スタ辞苑〜全国スタジアム観戦記〜

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川崎富士見球技場(富士通スタジアム川崎 Xリーグver.)~伝説の川崎球場跡地~

注:本記事は新型コロナウイルス感染拡大の情報を元にしています

【概要】

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川崎富士見球技場(富士通スタジアム川崎)は、2001年開場、神奈川県川崎市にある球技場。

現在では日本では数少ないアメフトの(ほぼ)専用スタジアムとして稼働しており、Xリーグの強豪富士通フロンティアーズのホームとなっている。

 

このように現在ではアメフトのメッカとなっている富士通スタジアムだが、この場所にはかつてプロ野球で使用された川崎球場があった。

川崎球場と聞くと、一部の人はニヤリとしてしまうかもしれない。

ここでは川崎球場の歴史をご紹介する。

 

もともと川崎は東芝などの大企業がひしめき合い社会人野球が盛んな土地柄だったため、1951年にこれらの企業が出資しこの場所に川崎球場が完成した。

そんな川崎球場を1955年から本格的に本拠地としたのが大洋ホエールズである。

 

1960年には三原監督による三原マジックと呼ばれる采配が光り球団初の日本一に輝くものの、スタジアムの老朽化が激しくなり1978年には新しく完成した横浜スタジアムに移転してしまう。

この時川崎市側には全く伝えていなかったため、川崎市民から猛反発を受けながらも逃げるように移転していったらしい。なんだかどっかの〇ェルディみたいだなあ。

sportskansen.hatenablog.jp

川崎とスポーツの関係についてはこちらにもまとめています。

 

その後、入れ替わるように1978年からここを本拠地としたのがロッテオリオンズである。しかしロッテも元々は横浜スタジアムを本拠地とする予定だったので、どちらかというと消去法で選ばれた格好。

横浜スタジアムについてはこちら。

sportskansen.hatenablog.jp

 

この頃の川崎球場と言えば、毎年オフシーズンになると珍プレー好プレーでその客の入らなさがいじられる惨状だった。

とにかくいつもスタンドはガラガラ、野球を見ている客なぞおらず、カップルは常にいちゃいちゃ、スタンドの上の方から隣の競輪場を観戦する客もおり、流しそうめん麻雀大会も開かれる始末。

指定席のチケットを買おうとするとおばちゃんに怪訝な顔をされたという逸話まである。座り放題だからね。


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更に老朽化もますますひどくなるばかりで、トイレは男女共用の汲み取り式で鍵もかからず、球場全体がいつもジメジメしていてバットを置いておくと20g重くなったなど笑うに笑えない環境が続いた。

 

そんな川崎球場の最後の晴れ舞台となったのが1988年10月19日に行われたロッテvs近鉄のダブルヘッダー、いわゆる10.19である。

この日を前にして近鉄は西武と激しい優勝争いを繰り広げていたが、ロッテとの2試合で2連勝しないと優勝を逃すという状況に追い込まれていた。

いつもはガラガラだった川崎球場もこの日ばかりは近鉄ファンが大挙して詰めかけ、普段は適当に売っていた指定席もちゃんとしたシステムがなかったためにパンクしてしまった。

 

10.19の詳細についてはあまりにドラマチックな展開なためここでは省略するが、2010年にNPBが行った最高の試合ランキングで2位になるなど、その熱狂ぶりはいまだに語り草になっている。

 

そんな川崎球場であったが、10.19を機に少し改修を行ったものの到底満足できるものではなく、ロッテは1992年に千葉マリンスタジアムに移転。

sportskansen.hatenablog.jp

とうとうどうすることもできなくなり、2000年3月にかつて本拠地としていた横浜とロッテのオープン戦が行われた直後に閉場された。

その後はこの立派な富士通スタジアムへと変貌を遂げた。現在ではJリーグの川崎フロンターレが指定管理者となり、川崎のスポーツ発展のため市民にも有効活用されている。

 

