体育館ではあるが、床をシートで覆ったり舞台に大きなビジョンを置いたり、なるべく非日常空間を作ろうという努力が垣間見える。しかし大きな問題があって…
2階席の前2列までは、手すりが邪魔でプレーがよく見えないのである。うーむこれはちょっと…。
また1階席もいすが置いてあるだけなので、後ろの人は前の人の頭でよく見えないだろう。高さ的にどうしようもないのだろうが。
この体育館を作った時はこういうのは想定してなかったんだろうなあ…。
しかしこれはクレインサンダーズの人たちに文句を言うわけではないが、この体育館を設計した人はここに手すりあったら邪魔で見えにくいだろうなとか、ちょっとは想像しなかったのかな…?
それももう時効だろうからしょうがないが…。こうなるとがぜん太田アリーナの完成が楽しみになる。
しかしリボンビジョンもあり、手すりが邪魔問題以外はすごく頑張ってアリーナの雰囲気を作っている。
引きで見るとこんな感じ。すごい頑張ってる感はよく伝わってくる。
しかし試合の見やすさで言うとまともに見られる席はかなり少ないように思う。
しかし今回一番感心したのがビジョンのデカさ。これだけ大きいビジョンはBリーグでもなかなか見られない。
各選手のファウル数、得点数が一目でわかり、それぞれの選手の状況が一発で把握できる。
こんなビジョンはBリーグでもほとんどなく、非常にわかりやすくてよい。もちろん試合演出の煽り映像も映し出され、アリーナ全体を盛り上げてくれる。
コンコースはこんな感じで、試合中継用のカメラなどがひしめき合っている。とてもBリーグを運営するのに向いているとは言えない状態だ。
【雰囲気】★★★★★
試合開始直前の煽り映像が非常にかっこよく、グッと惹きつけられた。こういうところをおろそかにしない姿勢はとても好感が持てる。
個人的に、試合前の煽り映像にこそチームが集客にかける意気込みがすべて詰まっていると言っても過言ではないと思っている。ここでお客さんの気持ちを高ぶらせないとね。
群馬クレインサンダーズでは、チアリーディングの代わりにダンスチームが活動しているようだ。
ダンスは学校授業にも取り入れられているから若い人にもなじみがあるし、Dリーグというダンスのリーグ戦もできたくらいなので、時代の流れを取り入れているのかなーと感じさせる。
何より、男女混合であるところにとてもビックリした。なるほど、これが本当のジェンダーフリーというやつか…。
試合演出自体には何か特筆するようなものはないが、音の大きさのバランス、選曲のセンス、MCが観客を煽るタイミングなどどれもこれも完璧でどんどんお客さんが巻き込まれていった。
強いて言えば、群馬クレインサンダーズらしい文化があればベストかなとも思ったが、これほどまでに洗練された演出があるならそれは野暮というものか。
お客さんを盛り上げるべく、演出はかなり緻密に計算されているのだろう。キャパシティーの関係でお客さんは少なくなってしまうが、それを感じさせないほどの盛り上がりだった。
関係ないが、この日は現役を引退したハンカチ王子こと斎藤佑樹さんも来場。何を隠そう、ここ群馬県太田市出身なのだ。
バスケにはさほど興味はなさそうだったが、地元を大事にする姿勢は素晴らしいと思います。
またお土産にボブルヘッド人形を頂いた。資金繰りで苦労した群馬クレインサンダーズだが、オープンハウスの参画でそれも過去のものとなったようだ。
【グルメ】★★★★★
グルメに関しては、Bリーグでもトップクラスとも思えるほどの充実ぶり。
公園の通りを使い、右に左に屋台がずらっと並んでいる。どこもかしこも美味しそうで困ってしまう。
揚げたてとのことでいただいた、佐野名物のイモフライ。イモをフライにしてるんだからおいしいに決まっている。
しかしイモフライが佐野の名物とは初めて知ったのだが、佐野のゆるキャラであるさのまるくんは剣の代わりにイモフライを腰に差しているほど定着しているグルメらしい。
そしてやっぱり、太田市きっての名物といえば太田焼きそば。
