中国のサッカーがにわかに盛り上がっている、という話を知っていますか?
「え、中国のサッカーってそんなに強くなったっけ?」と思うかもしれません。
実は中国で盛り上がっているのはトッププロのリーグではありません。
なんとアマチュア、しかも農村で行われているサッカーが非常に盛り上がっているとのことなのです。
今回はそんな中国で盛り上がる農村サッカーを調べてみました。
1.中国で盛り上がる農村サッカー「村超」
まずは下記の動画をご覧ください。
狭いスタジアムに満席のお客さん、スタジアムの外も屋台や歌や踊りでお祭り騒ぎ。
これが中国で注目を集めている農村サッカー「村超」です(読み方は分かりません…)。
選手は農民やトラック運転手、学生などいわゆる素人、年齢もさまざまです。
トラップミスやパスミスなども多くプレーには粗が目立ちますが、それでもスタジアムからは温かい声援が飛び交います。
インターネットで注目を集めた村超は、地元どころか海外のお客さんまで呼び込み、ホテルが満室になるなど経済的な効果も大きいようです。
2.なぜ田舎のアマチュアリーグが盛り上がるのか
なぜこんな田舎のアマチュアリーグが盛り上がるのでしょうか?
それは動画にもあるように、中国のサッカーが弱いからです。
もともと習近平国家主席がサッカー好きだったこともあって、2010年代より中国は国家としてサッカーの強化に乗り出しました。
とにかくお金をつぎ込みまくって海外から選手を呼び込み、そして帰化させ、最終的にはワールドカップを優勝するという壮大な目標を掲げていました。
しかし結果はボロボロ。
ワールドカップ優勝どころかワールドカップ出場すらままならない状況に陥り、アジアの中ですらまともに勝てませんでした。
そんな無残な中国のサッカーを見て、「それだったら地元でサッカーしようぜ!」ということで盛り上がったのが村超でした。
つまりなぜ村超が盛り上がったのかと言えば、「中国サッカーに対するアンチテーゼ」ということになるでしょう。
中国のスポーツ界については下記の記事でも考察しています。
3.「プレーのうまさ」は集客の本質ではない
ここで改めて考えたいのが、なぜ村超はこんなにも盛り上がるのか、ということです。
いくら弱いとはいえ、さすがにプロの方がアマチュアよりサッカーはうまいはず。
だから村超を見に来ているお客さんは、「うまいサッカーを見に来ているわけではない」のは間違いありません。
ではなぜわざわざアマチュアサッカーを見に来ているのか。
それは「ストーリー性があるから」です。
中国のサッカーが弱すぎて情けないから、勝手にこっちで盛り上がろうというストーリーが人を呼び寄せているのです。
実は同じような現象は日本でも起きています。
それは「甲子園」です。
プロ野球と並ぶ、もしかしたらそれ以上の人気がある高校野球ですが、プレーの質で言えば大学野球や社会人野球の方がずっと高いはず。
それなのに甲子園が人気なのは、「高校生たちが青春をささげる」というストーリーがあるからです。
集客がうまくいっていないリーグ、あるいはチームで陥りがちなのが「もっとうまいプレーをしてお客さんを呼び込もう!」という思い込みです。
ですが、これははっきり言って間違いなのです。
よく知らない人たちがいいプレーをしていようがいまいが、通りすがりの人からすれば正直全く興味ないのです。
そもそも、素人からしたらいいプレーと悪いプレーを見分けるなんてのは難易度が高すぎるという問題もあります。
いいものをいっぱい食べていそうな一流芸能人ですら、高いワインと安いワインの見分けがつかないのですから(格付けチェックとか)。
そんなことより大事なのはお客さんにストーリーを知ってもらうこと、そしてお客さんに当事者意識を持ってもらうことです。
動画の中で女性が「勝敗は関心事ではない、最も重要なのはサッカーを楽しむことです」と言っていますが、まさにそれこそがスポーツが盛り上がる秘訣なのです。
お客さんに「このチームを自分たちでもっと盛り上げたい!」と思わせることができれば、実はスポーツの役目はほぼほぼ終了です。
そうすれば村超のように勝手にお客さんが集まるし、勝手にお祭りが始まります。
プロとしてプレーの質を高めるのは、実は優先順位としてはかなり後ろの方になります。
もっとも、ずっとないがしろにしていたらそっぽを向かれてしまいますけどね…。
なぜ人はスポーツを見るのか、についても以前考察していますので合わせてどうぞ。
4.まとめ
以上、中国のサッカーがアツい、について調べてみました。
プレーとしては未熟でもお客さんが集まり、その盛り上がりを見に海外からも旅行客が訪れる。
実はこれは日本のプロリーグの目指す理想形の一つなのではないでしょうか。
中国は日本のサッカーに学ぶべきことは多いはずですが、逆に日本も中国のサッカーから学ぶべきことが多いのです。
何事も謙虚に、いろいろな方向からいいものを吸収していきたいですね。
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