注:本記事は新型コロナウイルス感染拡大後の情報を元にしています
【概要】
豊田スタジアムは、2001年開場、愛知県豊田市にある名古屋グランパスのホームスタジアム。
英語名称はTOYOTA STADIUMであるが、ラグビーワールドカップ開催時はわざわざCity of TOYOTA STADIUMという名称が使われた。
これは、ワールドカップの規定でスタジアム名称に企業名を入れることが禁止されているためである。
豊田スタジアムは豊田市の所有物であってトヨタ自動車は関係ないのだが、豊田市は天理市と並んで日本で二例しかない私的団体の名称がついた市なので、それを少しでも見えにくく使用という措置だ。
元々は、2002FIFAワールドカップ開催を目指して作られたスタジアム。
愛知県では、ワールドカップに向けて名古屋市、刈谷市、そして豊田市が開催地として名乗りを上げた。
このうち、名古屋市は現存スタジアム改修や新スタジアム案がとん挫し、早々に撤退してしまった。
そこで刈谷市、豊田市の誘致合戦が始まったものの、市の財政力が高いなどの理由で豊田市が勝利した。世界のトヨタ、恐るべし。
これでめでたしめでたし…かと思いきや、あらぬ方向からまさかの横やりが入ることになる。
ワールドカップが日本単独でなく、日韓共催となったのである。
そのため日本側の開催地が10カ所に絞られることになり、愛知は新潟と戦うこととなった。
とはいえ、愛知は日本三大都市圏の一つであり、スタジアム構想計画がしっかりしていたこと、そしてJリーグの名古屋グランパスがいたこともあって、勝利は確実視されていた。
しかし実際にワールドカップが開催されたのは、新潟の方であった。
新潟はサッカー不毛の地と言われていたものの、日本海側唯一の開催地であることをアピールし、その一点で愛知に勝利した。プレゼンがよほどうまかったのだろうか…。
結果的に新潟にはJリーグクラブのアルビレックス新潟も誕生するなど、新潟のスポーツ界にとって大きなターニングポイントとなった。
台風の目となった新潟スタジアムはこちら。
一方、ワールドカップ開催はならなかったものの、豊田市には豊田スタジアムが完成した。
が、建築の大きな意義を失った豊田スタジアムには、大きな批判が集まることとなった。かわいそうに…。
そんな豊田スタジアムに大きな存在意義を与えることとなったのが、やはり名古屋グランパスであった。
名古屋グランパスは開場した2001年に2試合を豊田スタジアムで開催すると、翌年から毎年5試合前後を開催。
2012年には瑞穂陸上競技場と並んで正式に豊田スタジアムをホームスタジアムとして登録し、ほぼ半分ずつ試合を開催している。
2021年から現在に至るまでは瑞穂陸上競技場が改修に入ったこともあり、すべての試合が豊田スタジアムで行われている。
こうして、名古屋グランパスの試合がすべて豊田市で行われるという、一見奇妙な状態が出来上がった。
名古屋グランパス自体トヨタ自動車サッカー部が母体となっているし、ある意味正しい形なのかもしれないが…。
そんな豊田スタジアムが報われることとなったのが、2019ラグビーワールドカップであった。
この大会で豊田スタジアムは、日本vsサモアを含む4試合を開催。競技こそ違うものの、無事豊田スタジアムはワールドカップ開催の夢を果たすこととなった。
建設時こそ市民に煙たがれた豊田スタジアムであったが、こうして豊田市の名所の一つとしてようやく受け入れられることになったのである。
【アクセス】
最寄まで★★★☆☆
最寄は名鉄豊田線の豊田市駅、あるいは愛知環状鉄道の新豊田駅。名前こそ違うものの、両駅は徒歩1~2分くらいの距離。
豊田市自体が車社会ということもあって(クルマ会社の街だからね)、名古屋や豊橋といった愛知県内の主要駅からは乗り換えが必須、時間もかかる。
お世辞にもアクセスがいいとは言えないのが実情だ。
ちなみに「豊田駅」でないのは、東京都に豊田駅があるため。こちらの読み方は「とよだ」。
最寄から★★★☆☆
豊田市駅からスタジアムまでは徒歩20分ほど。