焼きそば自体スポーツ観戦のお供として定番中の定番のグルメだが、それが名物とあっては売り出さないはずがない。実際、屋台の3店に1店くらいの割合で太田焼きそばを出しているようだった。
せっかくなので今回はそのうちの2店を食べ比べしてみたが、上は目玉焼きにネギ、そして別添えのマヨをかけ、下は太麺でコーン入りと、バリエーションも様々なようだ。
ちなみに太田焼きそばの定義は、「特徴がないこと」。…つまり何でもありということである。
SUBARUの工場がある太田市では全国から出稼ぎの人が多く来ていて、その人たちが安くて満腹になれる食べ物ということで太田焼きそばが広まったとのこと。
お店自体点在していて車がなければ食べ比べは難しいのだが、ここに来れば簡単にいろんな焼きそばが食べられる。これはグルメスポットとしても画期的だ。
スイーツとしていただいたのはマリエール太田のシュークリーム。普通においしかった。
またこのほかにもみかんやキノコ、ほうれん草、牛乳など群馬の農産、畜産物が無料で配布されたりもした。がんばればここでもらえる食料で夕飯くらいは作れるんじゃないかというぐらいの勢いだ。
もちろん野菜などの販売もあり、食べ物以外にも高崎名物のだるま、ハンドメイドの小物などありとあらゆるお店が並んでいて見ているだけでも楽しくなってしまう。
これは地域と密着した動きを続けていることの表れだ。これなら新アリーナになっても全く問題はないだろう。
【街との一体感】★★★★☆
太田駅前にはずらっと群馬クレインサンダーズの選手の顔のフラッグが並んでいる。
また観光案内所のショーケースではクレインサンダーズの試合映像が常に映し出されており、また半分ほどのスペースを占拠している。
というか他に観光地を表すものがないから、実質クレインサンダーズ一色だ。つまりそれだけ他に観光地がないことの表れであり、かかる期待も大きいということである。
太田アリーナを観光地として育てていかなければいけない事情がこのショーケースから見え隠れしている。
駅ナカ文化館と称されたこのスペースを間借りして仮の事務所としているらしい。こんないい場所を貸してもらえるんだから相当優遇されている。
ちなみに普段は美術品などが展示されているらしい。
切符売り場のそばにもフラッグがある。
もちろん改札内にもポスターがこれでもかと貼られている。
また改札を出たところにはドーンと大きなビジョンでクレインサンダーズの試合映像が映し出されている。
更に駅回りのお店にもポスターやユニフォームが飾られていることを確認できた。
ただ一つ大きな問題があるとすれば、太田市はSUBARUの工場があるほどの車社会ということだ。
太田駅自体特急も止まるし立派なのだが、いかんせん人はまばらだしめぼしい施設もない。
つまり太田駅がこんなにクレインサンダーズ一色なのに、地元の人の目にはなかなか触れないのである。
ただし、車を利用する人が良く訪れるであろうイオンモールでもクレインサンダーズのグッズがたくさん置かれているとの情報も得られた。
今回私はそちらに行くことはできなかったが、例えばそのように車を使う人に対してどれだけアピールできるかがこの群馬特有の課題と言えるかもしれない。
言い換えれば、どれだけ生活圏に入り込めるか…ですかね。難しいけど、このチームならできそうな気がする。
最後におまけ、この体育館のすぐわきにあるこちらが太田アリーナ建設予定地だ。着々と建設作業が進んでいる。
【満足度】★★★★☆
施設自体は使い勝手も悪く大変な部分も見られたが、試合演出やグルメなど非常に高水準で一気に盛り上がっていける可能性を感じた。
その施設の問題も新アリーナが完成すればすべて解決することだ。
クレインサンダーズのみならず太田市も大いに期待を寄せている太田アリーナ、完成すれば群馬を巻き込んで盛り上がっていけること間違いなし。
もう今からワクワクが止まらない!
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