スタ辞苑〜全国スタジアム観戦記〜

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福島県営あづま陸上競技場(とうほう・みんなのスタジアム)~選手と作物を育てるクラブ~

注:本記事は新型コロナウイルス感染拡大の情報を元にしています

【概要】

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福島県営あづま陸上競技場(とうほう・みんなのスタジアム)は、1994年開場、福島県福島市にある福島ユナイテッドFCのホームスタジアム。

 

こちらも例にもれず1995年の福島国体に向けて作られたスタジアム。

幸か不幸か国体スタジアムのおかげで、日本全国にJリーグクラブがあるのだ…。

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福島ユナイテッドFCのホームとして2014年から使用されているが、それまでにも4試合Jリーグの試合が行われたことがある。

偶然もあるがそのうち3試合が横浜FCが絡んでおり、残り1試合も湘南ベルマーレが主催していて神奈川県と縁が深いスタジアムでもある。

 

福島ユナイテッドFCが生まれたきっかけは、福島に住む若者たちが「福島夢集団」というJリーグを目指す団体を結成したこと。暴走族じゃないぞ

その後同じ福島県内のFCペラーダ福島というクラブの運営を譲渡され、2008年にはクラブ名を現在の「福島ユナイテッドFC」とした。

 

2011年には東日本大震災が発生、原発事故への不安から多くの選手が退団したり、資金面でも非常に不安定になる苦難の時期もあった。

しかし2014年より、ついに念願のJ3リーグ参戦を果たした。

 

それからの10年間は、ほぼ真ん中よりチョイ下くらいの順位に落ち着いている。

一桁順位は3回で、昇格を手にかけるようなシーズンもあまりなかった。

 

そうこうしている間にいわきFCがたった1年でJ3リーグを抜け、J2リーグへ昇格してしまった。

福島といわきは相当遠いのでそもそもあんまりライバル感はないが、あまりにあっさり上に行ってしまったのでライバル関係を構築する時間もなかった。

sportskansen.hatenablog.jp

 

ちなみに2013年から福島ユナイテッドFCは湘南ベルマーレとの提携を結んでいる。

東日本大震災からの復興を応援する意味合いもあるが、ベルマーレで試合に出られない選手を福島に移籍させ経験を積ませる、という実践的な目的もある。

湘南の試合を見に行くと時折福島ユナイテッドのテントが出ているが、それはこういう事情による。

sportskansen.hatenablog.jp

【アクセス】

最寄まで★★★★☆

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最寄はJR・阿武隈急行・福島交通飯坂線福島駅。

東北新幹線と山形新幹線の分岐駅で、乗車人数は福島県内で郡山駅に次ぐ2位を誇る。

 

また福島市は中通りに位置する中核市で、人口27万人は県内3位

福島県は各地にそこそこの大きさの街が分散しているが、県庁所在地である福島市自体はそれほど大きくないのが特徴だ(福島県の人口自体は宮城県に次いで東北地方2番目)。

 

そんな福島市を堪能した記録はこちら。

sportskansen.hatenablog.jp

 

最寄から★☆☆☆☆

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福島駅東口の7番乗り場から、佐原行のバスに乗車。

以前はスタジアムへのシャトルバスもあったようだが、現在は路線バスに頼らざるを得ない状況となっている。

 

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バスでおよそ30分、あづま総合体育館で下車。

運賃は640円で、使えるのはローカルのICカードと現金のみ。本数も少ないし、正直言ってめちゃくちゃ不便。

 

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バスを降りるとこの景色。半分遭難したようなものである。

 

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実は公園に入らずそのまま公道を公園に沿って歩く方が競技場には早く着くらしい。

とはいえ普通に公園内を歩く方が無難。噴水も見られるし。

 

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この2日前にプロ野球の試合が行われたが、もちろんその面影は残っていない。

 

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と思ったらオールスター投票募集ののぼりが立っていた。

もちろんここで投票は受け付けていないので、多分片付け忘れたのだと思う。後で怒られるぞこれ…。

 

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こちらがあづま球場。平時は駐車場として活用されているようだ。

 

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ビジョンの裏側を通ってメインスタンドへ。

確かに公園の中を通っていくと少し遠回りさせられる感はある。

 