それなりに距離はあるが、道は広くて歩きやすいし、いろんな施設があって見ていて楽しい。
まっすぐ歩いて行くと、やがてスタジアムの屋根と柱が見えてくる。
クライマックスは、豊田大橋と豊田スタジアム。これだけでテンション爆上がりよ。
そんなトヨタの街豊田市を散策した旅の記録はこちら。
【観戦環境】★★★★★
サッカースタジアムだけあって見やすさはバツグン。どの席から見ても見やすいようになっており、スタジアムというより劇場を意識した設計となっているようだ。
ちなみに設計したのは日本が世界に誇る建築家、黒川紀章氏。
そしてスタジアム上部にある「TOYOTA」の文字が輝かしい。
豊田市のスタジアムであるとはいえ、トヨタは一企業だけでこれほどのスタジアムを作れるほどの力を持っているのだ。
大規模なスタジアムではあるのだが、いい意味でその大きさを感じさせない。むしろコンパクトにすら感じられる。
それほどまでにピッチとの距離が近いのだ。たとえ上の方の席であっても十分に臨場感がある。
こちらがホームグランパス側のスタンド。上にあるのは開閉式の屋根で、雨天時には屋根を閉めることができる。
…のだが、いろいろあったようで今は動かないようになっている。閉まることは、多分今後も、ない。
また屋根はスタジアム角にある4本の柱で支えているようだ。この柱がまたなかなかにスタイリッシュ。
ただ柱があるために、2階以上のスタンドではスタジアム内をぐるっと一周できないようになっている。
こちらがアウェイ側のスタンド。基本的にはどちらのスタンドもほぼ同じ形状だが、屋根の有無の違いは大きそうだ。
特に雨の日はスタジアムでこの席の人だけ雨ざらし。いくらアウェイの洗礼とはいえなかなかに手厳しい…。
ビジョンは左右それぞれ1枚ずつ。視認性は十分。
こちらの方のビジョンは、ある程度であれば可動できるらしい。言われてみると、なるほど動かせそうな構造になっている。
スタジアムは一見2層構造だが、正確には4階まである。ここが3階席の一番上。
かなり角度と高さがあるため、人によっては少し恐怖を感じるほどだ。スキージャンプのジャンプ台とほぼ同じ角度らしい。そりゃ怖い。
端っこから見ると、さすがにその大きさを感じられる。日本のサッカースタジアムとしては埼玉スタジアムに次ぐほどの規模だ。
日本最大のサッカースタジアム埼玉スタジアムはこちら。
上からは少し豊田市街を見ることができる。これがトヨタが作った企業城下町、豊田市。
スタジアム内のコンコースは広くて歩きやすい。開放感も抜群。
ちょっと残念だったのは、スタジアム内をぐるっと回れないこと。
アウェイサポーターだけ通れないということはよくあるが、このスタジアムではホームサポーターでもどうやってもメインスタンドとバックスタンドを行き来できないようになっている。
この時がコロナ後の声出し可能になったぐらいのタイミングだったからなのかな…?
いずれにせよ、このままでは自由にスタジアムを歩けず不便だ。今は通れるようになってるといいな。
コンコースからは畑も見られる。豊田市では工業以外に農業もやっているようだ。
おまけ:選手が練習中でも容赦なく放水されるようす。
【雰囲気】★★★★★
名古屋グランパスサポーターはとにかくアツい。旗の数がとても多いし、スタンド全体でぴょんぴょん跳ねるし、声もよく出る。
日本でも有数の規模を誇るスタジアムだが、それに見合うだけのサポーター陣だ。名古屋からここまで遠いのによく来るねえ。
このスタジアムですごいと思ったのはこちらの光の演出。
Jリーグではこういった光の演出をしているところはまだまだ多くないが、これだけの規模のスタジアムで演出をするととても見栄えがする。
特に夜のゲームではとてもキレイだし、是非とも各地のJリーグスタジアムで取り入れてほしいなあ。
今回はクラブ30周年ということで歴代のユニフォームも飾られた。
Jリーグ開幕時に「どうせ地域密着するなら徹底的に」と考えたトヨタは、ユニフォームに一切企業名を入れないことも検討したらしい。
さすがにそれでは広告費として認められないとJリーグに怒られ、しぶしぶ袖に小さくトヨタのロゴを入れた。一方、一番目立つ胸には名古屋グランパスのチームロゴを入れていた。
