注:本記事は新型コロナウイルス感染拡大後の情報を元にしています
【概要】
鳥栖スタジアム(駅前不動産スタジアム)は、1996年開場、佐賀県鳥栖市にあるサガン鳥栖のホームスタジアム。
元々は、浜松から移転し1994年に設立された鳥栖フューチャーズというクラブのホームスタジアムとして開業した。
元日本代表の松永や元カメルーン代表のタタウなど大型補強を行い、1996年に行われた鳥栖スタジアムのこけら落としとなる試合では観客2万人を集めるなど大いに佐賀県民の期待を集めた。
ちなみに、フューチャーズが協会にプロリーグ入りを要請しに行ったところ「マラドーナが加入したら考えてやる」と言われたため、当時の桑原監督はイタリアへ赴きマラドーナを勧誘。
マラドーナ本人もイタリアでの生活に疲れていたため乗り気であったが、コカイン使用が発覚しご破算となった、という話がある。
本当にマラドーナが加入していたら鹿島アントラーズのジーコみたいになっていたかも…?
(ちなみに兄のウーゴ・マラドーナはフューチャーズが浜松に本拠を置いていた時代にプレーしていたことがある)
フューチャーズはJリーグ入りを目指していたものの成績は振るわず。さらに静岡の藤枝ブルックスが福岡に移転(のちのアビスパ福岡)することに伴い主力を引っこ抜かれたり、スポンサーが離れていったり。
因縁の相手アビスパ福岡のホームについてはこちら。
こうした影響で経営難に陥り、翌年の1997年にはフューチャーズの解散が決定(早すぎる…)。
しかし5万人の署名が集まったことから、諸々の権利を引き継いで生まれたのが現在のサガン鳥栖である。そりゃせっかくスタジアム作ったんだしね。
J2初年度となる1999年には最初の10クラブの一つとして参加、現在まで戦いが続いている。
ちなみにこの裏には佐賀大学の坂田教授の奔走があったと言われている。2000年に54歳の若さで亡くなったが、この功績をたたえ命日の1月7日にちなんで17番がサガン鳥栖の永久欠番(Jリーグ初)となっている。
鳥栖市の人口は現在のJリーグ56クラブのうち最も少ない約7.3万人で、サポーター自身も「正直田舎者」と自虐している。
が、2012年にJ1に初昇格(昇格自体はJ2初年度の10クラブで一番遅い)すると、それ以来J2に降格していない。初昇格から一度も降格していないのは現時点でJリーグ唯一の偉業である。
JリーグNo.1の田舎でありながらJ1に残留し続けるサガン鳥栖は、大都市でないJリーグクラブにとって目標となる存在だろう。
今日も田舎者は鳥栖スタジアムで強敵と戦い続ける。
【アクセス】
最寄まで★★★★☆
最寄はJR鳥栖駅。古くより九州における交通の要衝であり、博多からは特急なら20分ちょっと、福岡県南部の都市久留米からならわずか二駅、さらに佐賀・長崎方面へも線路が伸びている。
このアクセスの良さから、2016年時点でJリーグクラブ中4番目に県外からの観戦者が多いスタジアムとなっている。
この構図は、なんとなくだが鹿島アントラーズのホームカシマスタジアムに似ている。気がする。
鳥栖駅は九州最古の駅の一つ。駅舎も歴史を感じることができるつくりになっており、鳥栖駅を訪れるだけでも立派な観光になる。
また駅のホームからも立派なスタジアムを眺めることができる。これだけでもテンションが爆上がりだ。
今回の旅行記はこちら。佐賀県内では鳥栖しか行けなかったですが、久留米も佐賀みたいなもんでしょう。うん。
最寄から★★★★★
鳥栖駅からは歩道橋で線路をまたいですぐ。階段を上るわずらわしさを除けば、Jリーグでもトップクラスのアクセスの良さと言っていいだろう。
負けた帰りはこの階段がよりきつく感じるとか、感じないとか。
【観戦環境】★★★★★
球技専用スタジアムということもあり、臨場感はバツグン。どの席からでも見やすくなっている。
目の前にボールが来るとこんな感じ。2階席でも選手を間近に感じることができる。
ただし、飲み物ホルダーはついていないのでカップなどの飲み物を買ったときは注意。スタンド自体がものすごく角度が急なつくりになっている弊害といえば弊害だ。
その代わり前の人の頭が気にならないし、なによりどこに座ってもよく見える。
ホームサガン鳥栖サポーターの陣取るサイドスタンド。こちらも屋根こそついていないものの見やすそうだ。
アウェーサポーターのサイドスタンド。特に差異はついていないようだ。
アウェーサポーターも気兼ねなく観戦することができる。
スタンドの裏側、コンコースはこんな感じ。グルメなども売っている。
スタンドを横から撮ったもの。こうしてみると非常に角度が急になっていることがよく分かるだろう。