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無事メインスタンドに到着。

現状メインスタンド以外は解放されていないので、すべからくここに到着する。

 

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実はあづま陸上競技場というバス停もあり、スタジアムまではこちらの方が近い。

ただ横断歩道がなく交通量もそこそこ多い(多分試合開催の影響)道路を渡らなければならないので、公式には言いにくいのかもしれない。

 

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あまりに周りに何もないのでバスが来るか心配になったがちゃんと来た。

このバスを逃すと田舎道を数時間歩く羽目になる…。

 

【観戦環境】★★★☆☆

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いわゆる、よくある陸上競技場である。特筆するようなこともない。

 

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スタジアムの全体像。トラック+αがある分、ピッチまでの距離が非常に遠い…。

 

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近くのプレーは一応見えるが、遠くのプレーはほとんど見えない。

特にゴールシーンなんか全然見えない。

 

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スタジアムの下から。上の方から見るよりもピッチが遠く感じる。

 

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ビジョンがある側。開放されていないが、芝生エリアとなっている。

後ろに見えるのはオリンピック会場となったあづま球場

 

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ビジョンは結構大きく色鮮やか。J3リーグの中では結構上物。

 

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こちら側は横断幕すらなくずいぶん殺風景。

 

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こちらはメインスタンド。

かなり角度が急で、スタンド自体のサイズも大きく結構な迫力がある。

 

ただ屋根はサイズが小さすぎるし、柱が邪魔で明らかに試合が見にくい。

それでもこの日のような悪天候だとあるだけマシではある。

(なぜか屋根から雨漏りする個所もあるのだが…)

 

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コンコースは割と広め。

荒天のためグッズショップはここに移動していた。

 

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スタジアム入口はこちら。

選手ののぼりやスポンサーのパネルなどが設置されている。

 

【雰囲気】★★★☆☆

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試合前には選手のバス待ちに遭遇。やはりバス待ちはテンションが上がって良い。

 

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メインスタンドしか解放されないため、サポーターはこのあたりに陣取っている。

雨の中傘もささず応援するサポーターには本当に頭が下がる。

 

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選手もサポーターに挨拶。

決して人数は多くないが、この雨の中応援してくれるサポーターの気持ちに応えたい。

 

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いよいよ選手入場。

タオルマフラーを掲げたり、メガホンを叩いたりして選手を鼓舞する。

 

とはいえ、やはり正直に言えば観客の少なさは寂しさがある。

この日も天気が悪いとはいえ1000人にも届かなかったし、平均観客人数もJ3リーグで最下位だ。

 

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懸命な応援も、あえなく敗戦。

 

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それでも選手は最後まで温かい拍手で迎えられた。

今日ここにきているお客さんを、福島ユナイテッドは絶対手放してはならない

 

【グルメ】★★★★★

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東北旅の最大の楽しみと言えば、やはり

ここ福島も畜産、農産、水産すべてが全国トップレベルで盛んな県だ。

 

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大正時代から親しまれてきたという会津庶民の味、会津ソースカツ丼

そんなソースカツ丼をハンバーガーで再現したのがこちら。

 

食感のアクセントとしてれんこんの天ぷらも入っていてボリューム満点、工夫も良し。

これ一つで十分お腹がいっぱいになる一品だ。もちろん味も最高。

 

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キッチンカーの中で一番目立つところに出店しているのが笑夢

福島県立美術館の中にお店を構えていて、今や福島ナンバーワンカレーとの評判も。

 

特別味が濃かったり辛さが強かったりするわけでないのだが、スパイスが確かに効いていてものすごく深みを感じる優しい味。

これはきっと徹底的に研究して作り上げたカレーに違いない。必食の一杯

 

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一番大きいスペースを取っている岩代家敷大王の福島銘菓いもくり佐太郎(福島ユナイテッドFCver.)、その佐太郎を使った佐太郎パイ、そして鳥めし弁当

 

いもくり佐太郎は福島の民話に由来するお菓子で、さつまいもと栗を組み合わせたスイートポテト。

それ自体はもちろん美味しいが、いもくり佐太郎を包んで焼いた佐太郎パイも侮れない一品。

 

一つ一つ手作りしている福島ユナイテッド戦限定品で、ここでしか食べられない。

味もプレーンやチョコなど様々な種類があり、毎回来ても飽きないだろう。

 