ガラガラでどうしようもない球場というイメージのあった川崎球場だが、王貞治が初めて一本足打法を披露しその後700号を達成した、

落合博満が2年連続三冠王を獲得したなどプロ野球のターニングポイントともいえる場面を作り出していた歴史ももつ。

 

富士通スタジアムとなった現在でも10月19日にイベントが開かれる、そして流しそうめんが行われるなどなんだかんだ愛され続けているのだ。さすがに麻雀はやってないらしいが。

 

というわけで今回は川崎球場跡地、もとい富士通スタジアム川崎でXリーグの首位攻防戦を観戦した。

【アクセス】

最寄まで★★★★★

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最寄はJR川崎駅、あるいは京急川崎駅。それぞれの駅は少し離れているが、どちらにせよスタジアムからの距離にあまり違いはない。

川崎で一二を争う大きな駅から歩いて行くことができ、昔の球場ほどアクセスが良いことを実感できる。土地が余ってたんだろうなあ。

 

最寄から★★★☆☆

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川崎駅からは徒歩で20分ほど。平地だが一カ所歩道橋を渡る必要がある。

スタジアム前には、この写真のように現在でも「川崎球場」という交差点が残っている。

また路線バスも走っているので歩くのが面倒なときはそちらも。

 

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スタジアム横には、現在でも川崎競輪場が残っている。

 

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またお隣には富士見球場があるが、こちらは平日は隣接する富士見中学の校庭として使われているという面白い球場だ。

しかし土日にも部活ってやると思うんだけど、どこでやるんだろう。

 

【観戦環境】★★★★☆

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コンパクトなスタジアムだけあり、どの席から見ても見やすそうだ。屋根がないのはちょっと大変だが。

メインスタンドとバックスタンドで大きな違いはなさそう。

 

しかしテレビでアメフトを見るのと違い、ラインがCGで表示されないので若干の見にくさはある。

いつかプロジェクションマッピングを使ってスタジアム上でもラインが浮かび上がってくるようになったらいいなあ。

 

またアメフトのルール自体も慣れていないと複雑でなかなかわかりにくい。

一応解説用のラジオも数量限定で配布しているようだが、とはいえこればっかりはある程度は試合を見て慣れてから行くしかないか…。

 

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アメフトはとんでもない巨体の選手たちがぶつかりあい、迫力がすごい。

かといってボールを持って走る選手のスピードもとんでもなく、アスリートとして本当に何でもできる人たちがそろっているイメージだ。

 

ちなみにあまり知られていないが、実は日本は世界で2番目のアメフト大国だったりする。

もちろんアメリカがあまりに強すぎて目立たないが、過去には世界選手権で優勝したこともあるほどの強豪だ。アメリカがやる気ないだけだろうけど。

 

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そんなアメフトの聖地ともいえる富士通スタジアムだが、探してみるとまだまだ川崎球場の名残が残っていることに気付く。

例えばメインスタンドから見て右側、不自然にカーブしているフェンスは、どう見ても球場の外野フェンスだ。

 

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また左側にも、おそらく内野スタンドであったと思われる部分が残っている。

まるっきり新しいスタジアムに見えるが、そこかしこにまだまだ川崎球場が息づいている。

 

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この照明はもろ川崎球場の名残だ。すっかり錆びてしまっているのが何よりの証拠。

 

が、残念ながらこちらの歴史ある照明灯は今では撤去されてしまったようだ。

それに際して「サヨナラ照明灯」と題したOB選手などのトークイベントも行われた模様。

また一つ川崎球場の名残が消えていく…。

 

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最後の決定的な証拠が、アメフトのスコアを示すボードの横に野球のスコアボードがあることだ。

こんな9イニングのスコアボードなんて野球以外で使う必要がない。10.19の時もこのスコアボードに近鉄ファンが一喜一憂していたのだろう。

 