今回はメインスタンドの最上部だったが、高所恐怖症ではない私でも結構怖かった。風も吹き抜けるし。
また写真の通り全体的にサガン鳥栖のカラーであるピンクとブルーに装飾されており、まさしくサガン鳥栖のホームであることが一発で分かるようになっている。
ビジョンはバックスタンドとサイドスタンドの間に1か所あるのみなので、おそらくバックスタンドからは結構見にくいのではないかと思う。
スタジアムの奥は工場地帯になっているようだ。住宅、工場、線路に囲まれたスタジアム、それが鳥栖スタジアム。
外には九州のJリーグクラブ一覧を示すボードがある。
鳥栖が九州の中心だ、と言わんばかりである。
【雰囲気】★★★★★
行ってみて感じたのは、鳥栖サポーターの優しさだ。
相手チームの歓迎では大きな拍手が巻き起こり、スタメン、リザーブ、監督紹介までずっと拍手が止まなかった。
今回もお約束の「正直田舎者」の横断幕を鳥栖サポーターが掲げていたが、田舎者だと変にひねくれるわけでなく、かえってどんなチームが来てもリスペクト出来るような雰囲気づくりに生かされているのではないかと思った。
それでいて応援では太鼓を4~5個程度使ってスタジアム全体を鼓舞し、一体感のある見事な応援がなされていた。コロナ禍でも統率の取れた応援をできるのは、サポーターを含めたクラブ全体の雰囲気がいいからだろう。
またすぐ横には線路が走っており、時折レールのきしむ音やSLが「ポーーーーー」と走っていく音が聞こえるのもまた旅情があってとても楽しい。
一粒で2度でも3度でも楽しめるスタジアムだ。
もちろん選手入場時には、Jリーグ屈指の名チャント「マイノリティ」を聞くことができる。
【グルメ】★★★★★
スタジアムの外にはちょっとした広場があり、そこに数多くのお店が出店しているほか、スタジアム内にも出店がありグルメはとても充実している。
その中にも数多くの名物グルメがあり、購買意欲をかきたてる。
まずは広場で一番の行列となっていた喫茶ジェイのぼっかけ丼。
とにかく牛スジ、大根、そしてご飯のバランスがとてもいい。腹を満たしたかったらこれを食べておけば間違いないだろう。
ぼっかけ丼自体は神戸の名物らしいのだが、まあ細かいことは置いといて…。
同じく喫茶ジェイのプリン。コンビニプリンなどと比べるとしっかりとした感触で食べ応えがある。
またカラメルは私はあまり好きではないのだが、このカラメルは甘すぎず苦すぎずなめたくなるほどおいしい。さすがに理性が勝ったけど。
更にこのスタジアムで絶対に食べるべき名物グルメの一つがだんご庵季彩の各種お団子。
なんとサガン鳥栖のマスコットウィントスくんと相手チームであるサンフレッチェ広島のマスコットサンチェくんをかたどったお団子。
これを一つ作るのにどれほどの手間暇をかけているのだろう…。さらにこのかわいい紙袋もついて、わずか600円。
1600円くらいでもなにも文句が言えないクオリティなのに、安すぎる…。本当にいい記念になるグルメだ。食べるのがもったいない。
またスタグルではないが、鳥栖駅のかしわうどんはサポーターの間でも非常に有名な名物グルメとなっている。
是非とも食べておきたい。
また駅に隣接するトランドールというパン屋さん(JR九州が運営している)では、サガン鳥栖のロゴの入ったあんパンなどを販売している。
あんことクリームがマッチしてとてもおいしいので記念にぜひ。
【街との一体感】★★★★★
鳥栖市は確かに大都市ではないが、駅前の大通りはサガン鳥栖一色に染まっている。
そりゃ、J1の舞台で戦い続けるサガン鳥栖はこの街の誇りであろう。
鳥栖駅ではサガン鳥栖のグッズショップ、そして先述のトランドールとかしわうどんのお店がひしめき合っている。
鳥栖の観光は鳥栖駅と鳥栖スタジアムで完了だ。
またすぐ近くの久留米駅周辺でもアビスパ福岡ではなくサガン鳥栖の自販機を見つけた。
鳥栖スタジアムのネーミングライツを取得している駅前不動産や、その前にネーミングライツを取得していたベストアメニティはいずれも久留米の企業であり、切っても切れない関係性となっている。
【満足度】★★★★★
Jリーグのホームタウンとして最少の人口である鳥栖市だが、このような素晴らしいクラブ、そして素晴らしいスタジアムは十分に鳥栖のアイデンティティ、そして誇りとなる存在だ。
これからも「田舎者」の希望の星としてサガン鳥栖は輝き続けるだろう。そしてまたお団子を食べにこのスタジアムに来たいな。
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