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お姉さんにゴリ押し勧められてお弁当も購入。確かにおいしそうだし福島ユナイテッド仕様のパッケージもかわいい。

 

そして実際おいしい。鶏肉が2種類入っていて飽きが来ないのもまた素晴らしい。

他にも何種類かお弁当を売っていたようなので、いろいろ試してみるのもいいだろう。

 

福島ユナイテッドの試合を見に来たら、岩代家敷大王のテントに寄らずには帰れない。

 

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福島ユナイテッドの最も大きな特徴と言えば、福島ユナイテッドFC農業部

「ただ名前を貸しているだけでしょう…」などと侮るなかれ、実際に選手が農業に取り組み、現在ではチケット収入に並ぶほどの収益を上げているのだそう。

 

そのきっかけは2014年、原発事故の風評被害で苦しむ福島の農業を助けたい!という強い思いから。

リンゴから始まった農業部は、今や桃、ブドウ、米、アスパラガス、洋梨の6品目に及んでいる。

 

実際スタジアムでも大量のリンゴジュースが並んでおり、お土産品として帰り際飛ぶように売れていた(スタジアムにビンの持ち込みは禁止)。

 

ただ選手が作ったという付加価値だけでなく、リンゴジュースとしても大変質が高い

福島ユナイテッドの試合を見に来たら、忘れずに買って帰ろう。

 

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イチゴがずらっと並んだテントも発見、斎藤農園のイチゴ。

値札も出ておらず正直商売はあんまり上手そうではなかったが、いざ寄ってみると味には自信があるようで熱いイチゴへの想いを語ってくれた。

 

実際甘酸っぱいイチゴは大変美味しくバクバク食べていけた。

福島はやっぱりフルーツ王国だ。

 

他にもまだまだ食べてみたいグルメがたくさんあり、グルメエリアは割と小規模ながらとても胃袋が一つでは足りないほどの質と量を兼ね備えていた。

遠征民は大いにお腹を空かせて「スタジアム外での戦い」に臨んで欲しい。

 

【街との一体感】★★★★☆

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ふらっと寄った福島市役所にはJ3リーグの順位表が置いてあった。

2024年シーズンは割と調子がよく見栄えも良い。

 

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地元の眼科と歯科もL字型で福島ユナイテッドFCを応援。

 

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街中には割と至る所にポスターが貼ってある。

努力の跡はそこかしこに見える。

 

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福島県庁の近くには福島ユナイテッドFC自販機が設置してあった。

 

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福島の観光案内所みたいなところにはユニフォームやフラッグが飾られている。

 

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福島駅近くの商業施設は全面的に福島ユナイテッドFCを応援していた。

 

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一方、こちらは福島駅から電車で20分ほど離れた観光地・飯坂温泉

こんなところにも自販機が設置されていた。

 

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こちらは飯坂温泉駅直近の共同浴場、波来湯

ここにもポスターが。

 

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飯坂温泉直結のファミリーマートは福島ユナイテッドFC仕様になっていて、多少ながらグッズも販売されていた。

 

遠征に来た人に向けて、福島駅近くの観光地でアピールするのは効果が大きいだろう。

あとはこの活動が来場者数増加につながるといいのだが…。

 

【満足度】★★★★☆

農業部の活動はとてもユニークだし、福島だけあってグルメの質は非常に高い。

おまけに街中にポスターがあり努力の跡も垣間見える。

 

ただやはり、一番の問題はお客さんの数か…。

冷静に考えて福島を名乗っているものの浜通りにはいわきFCがあるし(地理的に遠すぎるが)、福島市単体で見れば人口27万人ほど。

 

おまけに仙台もそこそこ近く、ベガルタ仙台にお客さんを吸われている面も否めないだろう。

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会津での試合も開催してお客さんの取り込みも狙っているものの、会津も遠すぎて効果は限定的。

となれば、福島よりも人口の多い郡山からお客さんを連れてくるのがお客さんを増やす近道となるだろう。

 

ただ、福島と郡山にもまた外の人からは分かりにくいいざこざもあるようで…。

福島ユナイテッドFCの観客動員増加のカギは、もしかしたら福島と郡山の仲直りかも…?

 

索引を作りました!

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