現在ではトヨタが売り出し中の車のブランド名が入っている。
【グルメ】★★★★☆
スタジアムグルメは、メインスタンド前とバックスタンド前の広場に固まっている。
それぞれお店が違うので、いろいろ見ながら食べたいものを吟味するのが楽しい。
名古屋グルメの定番、味噌串カツ。ほとんど揚げたてで、ソース串カツとはまた違った味わいを楽しめる。
今回食べた中では一番おいしかったかな。
知多牛を使ったグランパスバーガー。やっぱりお肉が美味しいし、焼き付けられたグランパスのロゴも嬉しい。
グランパスの名物諭吉のからあげ。大分から愛知に進出してきたからあげチェーンらしく、グランパス名物グルメになっている。
ただ、肉が若干パサパサしていたような気がしないでもない。そういうお肉が好きな人は好きかも。
知立名物あんまきとコラボしたグラン巻き。そのかわいい見た目だけで勝利だ。
【街との一体感】★★★★★
愛知環状鉄道の新豊田駅を降りると、さっそくグランパスのフラッグや選手の顔写真がお出迎えしてくれる。
それだけでもうテンションが上がる。
駅の表示板にも「がんばれ!がんばれ!グランパス!」なんて。健気だなあ。
もちろん豊田市駅も例外ではない。
豊田市駅には名古屋グランパスの積み上げてきた歴史がずらっと並べられている。屈辱のJ2降格、悲願のJ1優勝、いろいろなことがありました…。
更に名古屋グランパスだけでなく、豊田スタジアムの20周年を記念した掲示もある。
名古屋グランパス、豊田スタジアム、すべてはトヨタから始まったことである。恐るべし。
街中には至る所にグランパス自販機や、
グランパスマンホールがある。
街を歩くと至る所にグランパスのロゴが見られる。
駅近くの商業施設では、ほぼ全部の店舗に名古屋グランパスのユニフォームが掲げられている。これはすごい。
店によっては店員さんがユニフォームやTシャツを着ているところもある。
トヨタ生協メグリア(トヨタの生協は普通にスーパーとして街中で営業している)では、グランパスとコラボしたランチパックが山積み。
これなかなかおいしかったです(多分もう売ってないけど)。
以上、豊田市におけるグランパスの存在感というのはなかなかのものなのだが、しかしそれだとクラブ名は「名古屋」グランパスでいいのか?という疑問は残る。
名古屋・豊田グランパスとかにしなくて大丈夫なのかな?それとも名古屋と豊田は一心同体だから、応援してる側も特に違和感はないのかな?
豊田市民は名前的に名古屋グランパスを応援する気にならない、名古屋市民は名古屋グランパスの応援のために豊田まで行かない、という可能性も考えられるが、そこの心理的な壁は両市民にあんまりないのかも。
一方で、わざわざラグビーワールドカップ開催記念の掲示もある。
「ラグビーの熱狂は終わらない!」という文言は、「このままだと終わりそうだから助けて!」という意味にとれるのだが、さすがにひねくれすぎだろうか…。
いずれにせよ、ラグビーワールドカップが豊田で開催出来てよっぽどうれしかったんだろう。豊田スタジアムも浮かばれただろな…。
一方豊田市から遠く離れたグランパスの本拠地名古屋の市営地下鉄は、グランパスとかなり近しい関係にあるようだ。
栄の中心をとおる久屋大通にはずらっとグランパスのフラッグが並んでいる。
中心地からは少し外れているが、大須商店街にはグランパスのグッズショップがある。
とはいえここでグッズを買ってスタジアムに行くのはちょっと不便かな。
【満足度】★★★★★
日本で2番目の規模のサッカースタジアムだが、非常に良く設計されていて見やすさでは埼玉スタジアムも上回っているのではないかと思う。
もちろんサポーターの熱も高く、これだけの大きさのスタジアムでも一体感を生み出すには十分だ。
そしてなにより、これだけの規模のスタジアム、これだけの熱いクラブが、トヨタというたった1企業で作り上げられたものだという事実に震撼する。
やはり日本ではトヨタには逆らえないのだ…。
索引を作りました!
他のスタジアム・アリーナは↓からどうぞ