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向こうにかすかに見えるのが、例の川崎競輪場。しかしさすがにスタンドの上からのぞき見している人はいないようだ。

というか構造的に難しいかも。

 

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コンコースは今のスタジアムらしく大変綺麗になっている。

 

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外にはちょっとした広場があるが、ここにあるトイレに入ってみたところなんと個室のドアがひずんでて閉まらないという問題が発生した。

 

こんなところにまで川崎球場の名残が残っているなんて…。さすがにトイレは当時そのままのものを使っているわけではないと思うが、まさか打率5割でドアがぶっ壊れているとは思わなかったよ。

 

【雰囲気】★★★★☆

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アメフトは基本的に11人vs11人で試合を行うが、攻撃と守備で専門の選手がいるため、最低でも22人が必要。

さらに作戦によってもどんどん選手を変えていく必要があり、Xリーグでは最大65人の登録が認められている。

 

そのため1チームの選手がそろった時の迫力たるやすごいものがある。このように選手入場も野球やサッカーのように一人ずつやる暇がなく、全員が走りこんでくる。

 

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チアの先導で選手が一気に走りこんでくる。あまりに選手が多すぎてとてもではないが1回では全員を覚えきれない。

 

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FORZA KAWASAKIの横断幕。これは川崎フロンターレも共有している文言だ。

チーム名に川崎の文字はないものの、川崎のチームの一つとして認識されているようだ。

 

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NFLの試合のようにイベントがひっきりなしに行われとまではいかないものの、チアのお姉さんたちの存在感が非常に大きい。

 

試合中は常にパフォーマンスを行っているし、マイクを使っていなくても声が非常に通って良く聞こえ、観客を鼓舞する。普段から相当鍛えているんだろうな。

しかも驚きなのがちゃんと両チームともチアがいたことだ。アメフトという競技においては、チアが欠かせないものになっているんだろう。

 

しかし選手数も多いしチアもいるし、アメフトってすごいお金がかかる競技なんだなあ。

 

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またコンコースの一角にはアメフト日本代表のコーナーもある。

このスタジアムはアメフトの世界大会も開かれたことがあり、日本はそこでアメリカに次ぐ準優勝を果たしている。

 

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またスタジアム外の一角にはちょっとしたギャラリーが設けられている。

 

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中にはこのようにところ狭しとこの球場に関連したグッズが飾られているが、中でも王さんの700号と張本さんの3000本安打を記念したプレートが目を引く。

今はなき川崎球場は、例えお客さんはいなくとも間違いなく球史に残る球場の一つだったことは間違いない。

 

【グルメ】★★★★☆

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スタジアム外には屋台があり、タイ料理、韓国料理、とんかつなど国際色豊かな食べ物が並んでいる。

 

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今回はユッケジャンクッパ。それなりに辛かったが、体は温まるし野菜もとれてほっこりするスタグルだった。

 

【街との一体感】★★☆☆☆

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チーム名に川崎が含まれていないこともあってか、大々的に地域に広めていこうという感じはあまりなく、どちらかというと管理者になっている川崎フロンターレのロゴが目立つほどだった。

 

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スタジアム内にもしっかり川崎フロンターレの自販機があった。

またハーフタイムにはフロンターレのマスコットふろん太も来ていて、このスタジアム内外でも川崎フロンターレの存在感が輝きを放っていた。

 

【満足度】★★★★☆

このようにアメフトのスタジアムとして新たな歩みを始めた富士通スタジアムだが、とはいえ全てを新しくしたというわけではなく、そこかしこに川崎球場の残り香がある。

 

そういったかつての昭和の球場に想いを馳せながら、新しくなったスタジアムで日本最高峰のアメフトを楽しむ。川崎の新たな楽しみ方を発見することができたのではないだろうか。

野球ファン、アメフトファンともども一度訪れてみる価値があるスタジアムだろう。

 

 

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